STAND BY ME

「stand by me」
流れるラジオを胸に抱き
僕たちはどこまでも 遠く遠く行けるはず
まだ誰も知らない場所 今 目指し 走り始める

財布をジーンズに入れて、学校をサボって電車に乗った。
この季節になると、どの曲よりも先に思い出される曲がある。
女性アーティストのソプラノが心地よく耳に届く。
『この曲、良いだろ』
今度のライブでアレンジして歌ってみようと思うんだ。
恋人のそんな言葉と共にMDから響いてくる音。
頼むと、こころよくダビングしてくれたのは何年か前の今頃。
夏の終わりと共に他の曲に目移りしてしまったが、なぜか毎年この季節にこの曲にハマる。

太陽の光にきらめく原っぱ抜けて
汽笛の音高く 僕の胸も高鳴る ドキドキ

ガタン、ガタンと電車が揺れる。
太一は頬杖をついてガラス越しの景色を見た。
MDウォークマンからイヤホンを伝ってシャカシャカと歌が聞こえる。
都会の町並みを抜け、いつのまにか緑が面前に広がっていた。

窓越しに変わる景色が 夢へと続いて行く

そっと目を閉じて曲と景色に浸る。
緑色の景色。電車内の静かなざわめき。ガタゴトと揺れる電車内。
―――大好きな曲

「stand by me」
流れるラジオを胸に抱き
僕たちはどこまでも 遠く遠く行けるんだ
夢にまで見た冒険 今 目指し 動き始める

遠くに見える高い建物を除けば、景色はデジタルワールドを想いださせる。
出会った夏。別れた夏。…忘れられない、季節…。
大事な大事な、仲間――――。
変わらないと思っていた日常。
ずっとこのまま平凡な生活を続けていくと諦めていた日々。
常識がくつがえされた、刻。
それさえも、今では『想い出』になっている。
それは、どことなく寂しくて、楽しくて。

トンネルを抜ければ 大人になった気分
頬を撫でる風に 僕の気持ち高まる ワクワク

ガーっと大きな音がして、辺りが暗くなった。
耳がきん、と痛くなる。
すぐ後に、また光がすべてを照らした。
そこは、また原っぱが広がっていた。

いつか見た映画のように 線路は続いて行く

どこかもわからない駅で電車を降りた。
カンカンカンカン……。機械的な音が鳴り止み、遮断機が上がって行く。
線路のすぐ横にある細道をたどり、草原と錆の浮いた線路を見ながら歩を進める。
リピートをかけているので、繰り返し繰り返しその曲が耳に響く。

「stand by me」
流れるラジオを胸に抱き 僕たちはどこまでも 遠く遠く行けるよね
まだ誰も知らない地図 今 広げ 描き始める

川原の傍の草の茫々に生えている坂に寝転がり、ぼ〜っと空を見ていた。
眼に痛いくらいの青い空に白い雲がよく映える。
上の方は風が強いのか雲が流れて行く。
シャカシャカと、歌が響く。

空が黄昏に染まるまで見ていると、ジーンズにしまいこんでいたケイタイが震えた。
取出して見てみると、新着メールが一件届いていた。
そのままメール画面を開き、見る。
それは恋人からのメールだった。
短く返信メールを打ち、立ち上がった。
空はすでに向こう側が紺色に染まり始めている。
「帰ろ」
『早く帰れ』
そんな短いメールが届いた。
踵を返し、歩いてきた道をたどる。
毎年この時期にブラリと出るのを知っているのは恋人だけ。
それでも、独りで行かせるのは自分の心中をわかってくれているから。
空を、仰ぐ。
「また、逢えるよな」
静かに、呟いた。
確信を、願いを込めて。

「stand by me」
流れるラジオに想いよせ 僕たちはどこまでも 遠く遠く夢を見る
行き先のない切符を 今 胸に 僕は旅立つ――――



☆END☆


コメント

02夏の映画の主題歌、『stand by me』を元に書いた作品です。
私は自転車→電車→バスで登下校してるんですが、も〜この曲の合うこと!!
ひとりで、静かに聞くともっと最高v
実は一回フォルダが消えたときに書いた作品で、もう載せられないんだろうなぁ・・・と諦めてたとき、別のフォルダの整理をしていたら前に使っていたホムペ用のフォルダが出てきました(複雑)
のでアップしてみましたv(笑)
ときどきこういうの意味の無いものが書きたくなる。
自分もどっか遠出したいのかな?(笑)