たまには、ね?

たまには、自分から、ね?

深夜。
夜型のデジモンを抜かせば、みんな眠りに着く時間。
クジで順番を決め、輝二は二つある焚き木のうちの一つのところで腰を据えていた。
時計が無いので詳しい時間はわからないが、一番最初の純平と交代してそろそろ1時間が立つ。
見張り交代は1時間ずつ。・・・次の見張りは拓也なのだが、出来るならもう少し寝かせてやりたい。
・・・と言う輝二のささやかな優しさも、どうやら拓也には無用なようで、
「輝二。そろそろ交代」
と後ろから声がかかった。
今回も定時通りかと溜め息をつき、輝二は頷いて腰を上げた。
「何だ、溜め息なんて着きやがって。そんなに疲れてんならオレと純平で見張りやったのに」
それは拓也にしてみれば労いと言うか、心配していってくれているのだろうが、今の輝二にとってはちょっと痛い言葉である。
・・・もう少し、拓也がコイゴコロに敏感であってくれれば・・・。
思ってもしょうがないので、輝二は拓也と変わり、みんなが寝ている場所へと歩いていった。
「・・・変なヤツ」
・・・そして本当に理解してないのが、ここに1名。

横になり、はぁっと輝二は深い溜め息をつく。
・・・拓也を好きになった時点で、この恋が報われないものだとわかっていた。
だけれど、それでも好きなんだからしょうがない。
拓也も、輝二が告白しても、なんだかんだ言っても傍に居てくれる。
避けないでくれるのが嬉しいし、時々嫉妬してくれて、その度に拓也を好きになってよかったと思える。
・・・・・・だけれど、拓也がここまで鈍いのはさすがに痛いものがある。
友樹ほどとは言わないが、せめてもう少し拓也が甘えてくれる性格だったらと思う。
そうしたらもっと自分を頼ってくれるかもしれないし、もっと拓也が近くに居てくれたかもしれない。
・・・なんて思っても、それこそしょうがないが。
『それに、拓也が拓也だから好きになったんだしな・・・』
多分今、自分以上に厳しい恋をしているものは居ないんじゃないかとも思える。
所詮は男同士なのだ。
『だけれど・・・』
やっぱり諦めたくは無い。
それは、拓也の優しさに触れるたびに思う。
―――――何が何であろうと、自分は拓也が好きなのだ。
もう自分の気持ちに嘘はつかないと決めたのだ。
『・・・だけれど・・・』
拓也は輝二が思っているよりもずっと強い。
何でも一人でやろうとしてしまうのだ。
それが輝二にとっては辛いし、大抵の事ならば拓也は確かに自分で遣ってしまい、輝二を頼ってくれようとしない。
・・・せめて、もっと自分に頼ってくれればいいのに。
――――と、悶々と毎日こんな事を考えて過ぎていく。
別に輝二は結ばれたいとは思っては居ない。
ただ皆より少しだけ、拓也に特別な眼で見てほしいのだ。
『情けない・・・』
再び溜め息をつこうとした時、足音が聞こえた。
敵が出たのなら拓也が叫ぶだろうし、先程輝二がここまで来た時には皆起きている気配は無かった。
・・・・・・と、すれば・・・。
「・・・こうじ・・・?」
少し声色を押さえた口調の、拓也の声が聞こえた。
何となく起きてはいけないような気がして、輝二は狸寝入りをする。
「・・・こうじ・・・?」
もう一度、拓也が自分を呼ぶ。
拓也に悪い気がして、身を起こそうとしたところで、瞼越しに見えていた火が翳った。
疑問に思う間も無く、唇に柔らかいものが降りてきた。
・・・それと同時に香る、拓也の匂い・・・。
キス、と判るまで、幾秒かかかった。
それは直ぐに離れていったのだが、輝二にはとても長い時簡に感じた。
何度かしてもらった事は在るが、こう言うのは初めてだ。
ふと、瞼越しにまた火の・・・いや、自分の血の色なのか、濁赤色にともる。
「・・・早く身体、治せよ・・・」
それは多分、先程の会話の続きなのだろう。
別に輝二は体調が悪い訳ではないが、いつもと違う輝二の様子に拓也は、不調だと思ったのだろう。
拓也は暫く輝二を見下ろしていると、再び輝二から離れていった。
・・・なるべく自然に見えるように寝返りをうち、ぱっと目を開け、頬どころか首まで真っ赤にする。
よく拓也にばれなかったと思う。
心臓が張り裂けそうに脈打っている。
『・・・早く身体、治せよ・・・』
それは、拓也が自分だけにかけてくれた言葉。
・・・・・・もしかしたら・・・。
「拓也、ありがとう・・・」
ふと微笑みながら、輝二は自分でも聞き取れるかわからないくらいの小さな声で呟く。
そうして今度こそ、寝るために瞳を閉じた。

・・・・・・もしかしたら自分は、それほどは報われない恋というものを、していないのかもしれない――――。



☆END☆


コメント

短いから小説という事で(・・・)
たまには拓也に大胆になってもらいましょう小説(笑)
ガーネットクロウの『Timeless Sleep』聞いてたら思いついたお話しなのですよ〜。
本当に私、歌無いと小説かけないかも(笑)
・・・ところで私、デジフロ小説って夜テーマ多いッスね(苦笑)