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flying 〜The sky story〜 35 誰? 自分の声が、遠く響く 太一は、周りを見渡す。が、そこには闇が広がるばかり ・・・声が、響く ――――――真名(まな)を―――――― 声が、波紋のように広がる ――――――応じよ―――――――― 不思議な音色で、それは脳に直接呼びかける ――――――呼びよ―――――――― ―――――――真名を―――――――― 手掛かりは、『歌』だ。 オリズは街に下り、とりあえず辺りを偵察しつつ、歩き回る。 ・・・オリズは輝黎歌をマスターした歌唄いだ。 歌はもちろん、古歌、詩歌、等々も習得しており、知らない歌は無い。 「・・・この程度で5万ティルか・・・悪くない」 それゆえ、自信は満ちる。 薄く笑い、オリズは歩く足を速めた。 その夜、自分の家にくればいいというシリアの申し出を丁重に断り、太一たち8人は街の宿に泊まることにした。 テラスに出て、太一は心地の良い風に当たっていた。 そして、何かを考えるように思案した表情で、遠くの街の灯を見ている。 「太一」 すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。 振り返る間も無く、その人物は太一の隣りに移動した。 ちらりと横を見れば、そこには焦がれる人物が。 「ヤマト」 呟き、自然に笑みが零れる。 ヤマトもこちらの方を振り向き、小さく笑った。 そして、しばらくの沈黙。 しかしそれは気まずいものではなく、穏やかな空気の流れのようなものだ。 「・・・昨日・・・」 そんな中、ヤマトがポツリと呟く。 太一は少し首を動かして、ヤマトの眼を見る。 ヤマトは、街の中に視線を落としていた。 「昨日太一にようやく会えて・・・本当に、嬉しかった」 いきなり降って来て、ビックリもしたけど。と、ヤマトは続ける。 その頬が少し赤くなっているのは、照明のせいではない。 「・・・そんなの、オレもそうに決まってる」 そう言い、太一はふいっと視線をヤマトからはずした。 もちろん、言い馴れない事を言って照れているのだ。 そんな太一の横顔を、今度はヤマトが覗き見る。 そして、柔らかく笑む。 それから太一の方に身を寄せていき、低い位置にある肩に頭を乗せる。 突然肩に感じた重みに、太一は驚いて身体を引きそうになる。 それでもソレを留めたのは、ヤマトが心地よさそうに太一に擦り寄ったからだ。 「・・・暖かい・・・太一の体温だ・・・」 それを言うならば、太一の肩を通じてヤマトの体温も太一の元に届く。 心地良いと思うのは、別に恥ずかしい事ではない。 「・・・オレも・・・こうしていられるのって久々だし・・・嬉しいよ・・・」 コツリと音を立て、ヤマトの頭に自分の頭を傾げて乗っける。 「太一・・・」 その口が、人物が奏でる、その音・・・。 コレほどまでに自分の『名前』が響く音は無いと思う。 そう、それが例え、歌唄いで妹のヒカリの声でも。 「ヤマト」 そしてそれは、この人物も思ってくれているだろうか? しばらくそうやって互いの体温と思いを感じつつ、二人の口はどんどん距離を無くしていった。 ・・・・・・ そして、それを観ている人物が数名。 「あぁんまどろっこしいなぁ・・・!」 「そこだ!ヤマトおにーさん!腰に手を回せ!!」 「あはは、兄さんってば奥手だなぁ」 「お兄ちゃんってば照れ屋さんv」 「もっとくっついて・・・ほらそこだ!」 「・・・・・・おやめなさいって」 ミミ、シルフ、タケル、ヒカリ、空に向かって、光子郎はそう苦く言った。 そうやって、比較的穏やかに2日の時は過ぎていった。 マクスウェルはまだこの近辺に留まっているらしいと、ウンディーネは言っていた。 そのためもありこの街に居るのだが、理由はもうふたつ。 一つ目はシリアの能力の事。 そしてもう一つは、この街の事。 「だってそのエライ人は、街の人からお金奪って自分だけ贅沢してるんでしょ?ミミ、そういうのって許せないの!」 と、ミミは頬を可愛らしく膨らませていったからだ。 それに(特に光子郎が)反対出来る筈も無く、尻尾を掴むために留まっているのだ。 同じ喫茶店の、同じ席。 そこがシリアと会う場所になっていた。 そして、なかなか職が決まらないシリアに、情報料と称して少しばかりの金銭を渡す。 お金は、時々出会う敵が落としたものや、ノームが出してくれる小さな宝石を金に替えたものだ。 魔物は旅人を襲い、金銭を奪う。 それは光るものを集めるという魔物の本能なのか、これだけの獲物を倒したという勲章の代わりなのかは知らないが、ほとんどの魔物がそういうものを持っているのだ。 ノームは地の精霊。 シルフの・・・大気の力もを借りつつ、小さな宝石を創ってくれるのだ。 地の中の成分でも出来るのだが、大気の力も借りるとかなり楽に石が出来るのだ。 『風』と『地』は反対属性だが、相互属性でもあるという珍しい関係にある属性同士だ。 相互属性とは、自分の属性に力を追加してくれる属性の事だ。 フリンジされた魔術は、これに当たる。 また、反対属性同士のフリンジは、『消滅』を力にするものなので、これには当たらないとする。 反対属性とは、それぞれの属性がその反する属性のもの共々に消滅してしまうという、言わば磁石のSとNのようなものだ。 決して交わる事の無いもの。 だが、風と地はそうはならないのだ。 風も地も、もっとも精霊たちに影響を与える属性だ。 それは互い同士にしても消滅を与えるものだけではなく、力を与えるものでもある。 なので、反対属性をフリンジするには、この二つが一番容易いものなのだ(反対属性の中なので、フリンジする魔法の中では高位に当たるが) そのため、力をあわせて宝石を創る方が簡単なのだ。 そしてそれらを換金し、生計を図っているのだ。 今日もそうやって過ごしていると、いきなり街の一方が騒がしくなってきた。 小さくも叫ぶ声のその音は。 「魔物だっ!オーガだ!!」 「オーガ・・・!」 オーガは鬼人だ。 知力は乏しいが、破壊力が高く、なかなかに素早い。 しかし考える能力、すなわち知性がないために、手加減というものを知らない。 そこを破壊しつくまで暴れるという厄介なものだ。 魔物の中での種族の精霊加護は決まっているものがほとんどだ。 オーガの精霊加護は、闇。 「む〜〜〜っ!神界でなら楽勝に倒せたのに・・・!」 「その前に居ないけどね」 シリアに聞こえないのにミミが呟くと、丈がポソッと突っ込んだ。 ミミはそれが気に入らないのか、丈の前にあったクッキーをつまむ。 「おかしい・・・いつもならこんなに短期間になんて現れないのに・・・」 シリアがそう呟く。 そして、走り出した。 「シリアっ!一人で行動するなっ!!ここらにもオーガが居たら・・・」 「大丈夫ッ!!」 太一の静止を振り切り、シリアの姿が小さくなる。 「おいっ俺たちも行くぞっ!」 そして、その後を遅れてヤマトたちも走り出した。 オーガの数は、予想を越えていた。 途中何度も出会っては人気の居ないところに行き、ヤマトや丈が交代で魔術で倒した。 何故太一の力を使わないかというと、もし見つかった時、天使ならばそれでも『珍しい』ですむが、四翼の天使ではそれだけではすまず、ますます人々の欲望に火をつけてしまうからだ。 要するに、目立つからだ。 「セイントアローッ!!」 光の矢がオーガを貫通する。 凄まじい断末魔を叫びながらも崩れ行き、土煙を立てる。 腕で顔を庇いつつ、8人はもう見えなくなってしまったシリアを捜しつつ進む。 「いくら天聖歌があるからって言ったって・・・この状況じゃ・・・っ」 今までに数人、息絶えた街人の姿を見た。 そこにシリアの姿を捜しても見たが、まだやられたという訳ではないらしい。 それに安堵しつつも、いつやられるかはわからない。 早く、見つけなくては。 そうして焦っていると、シリアの『歌』が聞こえた。 「ヒカリッ」 太一が呼ぶ前に、ヒカリはもう意識を歌に集中していた。 歌唄いであるヒカリは、音の気配には絶対の集中力を持っている。 「・・・こっち・・・!」 そして、走り出す。 街の中で比較的高い建物の頂上で、オリズはオーガたちが暴れる様子を眺めていた。 そして、眉を大きくしかめる。 「・・・醜い・・・なんと汚い旋律だ」 引き裂き、殴り、壊す音。 その叫び、うめき、断末魔。 あまりの酷さに、音を愛するオリズはそれらを聞いては居られなかった。 それでも頼まれてしまった上では任務を遂行するまでそうしているしかない。 オーガの牙から逃げようと、そして果敢にも戦おうとしているものたちを眺めながら、目的のものを探す。 そして少々ウンザリしてきた頃、それは聞こえた。 澄んだ、歌声。 オリズの嫌悪する『音』を遮り、浄化していくようなその、声。 「素晴らしい・・・」 思わず聞き惚れそうになってしまい、オリズは気を引き締めた。 「行動開始―――――」 『音』の響く方に向かい、オリズは跳んだ。 コメント 進んでいるような、進んでいないような(どっち) でも、前よりも更新の間隔が短くって喜。 いつもこのペースでいけたら・・・くぅっ(泣) 自分のふがいなさに涙が! |