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flying 〜The sky story〜 15 ウンディーネの言葉に、太一は思わず腕の中で暴れている少年を見やる。 ・・・地の属性王・ノーム。 そう、ウンディーネは言った。 「こ、このチビっ子が?」 太一が素っ頓狂な声で言うと、ノームはムッとした表情をした後、太一の腕を思いっきり噛んだ。 「っいってぇっ!!」 思わず力を緩めると、ノームはここぞとばかりに飛び出した。 太一は噛まれた腕を擦り、落としたアレクタリスを拾い上げる。 「・・・あれ?」 ふとアレクタリスを抱えると、アレクタリスが前の様に高い音で泣いているのが聞こえた。 それは、ウンディーネを見つけた時と同じ現象だ。 「って事はホントに・・・」 「そうだ!」 少女のような、声変わりをしていない少年特有の高い声でノームは怒鳴る。 「オレさまが地の属性王のノームさまだい!!」 「こ、こんな小さい子が・・・?」 ヤマトが呆けた様に呟くと、ノームは敏感に反応し、ヤマトに向かって石礫を投げる。 「うわっ」 「バカにすんなよ洟垂れ小僧!オレさまはお前等なんかよりもずっとずっとずー―――ッと何千倍も長く生きてんだからな!」 「は、はなたれ・・・」 仮にもヤマトは十六歳近い。 そのヤマトに洟垂れ小僧と言うんだから小憎たらしいんだか呆れてしまうんだか。 まぁかくいうノームも、天地が想像された時から居るのだから、そうなのだろうが。 ボーっとしている丈に、ヒカリが短剣を持って突っ込んでくる。 「わっ!」 横に凪がれた剣を何とか避ける。 頬に紅い筋が出来たが、傷は浅い。 しかし。 「・・・ァ・・・っ」 呻き声を残し、丈は石塊になってしまう。 「丈さん!」 倒れそうになる丈を、一番近くに居たタケルが支える。 が、そのタケルに向かって、ヒカリがまた一太刀加える。 タケルの長剣が苦も無く受け止める。 チリチリと、金属が擦れ合う厭な音が響く。 「ヒカリちゃん・・・」 眼に全く感情が篭っていない。 タケルはいつもと全く違うヒカリに戸惑いつつも、ヒカリの剣を跳ね返す。 ヒカリは体制を崩したものの、直ぐにタケルに向かい直る。 「光子郎さん!丈さんをお願いします」 タケルは丈を静かに地に下ろすと、そこから離れる。 ヒカリもその後を追う。 光子郎が駆けつけてくると、ミミが光子郎に迫ってくる。 まともに武具を使えない光子郎は、どうしようも出来ない。 「スプレッド!」 先程の様に小さな水柱が、ミミを倒す。 「ミミちゃんは俺が何とかするから、光子郎は丈を!」 ヤマトが助太刀に立ってくれ、光子郎は急いで円陣を創る。 「汝等は彼(か)の人を救うもの。 我は汝の力を求めるものなり。 水と地の力あわせ、今彼の人に再起を与えよ! 汝、水を司るもの『UNDINE』 ―ウンディーネ― よ・・・。 浄化を今此処に! リカバー!」 円陣が光り、小さな光の・・・いや、水が光に反射しているのか・・・それが昇っていく。 その光る水が丈に付着し、その部分から石化が解けていく。 「・・・う・・・」 開けはなれたままの目に、再び色と光が戻る。 「・・・あれ・・・?」 完全に石化が解け、丈が起き上がろうとする。 「っ痛・・・」 が、鋭い痛みが丈を襲い、再び地面と仲良くなってしまう。 慌てて光子郎が頭と地の間に手を入れ、ぶつかるのを防いでやる。 「丈さん、すみませんが少し動けません。少しの間とは言え石化して、筋肉が硬直しているので・・・」 丈は観念して、そのまま寝たままの形になる。 太一は一連の事を遠場から見て、安心の溜め息をつく。 そして、再びノームを見やる。 「で、何でノームはここに居るんだ?」 属性王たちは自分に住みやすい環境に着くと言う。 少なくともウンディーネはそう言った。 ノームはギッと太一を睨む。 「・・・お前は・・・この光景見て何にも思わねぇのかよ」 いきなり言われ、太一は戸惑ってしまう。 「どう・・・って・・・」 「大地はむやみやたらに穿り返されられ、地の歴史である宝石鉱物は全部奪われちまう・・・。そこの!奴等に!!」 ノームの視線を追い、太一はヒヤリとする。 そこには、ヴォーギとキアノが立ち尽くしていたからだ。 ・・・戦いに夢中で全然気付かなかった。 いくら暗いとはいえ、自分たちに翼があり、天使という事は明白だろう。 「痛ましいとは思わないのか!?これほど地が泣いている土地は、オレは見た事が無い! だからオレは、動けぬ大地に変わって罰を下してやったんだ!!」 激昂するノームに歯向かったのは、キアノだった。 「だけど・・・あたし達には鉱物以外に職にするものも食っていけるものも無い!」 「・・・仕方が無いって?」 ノームの幼い表情が、更に険しくなる。 辺りから岩が浮き出てくる。 「それはお前等の・・・人間の都合じゃねぇか。 お前たちは自分たち以外のものを考えた事があんのか。 日々天恵をくれる総てに感謝して、それを返しているのか?」 言われ、キアノは言葉に詰まる。 確かに自分達は、ソレを取る事が当然になり、ずっと続くものだと思っていた。 ・・・自分達は、そんなものたちに、果たして本当に感謝していただろうか? 「所詮はそんなモンなんだ!!」 悲鳴じみた声をノームが上げる。 「そんなんだからっ大地が悲鳴を上げて、オレを呼んだんだっ!」 巨石がヴォーギとキアノの方へ向かっていく。 「エアスラスト!」 太一の放った風の刃が、ノームの放った巨石を砕く。 結局土と砂利に返った巨石は、少ししかヴォーギとキアノに降り注がなかった。 「・・・四翼の天使・・・」 ノームは再び太一の方を睨む。 「お前もニンゲンの味方をするのかっ!?」 太一は答えない。 「四翼の天使のクセに・・・っ!神に一番近いもののクセに、お前はオレたちを救わないのかっ!」 「違う!」 「うるさい!!」 はー。はーとノームは方で息をした後、ぱっと右手を上げた。 「ソラ、ミミ、ヒカリ」 ノームの言葉に応え、3人は浮上する。 もちろん、全員タリスマンを投げ捨てて。 「・・・まさかとは思ってたけどやっぱりノームが操ってたのかっ」 ヤマトが叫ぶと、ノームは莫迦にするような視線をヤマトに送った。 「そうさ。容易かったよ、おねぇちゃんたちを操るのは」 嘲笑をノームは浮かべる。 そう。馬車で空たちを連れてきたヴォーギが去った後、偶然様子を見ていたノームが空たちに近付き、催眠術をかけたのだ。 考えてみれば、3人が使う魔術法術は地系のものがほとんどだった。 「おねぇちゃんたちは今、オレの思うがままさ」 上げた手を、ノームは正面に据える。 「殺せっ!」 ノームの言葉に応え、3人が突進してくる。 太一は舌打ちをした後、詠唱を唱えようとする。 「グランドダッシャーっ!!」 「っ!?・・・ぷ、プロテクションっ!!」 唱えようとしていた詠唱を中断し、防御法術を唱える。 いくら詠唱無しと言っても、太一は四翼の天使。それでもやはり属性王の力は強い。 太一はプロテクションを右手に集中させると、左手で新たに法力を発動させる。 「サイクロンっ」 左手から出る風の大渦は、プロテクションの壁を突き破り、ノームの放った大地の波に激突する。 プロテクションを解き、太一はサイクロンに意識を集中させる。 「さすがと言ったらさすがだね。でも、何か忘れてない?」 ノームは徒らを思いついた子の笑みを浮かべる。 サイクロンを解き、思いっきり上に上昇する。 数瞬後に、今まで太一が居たところに空が剣を振りかざしてきた。 「くそっ」 空は本当に厄介だ。 機動力があり、高位階級並みの法術が使える。魔術が使えない分体術に優れており、力が無い点を除けば本当に優秀なのだ。 そして、だからこそ太一とコンビを組めたのだ。 ノームはニヤリと笑うと、丈がまだ寝ている事に気付く。 「ソラ、あの寝てる奴を狙えっ」 言われ、空は丈に向かって急降下をする。 「やめろっ!!」 今からはとても法術を唱えられない。魔術をまさか空に放つわけには行かない。それでは逆に空が傷付いてしまうし、角度的に丈にも当たってしまう。 光子郎にはヒカリが攻撃を放っていて、先程から丈の傍から離れてしまっている。 厄介なミミには、ヤマトとタケルが対応に終われている。 「やめろー―――――っ!!」 太一の叫びが、楫汰の山にこだました。 コメント ・・・毎回思うんですが、中途半端なところで止めちゃってすみません(汗) ようやくノーム出せてホッとしてます(笑) |