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紺の空と金の星 はぁ、と吐く息が白い。 現在時刻は深夜の2時20分。 レイはカイの家の屋上にシートを引き、その上に横になって夜空を眺めている。 本日は11月19日。 しし座流星群の日だ。 「ほら」 視界の端に、湯気の立つカップを2つ持ったカイが立っている。 「ありがと」 よっと起き上がり、カップを受け取る。 暖かなその中身は、自分好みに甘くしてくれたコーヒー。 「カイはよくなんにも入れない苦いままで飲めるな」 「甘いのはあまり好かん」 確かにレイも苦いは平気だが、どちらかというと甘党だ。 対してカイはあまり甘いものを好まない。 くどいかららしい。 「で、流れたのか?」 星。 カイが聞くと、レイは顔をウキウキと弾ませる。 「うん!まだ数個だけど・・・ときどき強い光で流れるんだ。すごいな・・・」 「これからがピークだからな。もっと流れるぞ」 コートと毛布の下から腕時計で確認する。 レイは楽しみと言うように笑顔でコーヒーを飲む。 はぁ、と吐く息が白い。 「レイ、こっちに来い。コートだけじゃ寒いだろう?」 カイは毛布の端を持ってレイを入れてやる。 「へへへ・・・v」 気分的にハイになっているのか、レイはカイに擦り寄ってきた。 カイも最初は身じろきしていたが、諦めたようにレイを受け入れた。 「あ、流れた」 視界のやや右上側に小さな光が軌跡を描く。 「願い事はしたのか?」 「そんな暇なかったよ」 レイは笑いながらまたコーヒーを飲む。 「日本だけじゃないけど・・・白虎族の村とかに比べると、あまりに星が見えないところが多いな」 「・・・俺たちの住んでいるところの空気が汚れている証拠だ。 お前のところの村はさぞかしよく見えるのだろうな」 「うん。でも、村を出るまではそれが当然だと思ってた。 ・・・いい意味でも、悪い意味でも、発見があるのは嬉しい。それは、きっとでオレたち・・・白虎族のためになると思うし」 カイはレイを見つめていたが、ふっと視線を夜空に移す。 「あ、流れた」 「ホントかっ!?」 しかし、レイがカイの視線を追ったときには、もう軌跡さえ消えてしまっていた。 「あー・・・」 「別に今ので最後ってワケじゃ無いんだ。そう落ち込むな」 あまりに感情の浮き沈みが激しく、面白いので、カイは笑いを漏らしてしまう。 そうして、カップの中身を飲み干すと、レイに毛布を渡して自分はシートの上にごろりと横になる。 レイは慌てて残りのコーヒーを飲むと、自分もカイの隣に横になり、また二人で毛布をかぶった。 そうして、またカイに擦り寄ってくる。 「そうしていると本当に猫みたいだな」 カイは、レイが痛くないように腕枕してやる。 「オレは虎だよ?」 少し不服そうにレイが言い返すが、結局カイの腕の中におさまった。 その間にも、星はどんどんと流れていく。 「そろそろピークだな」 カイが再び腕時計を見る。 「・・・すごい・・・」 その隣で、レイが感嘆の溜息を漏らす。 1秒にも満たないその儚い光は、誇示するようにどんどん流れ逝く。 「知ってるか?星が光を一瞬放つには、100年くらいかかるんだそうだ。 待って待って待って・・・ようやく光を放ったらまた、その時を待つんだ。 ・・・・・・すごいよな・・・」 「・・・ああ・・・」 レイが本当の事を知っているかどうかはわからないが、カイはどうやって星が光るかはあえて言わなかった。 「あ、見て!3個一気に流れた!」 レイが指をさす。 「ああ、オレも見た」 「うう〜〜カメラにとか撮りたいなぁ」 「やめておけ。そんなことしても無駄だ」 カイのその言い方にカチンときたのか、レイはカイを睨む。 だけど、なんとも言えないその表情を見てしまい、レイは思わず口を閉じてしまった。 「カメラに収められたとしても、それはただの『写真』だ。『その時の風景』じゃない」 カイはレイの視線に気付き、腕枕してる方の手でその髪を撫でてやる。 漆黒に近い紺色の髪と金色の瞳は、まるで今の夜空のよう。 「人の想い出は儚いな。美化したりいくらその風景が印象に残ってもすぐ忘れてしまう」 レイは黙ってカイの言葉を聞いている。 「・・・だけどな、だから綺麗なんだ。一瞬おぼえてるからこそ、綺麗なんだ」 カイがレイの方を向く。 その笑顔があまりに優しかったため、レイは言葉を失って、紅くなってしまった。 「レイ?どうした?顔が紅いぞ?」 カイは少し起き上がり、レイの額に自分の額を乗せる。 「・・・少し熱いな・・・風邪引いたか?」 カイがそのまま顔を近づけて聞いてくる。 カイの整った顔が近くにあり、レイはさらに顔に熱が収束するのがわかった。 「ななななっなんでもないよ・・・っ」 レイはよっこいせとカイを退かせる。 カイはまだ心配そうにしていたが、レイの視線が空に行ってしまったので、ふうっと息を吐いて、肩までしっかりと毛布をかぶせてやる。 そうして、暫く無言で夜空の軌跡を眺める。 「あー・・・っ」 「雲、出てきちまったな・・・」 そのまま50分くらい眺めていると、流されてきた雲に空が覆われてしまった。 さっきから出てきたのだが、最初は端にあったので、そんなに観察に影響は無かった。 が、運悪くこちらの方に流れてしてしまい、夜空を覆ってしまったのだ。 「どうする?雲が全部流れるまで待つか?」 2度目のピークは丁度今頃だ。 んー・・・とレイは暫く考えた。 「いいや。もう見れなさそうだし・・・。眠くなってきちゃったから」 レイはうーん、と伸びをし、起き上がった。 「そうか。じゃあ中に入ろう」 カイも起き上がり、毛布をたたみ始める。 レイがシートをたたんでくれているので、カイは2つのカップを手に取った。 レイが近付いてくると、カイはドアの方に行ってレイを先に通してやる。 「カイ、今日一緒に寝ていいか?」 レイの誘いに、カイは一瞬目を見開いて驚いたが、視線をはずして恥ずかしそうにコクリと頷いた。 「来年も、また一緒に見ような」 「・・・ああ」 そんな約束が出来ることが、ただ純粋に嬉しかった。 星に願いを。 ジンクスなんてどんなものか分からないけど、そうしたい。 そんな風にしながら、何かに頼ってでもキミと一緒に居たいんだ。 『また』 そんな約束さえも、今は心を和ませてくれる言葉。 星に願いを。 キミと僕とを繋ぎとめる、暖かな手の平を。 コメント 書こう書こうと思っていて機会が無くて今まで書けなかった作品です(苦) ちなみにコレは私の住んでるところから見た流星群視点ですv 雲が出てきちゃったのがすごく寂しかったです(泣) 世界大会はどうしたとかそういう質問はおいといて(死) |