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風はキスをする前、じぃ、と見つめてくる。 穏やかな笑顔を浮かべてこちらを見ているのを知ると、心臓が跳ねて身体が強張ってしまう。 「…雲雀くん」 拒否する権利は残してくれるのに、何故か行使できない。 密やかに、啄ばむように重なるそれは段々と唇を濡らし、知らず強張った筋肉を緩ませる。 その隙を狙って風の舌は雲雀の中へと侵入し、猫のように薄い舌を巻き込む。 「ん…っ」 暖かい軟体が触れ合い、ビクンと身体が揺れる。 そうなればもう逃がしてはくれず、思わず後退しそうになる背中はソファーに触れ、結局唇は離れない。 くちゅん、濡れた音を耳が拾う。 恥ずかしい。けれどその音よりも段々と心臓の音がドコドコと耳に響きだす。 「ん、んんっ!ん―――――!!」 「……」 今まで大人しく受け入れていた雲雀が風を引き離そうと暴れだしたので、仕方なく風は身を引いた。 「ぷ、は…っ」 多対戦でも滅多に息を乱すことの無い雲雀が肺にめい一杯空気を取り込み、時折咽ながら息を整えている。 「大丈夫ですか、雲雀くん」 背中を摩りながらも、苦笑を隠せない。 「うる…さい…っ」 顔を真っ赤にして目を潤ませ風を睨む。怖くも何ともない。 「だからキスをする時は鼻で息をなさいというのに」 「うるさい!」 怒鳴り、風の手を叩き落とす。 子供のように頬を膨らませて、風と距離を開けた。 戦闘事においてはみるみる間に知識を吸収するのに、色恋沙汰にはさっぱりだ。 何も知らない。初めての感触に脅える子供のよう。 (なんて、可愛らしい) 「…あんな、長いのする方が、おかしいんだ…」 ポツリと呟いた言葉。 正当化して逃れようとする。 無理だとわかっているくせに。 「そうですね。では暫くは私が譲歩しましょう」 「?」 何を、と振り向けば、すぐ傍に風の顔が。 「ッ」 驚いて避ける間もなく唇が重なる。すぐに舌が口内に侵入してきた。 「んっ、は」 また息を止めてしまう。 「雲雀、もっと口を開けて」 言葉と共に風の唇が離れた。 チャンスとばかりに息を吸い込む。 見計らったように、また風の唇が重なった。 強く擦れたと思ったら、すぐに離れていく。 苦しくなる前の絶妙なタイミングで、風は雲雀に呼吸を許した。 「は、ン……ん、ふ」 息をするタイミングに集中してしまい、風が離れても舌を引っ込めるのを忘れてしまう。 唾液が顎を伝う。 学ランを濡らす前に、全て風が舐め取った。 歯列を舐め、紅く染まった唇を甘く食み、時折喉をこくんと鳴らす。 その時に動く喉仏がなんだかいやらしい。 「雲雀」 穏やかな声。 普段は敬称をつけるくせに、こんな時だけ呼び捨てにする。 なんだか、とてもずるい気がした。 唇が重なる。 頬が灼ける。 このままソファーに押し倒して欲しかった。 |