※あやしい表現ありなのでご注意を。


大好物を前に、ずっと『待て』をさせられている犬のようだと常々白蘭は思う。
ようやく見つけた、唯一愛を囁ける相手を前に、出来るのがキスまでだけなんて。
(結構、我慢いるもんだなぁ…)
勝手に自分でたてた誓いだ。破るのは容易い。
そして、白牢に捕えた骸を組み敷くのはもっと容易い。
(でも、それじゃ意味がないんだよね)
コツ、と爪でデスクを叩く。
日々マグマは下半身に溜まる。
せめてと骸の口内をねぶっても、欲は満たされるどころか臨界点に近づくばかりだったが、それでも無理矢理組み敷くのは嫌だった。
だって、唯一愛せる人なんだ。
愛したら、愛してほしい。
骸に愛されることが、トゥリニセッテと並んで手にいれたいものなのだ。
「……お、」
デジタル時計を見るなり、白蘭は頬杖を直して広がる書類を乱雑に片付けだした。
「本日のお仕事、終了〜♪」
真剣な顔から一変して上機嫌になる。
時計はいつの間にか、骸のところへ行く時間を指していた。
仕事なんて言いつつ、結局骸のことばかり考えていたので、ノルマの三分の一だって終わっていやしない。
明日嫌味を言われるのは確実だが、骸に会う時間が減る方が苦痛だ。
スキップでもする勢いで部屋を出て、彼の為に用意した特別な部屋に急ぐ。
向けられるのが、射殺されそうな視線と怨みごと小さな反抗でも構わない。
今は。
きっと振り向かせてみせる。
いつか、その身体から薫り立つ清廉な匂いのような笑顔を見せてくれると信じてるから。
ギラリと、白蘭は自分でも気付かぬうちに飢えた肉食獣のような眼を光らせた。

三重のセキュリティーと結界を解くと、その部屋だけ違う匂いが香る。
好ましい。
まるでこの部屋がどんどん骸に変えられていくよう。
高揚して、近づく。
「骸くーんっ」
部屋に入ってすぐに宝のようなその名を大声で呼んだ。
違ったのは、反応だった。
骸がどこに居るのかは、足に繋いだ鎖の位置でわかる。
それがどこにも伸びていないということは繋いでいるベッドにいるということ。
案の定こんもりと盛り上がった中身は、白蘭が声をかけた途端にビクリと揺れて動かなくなった。
「…?骸くん?」
思わずきょとんとする。
普段ならば睨み付けるか無視するか。
ともかく白蘭を寄せ付けないようなオーラを発するくせに、妙に骸が戸惑って見えた。
「どうしたの?丸まっちゃって」
「…!く、るな!!」
近づく白蘭に慌てて制止をかけるが、もちろんそれで止まる筈もなく、十数歩で骸の元へと辿りついた。
来るなと言う骸は顔すら見せず、相変わらずシーツをスッポリとかぶったまま。
「骸くん?」
シーツに手をかける前に、ようやく顔だけ現した。
「…なんでもないですから…今は近づかないで下さい…ッ」
睨みつけながら懇願する。
「でも…」
チラ、とどうしても視線が赤い顔と首筋にかけての高揚した肌を追ってしまう。
普段恐いくらいに色が無い肌は、今は湯上りのようなピンク色だ。
扇情的。それ以上に、不安になる。
「どっか具合悪いんじゃないの?いいから、ちょっと見せて」
「大丈夫だと…あ、ちょ…ッ!」
問答無用でシーツをはがす。
現れたのはやはり赤い身体。
そして濡れた下半身だった。
「…………」
「――――ッ」
きょとんとなる白蘭。
反応など見たくなくて、骸は顔を逸らした。
白い液体。
吐き出しきれておらず、今だ張り詰めている骸の性器。
同じ液体のついた骸の掌。
ああ。と、ようやく白蘭も事態を飲み込んだ。
「そうだよねー骸くんも男だもんねー」
「うる…さい!!」
何ともなしに呟いた言葉が酷く気に障ったらしい。
射殺さんばかりの視線と声を向けられた。
「そんな恥ずかしがらなくても。仕方ないことじゃん?」
「うるさいうるさい!早くシーツを返せ!そして出てけ!!」
いつになく取り乱している。
よほど恥ずかしいらしいが、普段から性欲をあまり隠さない白蘭にはその気持ちがよくわからない。
「まぁ落ち着きなって」
「ッ…来るな!」
シーツを奪い返そうと伸ばした手を逆に捕らえると、今度は骸がその身体を後ろに引いた。
途端に明るい部屋に晒される性器。
ぱたた、と落ちた白い液体がおいしそうに見えた。
「――――」
ごくんと思わず喉がなる。
(これくらいならセーフかな?)
危うい空気を察して骸が振り解こうとするが、逆にその身体を抱きこまれた。
「はな、せ…っ」
「暴れないの」
「アッ」
後ろから抱きかかえられ、いきなり性器を握られた。
ビクンと身体が揺れて、甘い声が漏れる。
「手伝ってあげる」
ぺろりと口端を舐め、紫煙の瞳が飢えた獣のソレになる。
「いらない!離…ぅ、ンッ」
腰に回る腕に爪を立てる寸前に、しゅっと擦られ身体から力が抜けてしまう。
同じ男だ。弱いところは心得ている。
前のめりになる身体を支え、その薄い背中にピトリと胸をくっつけると早い心音が伝わった。
思わず熱い息が漏れる。
手がぬめる。
親指で、その先端に爪を立てた。
「あ、ああ!」
ビクンと身体が弾む。
じわりとまた先走りがにじみ、指を伝う。
性器に塗りこめるようにして括れから付け根までを何度も何度も往復させると、そのたび高く喘ぐ。
「やめ…はな…ア、…ふ、ん…ッ」
「声抑えないで」
無防備な首筋に顔を埋める。
花のような香りが、興奮でかいつもよりも強く匂いたつ。
その匂いを肺いっぱいに詰め込み、しなやかな肌に唇をつけて、吸い付く。
ちゅうぅ、といくつも白磁の肌に華を咲かせながらも、性器を弄る手を緩めはしない。
精液を溜めてぱんぱんに膨れている陰嚢を擦り合わせるように揉み込むと骸の声が一際大きくなった。
浮き出た血管を爪先で幾度も辿り、雁を擽るように撫でて、もう一度全体を強く擦ってやる。
「あ、ダメ…はな…はなせ…ぁ、ンあ…ふ…くぅ、ッん」
「イっちゃう?」
耳に唇をつけて吹き込むように話すと、珍しく素直に頷いた。
柔らかい耳朶を食んで、いたずらにツンと尖っている乳首をつまんだ。
「い、あぁ!」
思わぬほどの効果があった。
それまで前屈みだった身体が反り上がり、白蘭に体重を預けた。
抓んで引っ張って、それから指腹でくにゅりと潰す。
「だ、め…そこはァ…ひ、ヤめ…!」
「骸くん超かわいい…イっちゃう?…イっちゃおうね?」
幹を擦る指の力加減を変える。
擦るだけの動きから搾り出すような動きにし、人差し指の爪を亀頭にくちゅくちゃと食い込ませる。
「あ、ダメ…ぁ、ぁ、ぁ…!」
内腿が細かく震え、支えにするように白蘭の腕にしがみつく。
強い刺激に他に意識が回らないのか、涎が鎖骨にたまって尚胸から滴り落ちる。
それを辿って骸の唇を舐めて、変わりに自分の唾液を口内に垂らした。
こくんと鳴る喉にまたゾクリとする。
「骸くんかわいい、大好き、もっといろんな表情見せて」
「ひ、あ…ぁ――――――ッッッ」
根元から強く擦り上げると、ぷるんと白蘭の手から逃れて、白濁を吐き出した。
「あ、…っあ、ァ……!!」
断続的に、だが長く。
呼吸がうまく出来ないのか蕩けた瞳に苦痛が混じる。
どろりとした精液は骸の胸元まで飛んで、白蘭はそれを塗り広げていく。
「ふふ…まだ止まんない…」
塗り広げてもすぐに白濁がその上を辿る。
ようやく射精が収まる頃には、まるで力が入らなくなってしまっていた。
は、は、と息をして、白蘭に背中を預ける。
「随分我慢してたんだねー。身体、精液まみれだよ?」
「うる…さ…」
赤い顔。白い身体。自分をこんなにした相手に寄りかかることが屈辱でならないというような態度。
白蘭はと言えば、白濁にまみれた手を今だ骸の腹に置きながら、大人しくなった性器の向こう側にある蕾を見つめた。
(…いれたら、気持ちいいだろうなぁ…)
まだ気付かれていないが、白蘭の性器も骸の痴態を見て張り詰めていた。
指だけでも、味見してみようか。
(…うーん…)
ぬちゅりと粘着質な音を立てて腹から手を離し、躊躇いもなく口に含む。
「なっ」
驚いてやめさせたくとも腕すら持ち上がらない。
指先の白を舐めとって、平と甲と、手首まで。
決してうまいものではないが、舌に触れた途端やめられなくなる。
ああ、はまりそう。
「うん、やっぱやめた」
白蘭は身体を引くと、骸の身体をそっと横たえた。
「今タオル持ってくるからちょっと待っててねー。あ、ベッドカバーも換えなきゃね」
突然の行動に骸は眉をしかめる。
ふふ、と白蘭は悪戯好きの仔猫のように目を細めると、骸に覆いかぶさりすかさずチュッと唇に吸い付いた。
「ッ!」
顔を背ける前に白蘭が退いた。
「これ以上したらホントにとまんなくなっちゃうからね。今日はここまで」
それにしても。
はぁ。と熱い息を吐き出し、それ以上に熱い視線で骸を見つめる。
「骸くん、ホント最高…ますます手に入れたくなっちゃった」
「……ッ」
狂気に骸でさえ怖気が走る。
「絶対きみは全部、僕が手に入れる」
飢えた獣の目。
肉食の、獲物に喰らい付く寸前の眼だ。
ギラギラとしたその光を隠すように、ニコリとまた白蘭が笑う。
「今度から僕がちゃんと処理してあげるからね♪」
悪魔の宣告そのものだった。