捕虜にするには最高の待遇で骸を迎えている。
それこそ、六弔花にだってしないような。
にも関わらず、今だ警戒も解かない骸からはボンゴレの情報を聞けないどころか、本人のことも碌にわからない状態である。
そんな中で唯一と言っていいかもしれない情報を掴んだ。
六道骸はチョコレートが大好き。
えーまさかそんなかわいいことーと思いつつそっと食事のデザートにチョコを添えてみた結果、普段の食事すらまともに取ろうとしない骸が、チョコだけはばっちり完食していた。
六道骸は、チョコレートが大好き!
ならばジャッポーネのこの行事は骸との距離を縮めるのに絶好ではないか!と白蘭はひらめいた。


余計なものなど一切無い部屋ですることなどある筈もなく、日がなベッドで過ごす毎日が続く。
そんな中、突然ガラガラと何か持ってくる音が聞こえてきた。
「…?」
素肌にシーツを纏わせて身体を起こしてみれば、白蘭とその部下が何かを運んでいる。
普段誰も入れようとしないくせに、珍しい。
「ほらほら早く運んでー。そんで早く出てってー」
それでもやはり骸を見せるのは嫌なのか、隠すように骸の前に立ち、何やら準備をしている部下たちを焦らせる。
「し、失礼しました!」
部下だってそんな威圧感の中いつまでも居たくは無いので、頭を下げてとっとと逃げるように出て行った。
「…ちょっと…なんですか、それ」
広くて何も無い部屋にデデンと置かれた、何か。
「ふふー!これはねー僕から骸くんへのプレゼント!」
「…は?」
訳がわからずキョトンとする骸。
「ハッピーバレンタインー☆」
言って白蘭がボタンをポチリと押すと、機械が動き出し
「!!!!!」
チョコレートが噴き出した。
「じゃーん!チョコレートファウンテンだよー!」
甘いチョコレートの香りが途端に部屋を包む。
ドキドキワクワクしながら骸を見れば、これまで見たことがない無防備な表情で瞳をキラキラと輝かせている。
(かっわ…!)
キューンとときめきながら、フォークを握らせる。
「骸くんの為に用意したんだよ!はい、これフルーツとケーキね!マシマロもあるよ☆」
「…う…、」
白蘭をチラリと見て、それからフォークを握り締めたまま皿を凝視する。
ふるふると震える手が動かないのは、プライドが邪魔しているからだろう。
ああもうかわいいかわいいかわいいなぁと脳内でデレデレしつつも表面上はなんとか普通を装い、にこにこと骸を誘惑する。
「ほらほらいい匂いでしょ?僕さっき味見したけどすっごく、すっごーく!おいしかったよー?」
「……、…ッ」
じりじりと手が揺れる。
「僕からの贈り物だって言ってもチョコレートに罪はないんじゃない?それにこんなでっかいの、滅多にお目にかかれないんだし!」
ほら、と自分用に用意していたフォークに苺を刺し、チョコレートをたんまりとくぐらせる。
「はい♪」
「……」
う、う、と骸が唸る。
眉間に皺が寄ってるくせに、頬が赤い。
「……食べないなら、僕が全部食べちゃおっかな」
言って、見せつけるように食べてやろうと苺を骸から遠ざけると、がしっと手を掴んで阻まれた。
「むく、」
がぶっ。
予想外。
驚く間もなく、苺が骸に食われた。
白蘭から目を逸らして口を動かし、口端についたチョコまで綺麗に舐めて、手に持つフォークでスポンジケーキをさした。
チョコレートの噴水に潜らせ、それもまた口に放り込む。
もくもくと食べていく。
最初その行動にきょとんとしていた白蘭だったが、薔薇色に染まったその頬にニマリと笑い、夢中になっている骸を見つめる。
「おいしいー?」
ちらりと骸が見てくる。
けれど何も言わずに、今度はバナナをチョコにくぐらせる。
かわいいかわいいかわいいすぎ犯罪級だよもうバレンタイン最高!なんてデレデレしながら紅茶を淹れていると、皿に置いていたフォークを骸が掴んだ。
「え?二刀流?」
「…そこまで卑しくありません」
不機嫌そうに呟く。
見ればそのフォークはパインだけを選り分けて白蘭の方へと寄せている。
「これは差し上げます」
「え…っ」
またファウンテンに夢中になる骸。
「む、むくろくんからバレンタインプレゼントもらっちゃった…!」
「違う!何でそうなる!!」
思わずツッコミをいれる。
「大体、これはお前が持ってきたのだろう!!」
「あーもう嬉しいー幸せー!あ、マシマロももらっちゃお!」
「人の話を…っ!」
「ああー骸くんからもらうといっそうおいしいなー☆」
うっまー!と頬を緩ませて本気で喜んでいる白蘭を見ると、脱力して怒りも引っ込んでしまった。
「…もう、どうでもいいです…」
諦めて、ビスケットを手にとってチョコをかける。
手についたチョコも一緒に口に含むと、ちゅっと可愛い音がした。
なんだかやらしい。
ジャッポーネのバレンタイン最高!
もう一度白蘭は心で叫んだ。


たんまりファウンテンを堪能したその後、白蘭においしく頂かれたのは言うまでも無い。