軽い音を立てて扉が開く。
ここに入ってくるのはただ一人きりで、毎日懲りず訪れる男に骸は眉をしかめた。
狂愛を持って骸を軟禁し、訳のわからぬ愛を語り続ける白蘭。
幾人もの人と接してきて、そのたびに奇妙なやつらも随分と見てきたつもりだ。
だが白蘭はその中でも群を抜いている。
骸ですら、その気配に畏怖を覚えた。
それでもなお諍い続けてるのは、気高いプライドと果たすべき目的の為だ。
こつこつと、急いだ足音が絨毯に吸い込まれながらやってくる。
逃げることはできない。
回復しきれていない身体に、拘束された自由。
真正面から戦ったのに勝てなかった相手からどう逃げ道を奪いとるか。
方法が見つからない。
白い頭が見えた。
目の端で捉えただけで、骸は白蘭の方を正面から見ない。
見たくなくたって、彼は自分から近付いてくる。
…いい加減、飽きてはくれないだろうか。
「―――ッ痛!!」
頭部をいきない襲った痛みに、思わず声がもれる。
髪を思いきり鷲掴みにされ、そのまま持ち上げられた。
少しでも痛みから逃れようと身体を浮かすと、今度は後方に圧されてそのままベッドに沈んでしまう。
「…ッ」
訳のわからない行動。
けれど怒りの方がずっと強くて、痛みで顔をしかめながらも白蘭を睨みつける。
正面から見た白蘭。
その顔にはいつもの胡散臭い笑みはなく、ただ無表情に骸を見下ろしている。
「―――…」
思わず動揺する。
そして、背中を寒気がよぎった。
「――…ねー、骸くんてさー」
ニコリと顔が笑う。
けれど笑っているようには全く見えず、読めぬ感情に骸はすぐにでもここから逃げて行きたかった。
骸を逃がす気なんて全くない白蘭は、一歩も骸が動かぬ内にその身体に馬乗りになり、肩を押さえた。
骸は何も言えず、ただ白蘭から目が離せない。
「インランって、ホントのこと?結構な数の男と寝てるってさ」
「ッ?!」
突然、これっぽっちも思っていなかった一言を言われ、動揺を隠し切れず目を見開いてしまう。
骸のその反応を、是、ととった白蘭は、更に肉薄な笑みを深める。
「…どこでそれを…」
「どこだっていいじゃーん。もう存在してないんだからさ」
あんまりムカついたもんだから。
口調はあくまでいつも通りなのに、肩を押さえる手が痛い。
「僕さ、骸くん傷付けたくないからすんごくすんごく大切にしてたんだけど…―――」
裸を隠していた、シーツを取り払われる。
「嫉妬深いみたいでさ。他のやつが知ってて僕だけが知らない骸くんの表情あるなんて、嫌なんだよねー」
「――――」
紫煙の瞳が、冷たい光をともす。
「僕にも感じさせてよ。とろけちゃうような骸くんの身体」
まさぐりだした、手の平。
骸は、やはり抵抗できなかった。