文字通り、丸裸にされた。
指輪・服はもちろん、下着まで脱がされ、あげくは髪留めなどの装飾類まで一切白蘭は骸から奪った。
替わりに与えられたのは捕虜に与えるには広い清潔な部屋とベッド。
かけるものは薄い毛布だけだったが、空調が整っているため寒くはない。
「いくら骸くんが脱獄に慣れてるっていったって、そんな格好じゃ出てけないもんね」
あははと笑って言い放った声がまだ耳に残っている。
それが多分数日前。
窓もなく時計もなく一日中同じ明るさのこの部屋は、白蘭が来て寝るときにだけ暗くなる。
それだって数時間の時もあれば骸の眠気がなくなるくらい長い時間だったりするから目安にならない。
その声の主は、今骸の耳を飽きもせずに触ってはピアスをうめている。
時々ちゅっと音を立てて耳に口付けを落としてくるのがたまらなく嫌だ。
顔を背けても白蘭が逃す訳ない。
ベッドの純白に煌く鉱石の美しさ。
高価なものだろうに、無造作に鏤(ちりば)められている。
「知ってる?ピアスって元々邪悪なものから身を守る魔除けとしてつけられたんだよ」
「…それは知りませんでした」
「うそくさ」
笑って、サファイアのピアスをゴミ箱に捨てた。
青く光る軌跡を追うだけで、骸もそれ以上興味を示さない。
骸が自らあけたピアスホールは晴れの炎によりすでに塞がっており、今あいているのは白蘭が自らの手で開けたものだ。
ピアッサーなどではない。
焼いた針を使った。
最初は抵抗した骸も、三個四個と増える内に、暴れるに比例して白蘭が喜ぶのに気付いた。
ならばとつけられた後で外しゴミにしてやったら、笑って彼は骸の股間を掴んだ。
「今度同じことをやったらここにつけてやる」
忠告ではない。恫喝だ。
だから今はされるがまま。
血の跡は骸の肌にもシーツにもない。
灼きついているのは白蘭の眼の中。
昏いほどに濃い血の赫は鳩の血よりも美しい。
アレが一番骸に似合う。それは知っている。右目を潰した時に思ったのだから。
「…悪魔ならもういますよ。…ずっとね」
ぽつりと言葉を零す。
きょと、と紫煙の瞳を丸くした白蘭だが、すぐにいつもの通りの表情に戻る。
「ふぅん」
しゃらん。小気味いい音が聞こえる。細いチェーンだろうか。
骸は気付いている。
白蘭も知っている。
骸の中に巣食うおそろしいもの。悪魔。邪悪。
共存していたそのナカに白いものが侵入したことを。
異物。いらない。追い出したい。
無意識に骸の拳がシーツを掴み、握り締める。
白蘭がまた新しいピアスを取って骸の耳に当てた。
まるで骸を見張る兵を選んでいるよう。
閉じ込められる。
その身からもう出れないように。
白い悪魔を閉じ込めていく。
(なにが、魔除け…)
内側からも蝕まれる。
ああ。
諦めにも似た溜め息を骸はついた。
耳の軟骨を甘噛みされる。
大人しかった手つきがあやしいものに変わり出す。
「大好きだよ、骸くん。…僕だけの」
内側と外側の支配。
嘲笑うようにピアスがきらりとライトをはじいた。