恋愛には変化球も必要だ。
と言うのはかの家庭教師様のお言葉。
雲雀の誕生日まで日がないのにプレゼントが一向に決まらなく切羽詰まったツナは、なるほど。と頷いた。

「ヒバリさん!お誕生日おめでとうございます!」
そう言ってツナが差し出したのは、ハンバーグ。
突然ツナの家に招待され、にこにこと満面の笑みでそれを出された雲雀はキョトンとした後、少し間を置いて頬をうっすらと染めた。
「…誕生日…」
おぼえててくれたんだ。
ぽつりと漏らす言葉に、当然です!と胸を張る。
「だって、ドサクサ紛れだったでしょ。あの緑中生がインタビューに来た時」
「でも、忘れる訳ないです」
えへへと笑うツナが愛しくて、雲雀は額にかかる髪を手の甲で撫ぜるようにはらう。
優しく笑う雲雀が綺麗で、ツナはしばし見とれた後、ハと我に返って少し身体を離した。
身体中、カッカと熱い。
「え、えと!…作ったんで、食べてください!」
「綱吉が作ってくれたの?」
「はい!腕によりをかけて!」
ふぅん。
声に抑揚はない。
いつもの調子で雲雀は返しているつもりだろうが、そわそわと落ち着きのない態度に頬にさした赤味が嬉しさを隠しきれてはおらず、それをわかっているツナは嬉しくて、そして楽しくなる。
「…じゃあ」
「あ、待って下さい!」
早速食べようととすると、その箸をさっとツナが取ってしまった。
「…綱吉?」
きょとんとする雲雀に、にっこりと笑いかける。
「オレが、やりますから」
「――――」
意味をうまく飲み込めずにいると、その間にツナはハンバーグを一口サイズに切り、はい。と雲雀の口元まで持っていく。
「……」
ちらとツナを見れば満面の笑み。
そして目の前には、箸に挟まれたハンバーグ。
これは、
いわゆる、
『あーん』と言われるもので。
「……」
硬直してしまう。
「ヒバリさん?」
どう対応していいのか雲雀がわからずにいると、ツナがこてんと小首を傾げる。
「…」
普段なら、絶対にツナは恥ずかしがってやってくれない。
ちら、ともう一度見る。
ニコニコと嬉しそうなツナ。
きっとそのツナより嬉しい、自分。
「……」
はふりと口を開けると、ツナがそっと近付いてくる。
嬉しい。
幸せ。
こんな誕生日は、初めてだ。
輝かんばかりの気持ちのまま、はく、と箸ごと口に含む。
…そのまま、硬直した。
口の中が、甘い。
異様に甘い。
食べたのはハンバーグの筈なのに、チョコレートの味がする。
ギギギ、と錆びついてしまったような動きでツナに視線をやれば、いたずらが成功した子供の笑顔を浮かべている。
「…これ…」
「はい!チョコレートです!」
「……」
へへー!と笑うツナは、ハンバーグのかたちをしたチョコを改めて見せる。
なるほど、よくよく見ればハンバーグに入っているはずの人参などの姿がない。
『あーん』をしたのも、切り分けた時に硬さの違いで気付かれないようにするためだろう。
「何がいいかなーってずっと考えてたんです。そしたらリボーンが、ただプレゼントをあげるだけじゃなくて、変わったことをして忘れられない誕生日にしてやれってアドバイスくれて…。ヒバリさんハンバーグ好きだし甘いの好きだし…」
成功です!
照れて笑うツナ。
その肩に、ぽんとヒバリは手を置いた。
ニコニコと笑顔を浮かべ…ていたツナの表情が、段々と強張っている。
肩に置かれた手の力が、どんどん強くなっていっているのだ。
「ああああの…ヒバ「綱吉」」
下を向いていた雲雀が顔を上げる。
「今までもらったことがないプレゼントをありがとう。それに、そうだね。キミが言うように一生忘れられないよ」
「…ひ、ひば、ヒバリ、さ…」
「お礼に」
にっこりと笑う雲雀。
けれど、その満面の笑みが恐ろしくてたまらない!!
「僕からもたっっっっっぷりお礼させてもらう、よ!」
「ぎ、やぁぁぁあ!!」
どっこいしょとばかりに押し倒され、あれよあれよと言う間に剥かれてしまう。

その後は言う間でもなく。
朝方まで寝かせてはもらえなかった。

「こんな誕生日もいいね」
ようやく上機嫌になった雲雀が呟いた言葉にツナは、来年はまともなやつを贈る!!と痛む腰を押さえながら心に決めたのだった。