気持ちの良い午後。
屋上で雲雀を待ちながら、ツナはもらったドーナツをもふもふと頬張っている。
生クリームがたっぷりつまった、甘い甘いドーナツ。
雲雀が来た時一緒に、と思ったのだが、腹の減り加減にひとつだけつまむことにした。
「うまーっ」
スイーツしか食べたことがないと言う雲雀をフランチャイズチェーンに連れて行ってみたら、これが大はまり。
一緒にでかける機会が増えたことが、ただ嬉しい。
「ん?」
一人幸せを噛み締めていると、ぱたぱたと聞き慣れた羽音が聞こえた。
見てみれば、ちょこんと目の前にヒバードが。
じぃ、と、つぶらな瞳でこちらを見ている。
「なに、食べたいのか、お前」
主人に似たのか、この鳥も随分甘いものが好きだ。
ドーナツを持ち上げてみれば、ぴぃ。と可愛らしく鳴く。
純粋に可愛くて、ツナはくすりと笑うとドーナツの端っこを少し千切って目の前にいくつか置いてやる。
「ほら」
途端に喰らいつくヒバード。
かわいいなぁ。
くつくつと笑って再びドーナツを食べようと持ち上げたところで、ヒバードがいきなり飛び立った。
「ぇ、」
「ピイィ!!」
「うわああぁぁぁっ!!」
鋭く強い鳴き声。
突然で驚いたツナは叫びながら手のドーナツを、ポロリと落としてしまった。
「あー!!」
べちゃ、と、食べかけのクリームのところから落ち、ツナは硬直が解けない。
「・・・あ、あ!こ、この・・・ッ」
ヒバードは再び翼を畳むと、落としたドーナツにすかさず嘴をつけた。
けれど取り上げることも出来ずにツナがおろおろしていると、キィ、と錆びた音を立てて扉が開いた。
「・・・、なに泣いてるの?」
大きな目を潤ませているツナに雲雀は目を丸くしながら近付く。
「こ、こ、こいつが・・・っ!」
震える声でツナが指差すのでそちらを見てみると、ヒバードが身体中を生クリームだらけにしながらまだ一心不乱に食べているではないか。
「・・・鳥に取られたの?」
「うぐっ」
痛いところを衝かれツナが口を噤むと、雲雀は、ふ。と息を吐いてヒバードを摘み上げた。
「ハナセ ハナセ」
「何言ってるのこんな生クリームまみれになって・・・さっきもクッキー食べたでしょ?」
「ドーナツ モ スキー」
「ばか」
ハンカチを取り出して、身体中についている生クリームをとってやる。
「・・・ちゃんと風呂にはいんなきゃ家から追い出すよ」
「・・・・・・」
身体を濡らすことが嫌いなのか、ヒバードはぴぃぴぃ鳴くのをやめておとなしくなる。
まったく、と呆れながら、再び雲雀はぐすぐすとまだ鼻を鳴らしているツナの隣に腰を降ろす。
「キミもそんなことで泣かない」
「だ、だ、だって・・・あれ一番好きなやつだったのに・・・!」
「・・・まったく」
「―――え、ヒバ、ふぐっ」
ツナの後頭部を引き寄せると、そのまま食むように唇を重ねる。
甘い。
クリームの甘みが口内にまだ残っており、唇には粉砂糖がついている。
れろりと舐めると、ツナがびくりと肩を揺らした。
「また買いに行けばいいじゃない」
言われ、きょとんとツナは雲雀を見上げる。
そしてぽわりと頬を染めると、すいっと視線を逸らした。
「綱吉?」
どうしたの、と言おうとすると、きゅうとツナがシャツの裾を掴んできた。
ちらちらと視線がこちらを見ており、ツナの言いたいことがわかった雲雀は、苦笑して息をはいた。
それは幸福な溜め息。
「・・・ちゃんと、一緒に行くから」
頭を撫で、髪を梳いて額にキスを落とす。
それだけで、さっきまで泣いていたツナはえへへと笑う。
まるで子供の表情の変化なのに、可愛くて可愛くてたまらない。
そっと顔を近づけると、察したツナが大きな瞳を閉じる。
甘い唇に、キスをする。
「甘い」
笑って、今度はもっと深く、口をつける。
「ん、・・・ふ、ぁ・・・」
味も、匂いも、漏れる声すらも。
甘くておいしくて、際限なく求めてしまう。
ふは、と口を離すと、とろんとした視線でツナが見上げてくる。
「ヒバリさんだって、甘いですよ」
チョコの味します。
そう言って、ぺろりと口端を舐める。
馬鹿な子。
煽るなんて知らないで。
その唇をもっと深く長く味わいたくてお互い顔を寄せと、ぽとりとツナの頭にヒバードが落ちてきた。
「え?」
「アマイノ タベタイー」
きらきらと目を輝かせるヒバード。
えぇ?!と驚くツナに、呆れる雲雀。
「キミは、ダメ」
ツンと指で突くと、抗議するようにヒバードはピィと鳴く。
くつりと笑って、釘をさす。
「これは、僕だけの」
ヒバリさん!と叫ぶツナにキスをすると、コツンコツンと嘴で頭をつつかれる。
それでもやはり雲雀はかまわず、キスを深くした。