だから隣に


一度部屋に戻り、ラビはなんとかブックマンの荷物から服を二着取り出すと、ぶかぶかの服を脱いでそれに着替えた。
「うーん・・・ぴったし」
なんだか複雑だ。
言葉には出さないものの、それはすぐ向こう側で服をひっぱってはむっつりとしている神田も同じだ。
とりあえず、元に戻るものでよかった。
もう一度この大きさから人生やり直しだなんて、絶対勘弁だ。
何より、これでは残った命を守れない。
能力がありながら全力を出せないのは、もうこりごりだ。
「よっし。んじゃあ手伝いに戻ろうぜ」
「・・・おう」
故人を悼む気持ちは、ラビよりむしろ神田が強い。
普段ならギャアギャアと叫んでズバリと言ってくる神田が、このことに対してはそう怒りは見せなかった。
もしかしてこの薬は、先日のノア襲撃で亡くなった科学班の一人が気を紛らわせるために作ったかもしれない。
それを思えば、むやみに罵声を言える訳もない。
ちゃんと、わかっているのだ。
こういうところが、たまらなく好きでしかたない。
神田より一歩前を歩いていたラビはクルリと踵を返し、後ろ向きで歩く。
ラビの視線に気付いたのか神田も視線をあげ、眉をしかめた。
「・・・ンだよ・・・」
「や、懐かしいなって」
ちょうど出会った時くらいの年齢だろうか。
見覚えのある輪郭、身体の細さ、色、声。
「昔と違うのは髪の長さくらいかね」
それと、服装。
言えばさらに神田は眉をしかめ、つかつかと歩みを速めてラビを追い抜く。
慌てて後を追ってくるラビをチラリと見て、ハッと神田は笑った。
「お前は昔っから全然変わってないな」
「・・・・・・」
この頃の顔で、この小馬鹿にした顔を見たのは初めてだ。
「・・・昔のユウはもっと可愛げがあったさ。ラビーって笑顔で駆け寄ってきてくれたのに」
ぽつりと呟いた言葉に、やはりというか神田がものすごい勢いで食いついてくる。
「してねぇよ!」
「うそさー!してたしてたー!オレにだけ懐いてさー!オレ見つけると笑顔全開でラービーvって!!」
「しーてーねーえー!!」
恥ずかしい過去を言われ、頬を紅く染める。
しばらくそんな押し問答を続け、つんとラビが唇を尖らせた。
「・・・それにー・・・オレだってちゃんと変わってる、さ「変なもん見せんじゃねぇよ!!」いだー!!」
ズボンを下げて下半身を出そうとしたラビを、神田が全力の右ストレートを持って止める。
沈んだラビを放って、そのまままた歩き出す。
「ゆ、ユーウー・・・まって〜〜〜〜・・・」
情けない声を上げながら、へろへろとその後をラビが追いかけてくる。
つんとした、小さく可愛らしい鼻を鳴らして、横目で見ると、もう一度、その口を開いた。
「・・・もう、あの頃の俺じゃねぇよ」
「へ?ああ、うん・・・?」
曖昧に頷いた返事につっこみはこない。
そのかわり、言葉が続く。
「言葉だってわかるし戦い方だって覚えてる。・・・六幻がこの身体でつかえるかわかんねぇけど、前よりかずっとマシに戦える」 「・・・ユウ」
ぱちりと、若草色の瞳を瞬かせる。
そしていつの間にか止まっていた足で再び神田へと駆けていく。
「おっオレだって変わったさ?!」
「・・・あほ、知ってるっつの」
くつりと笑う。
意地が悪くて、少しだけ優しい目元。
「一番変わったのは、ユウへの好きって気持ちさ?!」
その言葉は予想外だったのか、きょとんとする。
「昔より、ずっと、ず――――っと!ユウのこと大好きさ!」
愛してる!
言った言葉に嘘はない。
真実を知って、ケンカして擦れ違って、それでも諦めきれず、想いが募って募ってしかたがない。
とめどないこの暖かい感情は、昔よりもずっとずっと、強く絡まって、離れない。
けれど照れ屋の神田のことだからゲンコの一発は覚悟の上だった。
降ってこない、痛みにそろりと神田を見てみれば、彼はきょとんとした表情をそのまま真っ赤に染めていた。
「、ユ」
「ば、っかやろう!!」
赤い顔を隠すように腕で覆い、早歩きで去っていく。
「ユウ!待ってさ!」
慌てて追いかけてようやく並んだと思ったら、また神田が立ち止まり、キィッとこちらを睨んできた。
反射的に身体が跳ねる。
その両頬を掴んで引き寄せると、頭突きをする勢いで額をあわせ(目の前に星が舞った)目元を紅く染めた漆黒の瞳がこちらをまっすぐ見つめてくる。
「アホ!お気楽ウサギ!!知ってんだ、っつーんだよこの馬鹿!!」
ぺいと身体を離し、またとっとと歩いていく。
額からうつされたように、頬が、顔が、身体中が。かっかと火照ってたまらない。
火照って火照ってそれを別のにかえたいのに、この幼い身体じゃそれも無理。
ううう、とどうしようもできず、へろへろと後を追って、歩きながらべたりとくっつく。
「ゆ、ユウ〜〜〜・・・」
「ん、だよ!」
「・・・オレ、早く元に戻りたいさ・・・」
「俺だってに決まってんだろ!こんなふざけた―――」
「そんで、ユウ抱きたい・・・」
大人の意味で。
固まった。
ラビの顔は、本気で、真っ赤だ。
茶化した言葉ではない。
さらに神田も体温を上げる。
殴れるはずもなかった。

だって残念ながらそれは真実、心からの、想いなのだから。



☆END☆


コメント

おジャンピ様を見て・・・。
まさかこんな不意打ちで仔ラビュ見れるなんて思ってなかった・・・うっ(嬉泣)
と言うありがとうで書いたやつ(笑)