輝ける星

キミたちは僕らの輝ける星。
キミたちがいるだけで、僕らはこんなにも輝ける。

「さて。二人とも、準備できたか?」
太一の言葉に、はーい!と元気良く拓也が返事する。
輝二も、コクリと頷いた。
食器を片付け終わった太一はエプロンを外し、二人の元へと駆け寄る。
「・・・輝二・・・また拓也の髪を結ったのか・・・」
拓也の髪がしっかりと結われている。
5歳児にしては器用に二つに分けていて、ピンク色のゴムで結んである。
しかも、ミミたちが持ってきた可愛らしい服を着ているので、どう見たって女の子だ。
いつもの事ながら、それを見て太一は苦笑を浮かべる。
「・・・だって・・・かわいいから・・・」
ポ。と、輝二が頬を染める。
何故そこで頬を染めると言う突っ込みはさておき、まぁ拓也も別段嫌がっている様子も見せないので、いいのだろうが。
「さて、二人とも。今日はいよいよ幼稚園に入学の日だ。・・・準備はいいか?」
『はーい』
二人でしっかりと返事をし、太一に頭を撫でてもらう。
洋服の上に、お揃いの青いスモックを着て、黄色い帽子をかぶる。
そして最後に、やはりお揃いの肩かけバックを背負う。
バックの中には、お弁当とハンカチ、ティッシュが入っている。
後必要なものは、もう太一が事前に持っていっているのだ。
「じゃ、行くか」
太一も必要最低限な物を持ち、玄関へと出る。
拓也と輝二の初の幼稚園登校に、ヤマトも来たがっていたが、今はレコーディング中で家にさえ居ない。
ブツブツと昨日、電話越しにグチを溢していたのを思い出し、太一は苦笑を漏らす。
「かあさーん!早く早くー!」
すでに靴を履き終わった拓也が急かし、輝二も拓也の横に並んでいる。
「はいはい。今行くから」
シューズを履き、鍵をかける。
はしゃぐ拓也を、輝二が手を繋いで危なくないようにしてやる。
「いいか、はしゃぎすぎて怪我とかすんなよ?」
「うん!」
「先生・・・ヒカリの言う事、しっかり聞いてな?」
「うん」
輝二も頷く。
ヒカリは小学生の頃から憧れていた幼稚園の先生になった。
偶然太一の家の近くの幼稚園で働いているのだ。
石田家から拓也たちの通う電世幼稚園までの距離は徒歩で10分の距離だ。
さすがに初めての事なので、太一も緊張する。
拓也と輝二と雑談をしながら、幼稚園に辿り着く。
門のところでは、ヒカリが待ってくれていた。
「おはようお兄ちゃん、拓くん、輝くんv」
「おう、ヒカリ。おはよ」
「はよーっ!」
「・・・おはよう・・・」
ヒカリは拓也と輝二の頭を撫でてやる。
「じゃ、後は任せてね」
「ああ。頼んだな」
太一とヒカリの会話を聞き、拓也の顔色が曇る。
「・・・かあさん、どっかいっちゃうの・・・?」
不安げな顔に、太一はしゃがんで拓也と視線を合わせてやる。
「たーくや。昨日話しただろ?拓也と輝二は、ここでお勉強しなきゃいけないの」
わかったか?と太一が顔を覗き込むと、哀しげにしょげてしまった拓也がこくりと頷く。
「なぁんて顔してんだよ。夕御飯の前にはちゃんと迎えに来るし、輝二も一緒なんだから」
『輝二も一緒』のあたりで、拓也がパッと顔をあげる。
「こーじ?こうじはずっといっしょ?」
「一緒だよ。な、輝二?」
「うん。おれはたくやとずっといっしょ」
輝二が拓也の手を握ってやると、ようやく拓也が笑顔をみせてくれた。
「じゃ、オレがまんする。だけど、ぜったいむかえにきてよ?」
「もちろん」
もう一度二人を撫でてやると、太一はよっと立ち上がった。
「友達いっぱい作って、オレに教えてくれよな」
太一の言葉に、二人は元気良く返事した。

電世幼稚園は、4つのクラスに分かれている。
3歳未満児がいる『ひよこ組み』、年少クラスの『うさぎ組』、年中クラスの『きりん組』、年長クラスの『つばめ組』に分かれている。
それぞれ、赤、桃、黄、青色に色分けおり、拓也と輝二は年中・・・『きりん組』だ。
「はい。今日から麒麟組にはいりました、石田拓也くんと石田輝二くんです。
みんな、仲良くしましょうねー」
ヒカリが園児に言うと、みんなから元気のいい返事が返ってきた。
拓也はわくわくと園児を見渡し、輝二は早速人見知りが発動してしまったのか、たじろいている。
それから、自分の机へと向かう。
幼稚園と言っても、やるのはお遊戯とちょっとした授業だ。
あとはお昼寝をして、4時には親が迎えに来る。
どちらかというと、保育園に近いシステムかもしれない。
席についてから、ヒカリが今日のやる事を簡単に話す。
まずは外でツバメ組とお遊戯だそうだ。
カバンを指定されたロッカーに入れ、輝二は拓也の手をとり、外へと向かう。
みんな転校生が珍しいのか、遠巻きに見たり、話し掛けてきたりする。
「ねぇねぇ。たくやくんっておとこのこ?おんなのこ?」
実は、みんなそれが気になっていた。
見かけは可愛いのに、『拓也』は男の子につける名前だ。
砂場で遊んでいた拓也は、後ろから話し掛けられて、輝二と一緒に『山』を作っている手を止めた。
「オレ?オレおとこだよ?」
「えーみえないー」
女の子たちが、キャラキャラと笑う。
「たくやくんかわいいーv」
「こうじくんはかっこいいねvvv」
ここに太一かヤマトが居たら、『おませな』と苦笑をしているだろう。
「おい」
何とか輝二も輪に解けてきて、一緒に砂遊びをしていると、拓也の作っている山に影が落ちた。
『う?』と思い、拓也が顔を上げると、そこに恰幅のいい男の子が居た。
胸のネームプレートは『青色』つばめ組だ。
「おまえらがあたらしくきたやつらか?」
「そう。おまえは?」
相変わらずマイペースな拓也の態度に、男の子がムッとした表情になる。
「おまえ、としうえにむかってそーいうたいどとるなよなっ!」
「だって、なまえわかんないもん」
拓也が小首をかしげる。
男の子は名前を聞かれ、得意げにふんぞり返る。
「おれのなまえはしばやまじゅんぺい!おまえたちよりもいっこうえなんだぞ!」
「そっか。じゅんぺー、よろしくな!」
にこっと拓也が笑う。
が、純平は呼び捨てにカチンときて、拓也の肩を押した。
不安定に座っていたので、拓也は簡単に砂の上に転がってしまった。
拓也はきょとんとしていたが、それに怒髪天をついたのは輝二だ。
「おまえっ!たくやになにするんだ!」
拓也を立たせてやり、輝二は純平を睨む。
純平も負けずに、腕を組んで輝二を睨み返す。
「そいつがとしうえにむかってタメぐちをきくからだ!もっとレイギをわきまえろよな!」
「だからってつきどばすことないだろ!」
輝二が純平を突き飛ばし返す。
呆気に取られていた純平だが、すぐに反撃する。
近くに居た園児たちは、キャーキャー騒ぎながら周りを囲っている。
「こーじ!」
ケンカを始めてしまった輝二をとめようとするが、純平が輝二を強く押し、拓也に当たってしまったので、輝二の下敷きになってしまった。
「た、たくやっ」
輝二は慌てて拓也の上から退く。
「ご、ごめんたくや・・・だいじょうぶか・・・?」
「うん・・・」
幸い、砂場だったので衝撃をやわらげてくれたのだろう。
外傷も見られない。
「おまえ・・・!」
輝二がまた純平に向かっていこうとすると、大きな声が響いた。
「やめなさいっ!」
思わず輝二はその場に立ち止まり、純平は固まっている。
「・・・!?」
驚いてそちらの方を見ると、女の子が腕を腰に当てて立っていた。
「あんたたち、やめなさいよ!みんなのメーワクでしょ!」
「い、いずみちゃん・・・」
途端に、純平がオロオロした態度になる。
泉は拓也の方にやってくると、まだ残っていた砂を取ってやった。
「だいじょうぶ?」
「うん。きみはだぁれ?」
「あたし?あたしはきりんぐみのいずみ。おりもといずみっていうの!」
「おれはいしだたくや!あっちはこうじっていうんだ!」
よろしくね。と泉は微笑んだ後、純平をキッと睨んだ。
「い、いずみちゃん・・・これはね・・・そう!あいつらがさきにからんできたんだ・・・」
「うそ!ともきがおしえてくれたのよ!じゅんぺいからたくやたちにからんだんでしょ!」
泉が純平に詰め寄る。
純平は泉に弱いのか、先程の態度はどこへやら。たじたじだ。
「・・・ともき・・・?」
新しく出てきた名前に、拓也は小首をかしげる。
「たくや・・・!」
そこに、輝二が寄って来た。
「ごめんな。だいじょうぶだったか?」
さっき、拓也の上に転んでしまった事を言っているのだろう。
拓也はニパーッと笑い、輝二の腕に抱きついた。
そこに、泉と純平がやってきた。
「ほら!」
泉に促されながら、純平は渋々、と言うように拓也と輝二に謝った。
もー。と、泉はまだ憤慨している。
そこに、小さな男の子がやってきた。
小走りにやってきて、泉の服をぎゅっと握る。
「・・・そのこは?」
拓也は泉の後ろにいる男の子を指差す。
「あ、このこはともき。ひみともきっていうの。3さいの、ひよこぐみだよ」
よろしくね。と、泉が友樹の代わりに挨拶する。
「よろしくな、ともき!」
人懐っこい笑みを浮かべると、友樹が拓也の方にやってきて、さきほど泉にやっていたように、服を握る。
「このこがわたしに、じゅんぺいがたくやたちにからんでるっておしえてくれたの」
「そっか。ありがとな、ともき」
「ありがと」
輝二も友樹にお礼を言う。
友樹は嬉しいのか、笑みを浮かべた。
そうして、輝二の服も、その小さな手でぎゅっと握る。
「なつかれたね」
泉がクスクス笑っている。
「じゅんぺいもね、ヤなこじゃないの。ただ、ちょ〜っとなかよくなるまでのカテイがにがてなの」
「そーなんだ」
拓也は改めて、純平にも『よろしく』と笑顔を向ける。
純平は照れたように、おう。と頷いた。
仲直りが終わったところで、ヒカリがみんなを呼ぶ。
「はーい、みんなー!御飯の時間だよ〜」
わぁっと、みんなの笑顔が一層輝く。
「じゃ、じゅんぺー、ともき。またな」
拓也と輝二と泉は手を繋いで、きりん組の教室へと向かった。

「よ」
拓也と輝二が一緒にお絵描きをしていると、ふいに声がかかった。
聞き慣れた声に、拓也と輝二は顔を輝かせて振り向いた。
「かーさーん!」
「・・・とうさん・・・!」
太一の横にヤマトの姿を見つけ、輝二が驚いたように駆け寄る。
太一が拓也を、ヤマトが輝二を抱き上げてやる。
「父さんなーどうしても帰るのは一緒がいいって、仕事切り上げてきたんだぞー」
太一が面白そうにクックッと笑ってヤマトの肩を叩く。
「・・・うるさいな・・・俺だって二人の事が心配なんだ!」
照れたように、ヤマトはそっぽを向く。
輝二は、自分達を大切に思ってくれる両親が嬉しくて、思わずヤマトに抱きついてしまった。
「なんだ輝二、寂しかったのか?」
本当は嬉しいのだけれど、寂しいのもあるので、コクリと頷く。
「・・・そっか・・・拓也は寂しかったか?」
「うんっ!でもねーこうじいたからだいじょうぶだったよ!」
拓也も輝二を真似して、ギューっと太一に抱きつく。
・・・と、チラチラとこちらに視線を感じる。
子供ではない。どちらかと言うと親だ。
何せ、幼稚園に有名芸能人がいるのだ。
気にするなと言う方が無茶だろう。
「じゃ、じゃあ帰るか」
大騒ぎにならないうちに。
「まって。オレ、せんせーといずみとじゅんぺいとともきにバイバイいいたい」
そう言って、拓也は太一の腕の中から出る。
「・・・おれも・・・っ」
それに次いで、輝二も拓也の後を追う。
「・・・なんだ。もう友達出来たのか」
「さすが子供だなー」
変な風にヤマトが感心している。
いずみたちに『バイバイ』をしている間に、ヒカリがこちらにやってきた。
「これ。今日のプリントね」
「ああ。・・・どうだった・・・?」
「二人とも?ちょっといざこざはあったけど、すぐにみんなと友達になっちゃったわ。安心して」
ヒカリに笑まれ、太一とヤマトはようやく肩の力を抜く。
「もう。親バカなんだから」
と、苦笑されてしまった。

帰り道。
眠ってしまった拓也と輝二を抱え上げ、帰路を辿る。
「よく眠ってるなー」
無防備に寝顔を晒す輝二を、ヤマトが覗き込む。
「子供は子供なりに気張ったんだろうな。とにかく、上手く行きそうでよかったよ」
太一も、自分の腕の中でスヤスヤ眠る拓也を見る。
小さな手が、自分の服をしっかりと掴んでいる。
「うーん・・・オレたちってホントに親バカだなぁ」
先程ヒカリに言われた言葉を思い出し、太一は苦笑を浮かべる。
「何言ってんだ。親バカでなくってどうするんだ」
などと、ヤマトが胸を張っていっている。
「ばーか」
と笑い飛ばしながら、それでも全然構わないな。と思う太一だった。
涼しくなってきた夕日に、それでも胸の中はとても暖かい。



☆END☆


コメント

子供表現=ひらがなだけのセリフ・・・読みにくくってすみません(汗)
自分でも書いてて誤字起こしそうで恐いです(笑)
4話目は幼稚園入園編〜☆
泉、友樹、純平を出したかったのです〜!(笑)
輝一を出そうかは悩み中。うーん。