SWEETER

ピンポーン♪
軽快な音が鳴り、テーブルメイキングしていた太一は顔を上げる。
「来たな」
太一がウキウキと玄関に駆け寄る途中、拓也と輝二も着いてきた。
部屋の中は、ヤマトの作っているご飯でいい匂いがする。
「だれ?だれきたの?」
真上の母親を覗き込みながら、つられて拓也も笑顔になる。
拓也も輝二も、今日はちょっとおめかしをしている。
「オレとヤマトの大切な友達と家族。拓也と輝二を紹介するんだよ」
拓也の頭を撫でてやり、玄関の鍵を外した。
「いらっしゃ」
『きゃー―――――――っvvv』
太一の言葉を遮り、入ってきたのは女性3人組。
空にミミにヒカリだ。
「や〜んこの子達が太一とヤマトの子?か〜わい〜vvv」
「拓也くん覚えてる?お兄ちゃん・・・お母さんの妹のヒカリだよ?」
「じゃ、こっちが輝二くんか〜・・・アレ?輝二くん固まってる。照れてるの〜?かわいい〜vvv」
異口同音な意見に、出迎えた太一と招待客の丈、光子郎、タケルは苦笑を浮かべる。
輝二は、いきなりハイテンションな女性達に囲まれて、太一の後ろで固まってしまっている。
拓也も最初はビックリして母親にしがみついていたが、次第に打ち解けていく。
この環境への溶け込み方の速さが、拓也と輝二が決定的に違うところだ。
「ヒカリおねーちゃん、オレしってるよ」
太一の服の裾を引っ張り、拓也が報告してくれる。
「そうか〜。拓也は覚えてたんだな〜。えらいぞ。・・・輝二も覚えてるか?」
太一に振られ、輝二もぎこちなく頷く。
「え〜・・・本当に拓也くん男の子・・・?見えないわー・・・」
拓也を見ながら、空は感嘆の溜め息をもらす。
「オレおとこのこー」
はーい!と拓也が手を上げて応える。
「うふふ・・・まだ輝二くん固まってる〜。輝二くん〜?ミミお姉ちゃんですよ〜?」
なでなでと、ミミが輝二を撫でる。
「ほらほら、みんな中に上がらないと」
そのまま子供達と戯れ創めた3人に、丈は苦笑しながら中に入るよう促す。
「そうそう!私お土産持ってきたのー!」
ミミと光子郎はアメリカに住んでいる。
住んでいると言っても、双方とも日本とを行ったり来たりしているので、永住はしていない。
ミミとつき合わされたのだろう、光子郎の両手にはなるほど、たくさんの紙袋がもたれている。
「ホントか?嬉しいな!」
全員が靴を脱ぎ終わったので、リビングに案内する。
「・・・あんまり喜ばない方がいいですよ・・・」
疲れた感じの声で、光子郎が太一に耳打ちした。

拓也と輝二が盛大に袋から出したものを見て、太一は『なるほど』と思った。
服服服。服がてんこもりだ。
普通の服なら太一も大喜びだが、大半は何と女の子ものだった。
ヒラヒラのそれには、靴まで一緒についてきている。
「・・・えーっと・・・ミミちゃん?うちの子たちは男の子なんだけどー・・・」
「だってこれかったの、たっくんとこうくんが来たって知らされる前なんだもーん。
ヤマトさん、絶対女の子だ!って言ってたから」
「・・・ヤマト・・・」
地鳴りよりも低い声の責めた言葉は、確かにヤマトに届いたはずだ。
証拠に、何かを落とした音がする。
「でねーミミのオススメは断然これ!!ネコと犬のパジャマー!!」
ジャジャンと出されたソレは、朱を薄めたピンクのネコと薄青色の犬のパジャマだった。
肉球の手袋とスリッパもセットにされている。
フードにはネコ耳と垂れ犬の耳があり、顔もちゃんとある。
嬉々としたのは拓也で、1、2歩後ろに下がったのは輝二だ。
「たっくんはどっちがいい〜?」
「オレ、ネコすき〜v」
「じゃ、こうくんは犬ねv」
はい。と犬のパジャマを渡される。
どうしようと横を見れば、拓也が嬉しそうに喜んでいる。
ここで拒否したら、間違いなく拓也がぐずる。
「あ・・・・・・ありがとう・・・ございます・・・」
ミミは満足そうに笑うと、次々に服を出していく。
「太一ー手伝ってくれー」
ヤマトに呼ばれ、太一はそこを離れる。
「いいよう遊ばれてるみたいだな。拓也と輝二」
「ああ。も〜おもちゃ状態」
ヤマトは苦笑して、盛り付けた皿を太一に渡す。
10分くらいして、ようやく準備が整った。
「みんなー。こっちこーい」
太一が声をかけて、一番に駆けて来たのは拓也だった。
・・・すっかり女の子の恰好をした・・・。
「た・・・拓也・・・」
フリフリのピンクのワンピースに二つに結った髪。
横髪をお花の形のピンでとめている。
似合う。はっきり言って可愛い。
拓也に見とれていると、空の声がした。
「ほら・・・お母さん来たよ、輝二くん。向こうの部屋行こう?」
その様子だと、どうやらグズっているらしい。
珍しい。と思いながら、とりあえず丈たちにリビングに行くように言い、拓也を抱き上げる。
そして、輝二の居ると思われる、女性たちが群れている場所に向かう。
「どうし・・・」
と、覗き込んだ瞬間、太一はまたしても凍りつく。
輝二が出てきたくないはずだ。
輝二もまた、女装していたのだから。
こちらはいつもしているバンダナを外され、高くポニーテールに結われている。
結び目に大きなリボンを一緒に結ばれ、こちらもフリフリのワンピースを着ている。
思わず『似合う』と言いそうになってしまったが、輝二の泣きそうな視線に出会い、直前で飲み込んだ。
「た、拓也は嫌がらないからともかく、輝二が嫌がってるから脱がさせてやってくれ。な?」
太一に言われ、ミミは意外にも素直に返事をする。
「男の子ものならいんだよね?じゃ、今たっくんが着てるのとお揃いのを〜」
とりあえず、輝二もそれなら納得したらしく、太一はほっと溜め息をついた。
いつものようにバンダナを結び、輝二もようやく出てきた。
『兄妹』のような衣装に、ヤマトも固まってしまった。
とりあえず、ようやく全員がリビングに揃った。
大人は酒、子供はジュースを持ち、乾杯をする。
「じゃ、改めて家の新しい家族を紹介しまーッス」
はい。とヤマトに促され、拓也がまず立ち上がった。
「いしだたくやです!よろしくおねがいします!」
それから、輝二。
「・・・いしだこうじです・・・よろしく・・・」
二人で揃ってお辞儀をすると、拍手が跳ぶ。
それからは無礼講だ。
集まった通り、今回のパーティの中心は拓也と輝二だ。
拓也は誰とでもすぐに打ち解けられたが、輝二はなかなか固いものが取れなかった。
そんな輝二をミミが1番気に入って、光子郎と一緒におままごとまで始める始末。
「いいなーミミも早く子供ほしいー」
何て言って、光子郎がジュースを噴きだした。

夜も更け、拓也があくびをしたのを機に、パーティ兼宴会は終了。
「じゃ、また来るね〜v」
「おやすみなさーい」
粗方の片付けを手伝ってもらい、ちょうどいいところで切り上げてもらった。
拓也は半分夢の中で、今太一に抱っこしてもらっている。
玄関で見送り、ヤマトは食器洗いを再開する。
「ヤマトー。風呂沸いてるー?」
太一が顔を出してきた。
「さっき入れといたから、もうそろそろ・・・」
と言うところで、湯沸し機がピーっとなる。
「炊けたな」
ヤマトが笑顔で言うと、太一もにこっと笑顔で返す。
「じゃ、オレ拓也と輝二入れてくるな。もうそろそろやばい」
「ああ」
パタパタと遠ざかっていくスリッパの音を聞きながら、ヤマトはようやく最後の一枚を濯ぎ終わり、手を拭って肩を鳴らす。
さすがに1日中騒いでるのは疲れた。
明日もオフなので、ゆっくりと寝よう。
どさっとソファーに腰掛け、テレビをつける。
さして面白くも無い番組を見ていたら、ウトウトしてきた。
そして、太一たちが風呂から出た時には、ヤマトは完全に沈没していた。
「ヤマトー上がったぞー・・・・っと」
太一は拓也を腕に抱いている。
こちらも限界で、寝てしまった。
輝二も何とか起きている、と言う感じだ。
「・・・ったく、親子だなぁ」
太一は苦笑を浮かべると、子供部屋に入っていった。
部屋にはミミたちが持ってきてくれた服で溢れかえっている。
明日あたり、整理しなくては。
輝二を先にベットに上がらせ、拓也をベットに寝かせてやる。
途端に暖かい体温が腕の中から去っていき、少し寂しい気分になる。
輝二も横になった途端、トロトロと瞼が落ちてきている。
「おやすみ」
太一が二人の頭を撫でてやると、輝二もすぅっと眠っていった。
子供部屋から出ると、ヤマトがまだ眠っている。
本日何度目かわからない苦笑を浮かべ、太一はヤマトに近付いていった。
まずは起こして、風呂に入らせて。
それからベットに連れて行かなくては。
もうひと仕事。と胸を張り、太一はヤマトの口に唇を近づけていった。



☆END☆


コメント

3話目はお披露目篇〜(笑)
この小説内で描いていたネコと犬のパジャマとは、もちろんイラスト部屋で描いていたアレです(大笑)
女装した拓也も可愛いけど、輝二も多分可愛いと思うぞ〜っと思って描きました〜v
拓也が朱を薄めたようなピンクで、輝二が薄青色の服系!
何だか知らないけどこれは譲れない!(何故)