桜の雨

※ これは拓也と輝二が小学5年生の時のお話しです。注意☆

桜が舞う。
ヒラヒラと舞い、自分の視界を薄いピンク色に染める。
上を見上げれば、空の青と桜のピンクが可愛らしく混ざり合っている。
嬉しくて、拓也はクルリとその場でクルリと一回転。
それに続き、背中に背負ったランドセルも回る。
しっかりと留め金を締めていないので、ランドセルの蓋が最後にペシリと拓也の肩を叩いた。
「へへ〜♪」
何となく、気分が弾んでいる。
それは、この風景のせいだろうか?
何度か景色を見るようにクルクル回っていると、感覚がおかしくなってしまったのか、足元がグルリと揺らぐ。
「ぅおっ?」
バランスが崩れ、視界が回る。
が、心がヒヤリとする前にトンッと背中に軽い衝撃がかかった。
ん?と上から後ろを見れば、空と桜よりも大きく近い、輝二の顔があった。
輝二の表情は怒ってはいなかったが、苦笑を浮かべていた。
「たく」
「ごめん〜」
輝二が何かを言う前に、拓也は輝二の首から後頭部に腕を伸ばし、ぎゅっと自分の方に引き寄せた。
すると輝二の口も黙り、代わりに拓也の腰からおなかにかけて回した腕に力を込めてくる。
しばらくそうして道の真ん中でイチャイチャしていると、『こらー』という声が遠くから聞こえた。
ん?と思って頭をそちらの方に持って行くと、家のベランダから太一が手摺りに持たれかかり、こちらを笑ってみていた。
服の袖が捲くられており、洗濯物が風に当たってパタパタと音を立てている。
拓也と輝二がその体勢のまま太一の方に手を振る。
「かーさーんっ」
太一も手を振り返し、手摺りに肘をかけ、その手を頬に当てる。
「お前らそんなトコでイチャイチャしてねぇで学校行け。学校ー」
言われ、拓也は一度輝二の頭に回していた腕を外し、正面から抱きついた。
「そんな事言って母さん、羨ましいんだろ〜?」
言ってろ!と、太一が洗濯バサミを投げたが、もちろんそれは届かない。
そんなやり取りを少しした後、二人は太一に手を振り、ようやく学校へと向かった。
途中、輝二が拓也のランドセルの留め金が閉まっていないのに気付き、締めてやった。
「さ・く・ら〜」
拓也が歌混じりに桜並木を踊るように歩いていく。
が、ときどき公道に出そうになり、輝二の心臓がハラハラするので、輝二は拓也の手を取り大人しくさせた。
小さい頃から輝二は自分よりも少しだけ大きかったが、この頃は更にその差が開いている。
肉体の成長に骨が追いつかず、成長痛で痛そうにしている輝二を可哀相と思いつつも羨ましいと思う。
輝二が平均以上に身長が大きいのに比べ、拓也は平均よりも少し小さい。
それが、最近の拓也のコンプレックスだ。
「拓也?」
そんな考えが表情に出ていたのか、輝二が心配そうに覗き込んでくる。
こう言う時も、自分を見下ろす輝二に比べ、自分は常に頭を上に起こしている。
「・・・何でもない」
だが、そんな事で大好きな輝二との一時を不意にしたくない。
輝二は自分にとても甘い。でも、それに甘えすぎてはいけないのだ。
拓也はニパッと笑うと、繋いだ手を解き、代わりに輝二の腕に抱きついた。
そして、思う。
(あ・・・)
「そっかそっか」
なるほど。と一人で頷いている拓也を不審に思いつつも、そのまま二人は登校して行く。
今日は授業は無く、新しい学年になっての始業式だ。
幸せな事に、輝二とは5、6年生と同じクラスになれた。
これで、宿泊訓練も修学旅行も完全に行き場所が離れてしまうという事は無いだろう。
家でもたくさん話しているのに、会話は全然尽きない。
拓也が一方的にしゃべり、輝二は受け手に徹している。
それでも会話は成立し、輝二もしゃべると拓也は更に嬉しそうに笑う。
そしてソレを見て、輝二の表情もまた笑顔になるのだ。
・・・石田家の庭にも、桜の樹が一本ある。
先日、そこで4人はお花見をしたのだ。
珍しくヤマトに空きが出来たのと、拓也と輝二の春休みが今日までという事で、太一が急遽計画したのだ。
久々に食べたヤマトの料理もおいしかったし、何より4人で一緒に過ごせるという事がなかなかなかったので、とても楽しかった。
・・・父親はよく、母親を太陽やヒマワリに例える。
明るく、その誰をも魅了する笑顔と性格がとても似ているのだと、酒を飲んではよく惚気た。
じゃあ、輝二にとっての自分はなんだろう?
小さい頃、輝二は自分の事をやはり『太陽』と例えてくれた。
じゃあ、自分は花に例えると何なんだろう?と思う。
乙女思考だなーと呆れる自分も中に入るが、それよりもやはり、好奇心が先にたつ。
「なぁなぁ」
クイクイと腕を引っ張られ、輝二は拓也の方を向く。
「オレって、花に例えると、何?」
突然脈絡も無い質問に、輝二のキリッとした眼がパチクリと大きく開いた。
それでも、からかうでもなく優しく笑ってくれる。
「そうだなー・・・拓也は、桜でありヒマワリであり紅葉でありサザンカであるなぁ」
思っても見なかった。
何せ、複数回答が返って来たからだ。
しかも、そのよっつの共通点が見つからない。
「な、何で??」
思わず聞き返すと、輝二はクスリと笑い、足をぴたりと止めた。
そして、拓也の耳元に口を寄せる。
「その季節にあって、ずっと俺の傍にあるから」
そう囁いた後、耳たぶを軽く唇で食むようにキスをされた。
思っても見なかった行動に、思わず身をヒクっと動かしてしまったが、すぐに拓也は笑顔になり、輝二の腕に尚強く抱きついた。
ずっと傍にあるもの。
そう、輝二が言ってくれた事だ嬉しい。
「じゃあ、俺もずっと輝二の傍に居るな?」
言えば、輝二が今度は額にキスを落としてくれた。
・・・こう言う時の、身長差。
こんな時なら、少しくらい背が低くったっていい気がする。

そう思えるのは、この暖かな気候と、桜のせい?

それとも、キミが傍に居てくれるせい?

・・・まぁどちらにしても。

自分は――――――自分たちは、これで幸せなのです。



☆END☆


コメント

電車乗ってますと、かなりの風景が眼に入り、桜とかもよく見るんですな。
あの、花びらのヒラヒラ加減が大好きなんですよ、桜v
ぼ〜っとしてたら手が動いてました(笑)
・・・ここで小5バージョンを書くのは初めてですね〜。
5歳児には無いイチャイチャ感が書けて楽しかったです(大笑)