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Little&Biggest Happy グツグツと音を立てるソレは、幼い自分にはとても熱く、直ぐには食べられないものだった。 それでも、大好きな大好きな、ソレ。 だってそれは、自分と家族との唯一と言っていい程の思い出だから。 「はぁ〜・・・今日のご飯はどうすっかなぁ・・・」 太一がやや乱暴にソファーに腰掛けたため、そこでテレビを見ていた拓也と輝二は少し弾んでしまった。 「おおうっ」 それが以外に面白かった拓也は、もう一度やってと太一にせがむ。 太一はそれに苦笑して、ダメ〜と拓也の頭を撫でる。 「え〜なんで〜っ」 拓也がブーイングを飛ばすと、そこにキッチンからリビングにやってきたヤマトが苦笑を浮かべる。 「拓也。そう何度もやったらソファーが壊れちゃうぞ。拓也このソファー好きだろ?大切にしてやらないとな」 ヤマトに言われると、拓也はきょとんとし、小首をかしげる。 「じゃ、かーさんはメッ?」 拓也が言うので、太一とヤマトは思わず声を上げて笑い出してしまう。 「そうだなっ。母さんはメッしなきゃなっ」 ヤマトが言うので、拓也と輝二は太一の左右に立ち、太一の頭を子供の力でコツリとグーで叩く。 「かーさんメッ」 「メッ」 「は〜い。ソファーさんごめんな」 太一は笑いながらソファーを撫でる。 その様子を笑いながら見ていたヤマトは、太一の手から雑誌を貸してもらう。 「また夕飯悩んでたのか?」 「そ〜なんだよ〜。何か特売モノとかあるならまだ考える範囲は縮まるんだけどさ・・・今日何にもセール無いんだよ〜」 そう言えば、今日の新聞にはスーパーからの告知のものは入ってはいなかったと思い出す。 「今日は何か食べに行かないか?久々にさ」 太一はヤマトに、曖昧に頷く。 「あんま外で食事さしたくないんだよなぁ・・・こいつら・・・っつーか拓也外で食べさせると野菜全っ然食べねェから」 なっと太一が拓也に頭にポンッと手を乗せる。 「うんっ!」 拓也は何で頭を撫でられているのかわからず、ニコッと笑顔で答える。 「・・・たく、そこはよろこぶトコじゃないから」 輝二がツッコミをいれても、拓也は小首をかしげている。 「・・・そうなのか?」 「そうなの」 う〜?と拓也は悩みながら、輝二に抱き付く。 そのまま輝二はソファーへと横になり、二人でまた戯れる。 「う〜ん・・・何か食べたいものあるか?」 「太一が作ってくれるものなら何でも」 「やさいなしカレー!!」 「た〜くのは却下」 太一が手を上げて答えた拓也の脇腹をくすぐる。 「あひゃひゃひゃひゃっ!!」 くすぐられる事が苦手な拓也は、オーバーリアクションで笑い転げている。 太一はくすぐる手をそのままに、意見を上げていない輝二に視線を向ける。 「輝二は何かあるか?食べたいもの」 思い出すのは、今よりも小さな自分には大きすぎる器。 そこにたんまりと入っている、熱く煮えたぎる、白いもの。 急いで食べようとフォークで突き刺し、冷ますのを忘れては火傷をした。 父親がいない時の母親は、一時とても優しい顔で居てくれた。 その顔が、唯一自分の支えだった。 「・・・グラタン・・・」 ポツリと零した輝二の言葉に、太一とヤマト、拓也はキョトンとする。 妙な間が開いてしまったので、輝二はパッと顔を上げた。 そこには、優しい表情の、家族の顔が・・・。 「グラタンかぁ・・・そういや食ってないなぁ最近」 「そうだな・・・あんまり思い出さないし・・・あ〜でも、そう思ったら食べたくなってきたな!」 両親の会話を、上を向きながら聞いていた拓也は、ねぇねぇとヤマトの服の裾を引っ張る。 「とーさんとーさん!グアタンって何?」 「グラタン」 いまいち新しい単語の発言の苦手な拓也を抱き上げて、ヤマトは言いなおしてやる。 「んーとな。マカロニってわかるか?」 「穴が開いてるこういうのでしょ?」 拓也はそう言い、手でジェスチャーをする。 「そうそう。それと、いろんな具が入っていて、それをホワイトソースとチーズをかけて焼いたものだ」 途中から単語がわからなくなってきた拓也は、小首をかしげる。 「・・・それっておいしい?」 「そうだな〜父さんは好きだな〜」 「オレは鳥のモモ肉入ってるのが好きだな。チキングラタン」 「・・・こうじもすき?」 拓也に振り返られ、輝二は即答する。 その輝二を、ヤマトがしているように太一が抱き上げる。 見下ろしていた視線を上げ、拓也はパッと顔を輝かせる。 「じゃ、たくもたべてみたい!」 拓也の言葉に、太一は笑みを深くする。 「そっか〜グラタンか〜・・・よし!今日の夕飯はそれに決まりな!」 「グラタン〜♪」 「輝二は何入ってるグラタン好きなんだ?」 「・・・エビ・・・」 「オレ、エビならすき〜♪」 「じゃ、俺買い物に行って来るよ」 ヤマトがはいっと手を上げる。 「じゃあオレもいくー」 拓也がヤマトを見上げて手を上げる。 「よし!じゃあ輝二は母さん手伝ってくれな?」 「・・・うん・・・!」 輝二も力強く頷いたので、太一はぎゅーっと輝二を抱きしめた。 暖かな想い出の筈の、ソレ。 でも、あの家から追い出された時から、もう自分は食べないんだと心に決めていたのに。 ソレを食べるたびに思い出してしまうだろう、今は悲しい想い出の根本。 なのに自分の口は、ふっとどうしてその名前を言ってしまったんだろう? 久々にトライしたため、いろいろと手間取ってしまった。 最終的には家族4人で四苦八苦しながらも、楽しく作った。 ようやく出来たソレをオーブンに入れ、待つこと十数分。 キッチンからチーズの焦げるいい匂いが漂ってきた。 テレビを見ていた拓也も輝二も、ふんふんと鼻を動かしている。 「・・・いいにおい〜♪」 楽しみそうに拓也が呟くと、オーブンがチンッと言う軽快な音を立てた。 「出来たかな?」 ヤマトが覗いていると、テテテと拓也と輝二もキッチンにやってきた。 「みせてみせて!!」 オーブンは危険なので、椅子を持ってきても拓也たちが触れないところに置いてあるため、拓也たちからは何も見えない。 「熱いから、絶対触っちゃダメだぞ?」 二人に注意をしてから、ヤマトは二人を持ち上げた。 「おぉ〜♪」 拓也は始めてみる食べ物に眼をキラキラさせ、輝二も頬を高揚させた。 「じゃ、向こう持ってくぞ〜」 太一がミトンをはめて、下に置く入れ物を持ってきたので、ヤマトは二人を抱えたままダイニングへと連れて行く。 そこには、分けるためのお揃いの小皿が四つ。 椅子に降ろしてもらい、太一が持ってくるのを待つ。 「あっちちちち・・・はい、グラタ〜ンっ」 「わ〜♪」 拓也はそれを、フォークを握りしめながら心待ちにする。 大きめのスプーンで、ヤマトが各自に分けてやる。 「はい、輝二に拓也」 ヤマトはチーズの焦げたおいしいところをいれてやった。 拓也がそのままフォークに刺し食べようとしたので、輝二がソレをふせぐ。 「たく、あついからフーフーしなきゃ」 「あ、そうか」 ネコ舌の拓也が息を吹きかけて冷まし終わるのを待ち、一緒に『いただきます』をする。 「おいしい〜♪」 ハフハフ言いながら拓也はグラタンを頬張る。 前の家のとは違う味だが、それでもおいしいソレに、輝二も食いつく。 「うまいか?」 母親に尋ねられ、輝二が頷けば、太一もヤマトも嬉しそうに笑う。 その笑顔を見て、不意に涙が零れ落ちた。 落ちた涙に、太一とヤマト、遅れて拓也が驚いた。 「ど、どうした輝二?」 「グラタン、熱かったのか?」 心配してくれる両親に首を横に振る。 それでも涙はとまってくれない。 何も言わずにただ泣いていると、拓也が自分の服で目元を拭ってくれた。 そちらの方を向けば、心配そうな拓也の顔。 「・・・こう、どうしたの?」 心配してくれる、その言葉たちが―――――――。 ただ自分を心配してくれるそのセリフが、とても心に染みて。 ――――――あたたかくて。 「・・・んん。なんでもない」 おいしいっと笑顔を見せて笑えば、両親も拓也もようやく肩の力を抜いてくれた。 それさえも、嬉しい要因で。 ココに来てよかったと、改めて思える。 不意に出てしまったその『言葉』 自分は一度失ってしまったこの暖かさを再確認したくて、言ったのかもしれない。 ・・・なんて、じぶんはしあわせなんだろう。 なんて、しあわせなんだろう。 コメント これはアレです。 『ハウスのグラタン』から思いついたものです(笑) 前の、松本梨香さんが歌っていた時のCMも好きなのですが、今の、兄妹でグラタンを食べてるっていうもの好きなのです♪ 拓也が家族を大好きなように、輝二だって大好き。 ただ、前の事を引きずるのだって当然だから、それも抱えて、それでも今は幸せって言うのを伝わるように書いて見ました☆ ・・・ところで私、『ソレ』とか『コレ』とかの抽象的?な表現好きだなぁ(苦笑) |