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一緒にひとときをすごそう パコパコパコ・・・。 規則的な音が室内に響く。 レイはテーブルに肘をつき、キーボードを叩くカイの真剣な顔をじっと見ている。 キョウジュに勝るとも劣らないその速さもさることながら、先程からの意味不明な言葉の羅列をつらつらと打ち続けている。 しかも、ほとんど手元を見ずに。 レイもパソコンに慣れれば出来るようになると言われたが、カイの手付きを見ていると、そうは思えない。 「・・・カイ〜・・・」 名前を呼ぶと、ホントに聞いているのかわからない返事が返ってくる。 相変わらず手はノートパソコンのキーボード上にあり、ときどきパソコンの横にある、これまた何が書いてあるのか全然わからない資料をペラペラめくっている。 ここ3日くらいずっと見てる姿である。 次期火渡エンタープライズ社長のカイは、子供なのにこんな、大人がしてもおかしくない仕事をベイブレード世界大戦の最中にもやらなければならない。 視力が悪いわけではないが、いつもはしない眼鏡をしているカイは新鮮だ。 「カイ〜・・・前から何やってるんだ?」 レイの言葉にも、カイはちらっとレイに顔を向けただけでまたディスプレイに視線を戻す。 「言って、お前はわかるか?」 「・・・そりゃ、わかんないけどさ・・・」 レイは拗ねて、ぷうっと頬を膨らませる。 「・・・カイは疲れないのか・・・?」 ふっとカイは口元に笑みを浮かべる。 「疲れる疲れないの問題じゃないんだ。俺がやらなければいけないモノだからな。 『疲れたから嫌だ』『疲れることはしたくない』ではいけないだろう?」 この部屋では、カイとレイが共同で使うことになっている。 3日間カイはホントに休む暇なく、レイよりも遅く起きていて、早く目覚めているのに一向に終わる気配は無い。 辞書みたいに分厚いソレを見直し、また手を加えているらしいのだが、手伝おうにも、何をしているのか全然わからないので、手伝えることも出来ない。 「・・・オレに何か手伝える事あったらいいのに・・・」 カイに言うでもなく、独り言のようにポツリと言う。 「お前もパソコンをまず使えるようになって、経済学帝王学倫理精神学べば手伝えるようになるぞ?」 嫌味のように、カイはニヤリと笑う。 「・・・クマ出来てる・・・」 ムッとしたが、その時にカイの目の下にクマが出来ているのを見つけた。 「カイ、しっかり寝てるのか・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 答えが無い。 「・・・呆れた・・・」 レイはそういうと席を立つ。 カイはそれを目で追っていたが、すぐにまたパソコンに眼を移す。 しばらく没頭していると、どこからともなく暖かな匂いがしてきた。 「・・・?」 後ろを振り向くと、部屋に備え付けられているちょっとしたキッチンから、笑顔でレイが盆をもってきた。 「・・・それは・・・?」 盆の上には、蒼い陶器の急須と揃いの湯呑みが置いてある。 「烏龍茶。少し休憩入れようよ」 レイにニコリと微笑まれると、どうしても逆らえない。 はぁ。と溜息をつき、カイは今まで打った分を保存してノートパソコンを閉じる。 そして眼鏡をとり、資料の束と一緒に向こうにおいやる。 レイは慣れた手付きで茶を注いでいく。 そういえばタカオたちが、レイの入れる茶はうまいとか言っていたな、とぼんやり思い出す。 「はい」 コトリと小さな音を立てて、レイはカイに湯呑みを渡す。 外見の唐草模様のような蒼とは違い、中側は真っ白だった。 その中に、鼈甲色の烏龍茶が並々と入っている。 香ばしいいいにおいを立たせるソレを、カイは少し口に含ませる。 少し甘く、既製のものよりもずっとおいしかった。 「『休休休の処、まだ何かを休せん』」 「・・・?」 レイのいきなり言った言葉が理解できず、カイは眉を潜める。 そんなカイに気付き、レイは自分の分用に注いだ烏龍茶に口をつけ、笑う。 「陸羽の言葉。まさにカイみたいな事を言うんだなーって」 『陸羽』とは茶學家で、茶経と言うものを記している唐の頃の人だ。 「働いて働いて働いて・・・休む暇なんて無いのにまた何かを頼まれると、また自分の時間を潰して受け入れてしまう。 ・・・・・・でもね、カイ。」 レイはカイを見つめる。 「お茶を飲むことの暇を見つけるのも、大切なことなんだよ?」 いつものように、レイが微笑む。 ・・・心が、和む。 「・・・俺としては・・・」 「?」 カイは湯呑みをテーブルに置くと、隣に座っているレイの頭を片手で固定して逃げられないようにして、一瞬、触れるだけのキスを送る。 「お前と居れる事が、大切なんだがな・・・」 またニヤリとシニカルに微笑まれ、遅れてレイの頬がぶわっと紅くなる。 「カ〜イ〜」 レイが何か言う前にカイは行動を起こす。 むりやりレイを肩に担ぎ、ベットのところまで行く。 ギャアギャア騒ぐレイをそこに降ろしてやり、重なるように自分も寝転がる。 「か、カイ・・・?」 「・・・少し寝る・・・膝を貸せ・・・」 レイが何か言う前にカイはレイの膝の上に頭を乗せ、レイの方・・・ちょうどお腹くらいのところを向き、カイは眼を閉じる。 レイはいきなりのカイの一連の動作に唖然としていたが、嬉しそうに溜息をつくとカイの髪を梳きはじめた。 「・・・オレは特別っていいんだよね?」 答えは、吐息だった。 暖かな日。 凍て緩みを感じながら、この部屋で。 暖かな香りに包まれながら。 キミと過ごす、大切なこのひととき――――――。 コメント 珍しく(?)ちょっと短めな話。 これはバイト先の店長からネタを貰いました・・・(大笑) ホントはもう少し長い話だったのですが・・・き、金八先生見てたら遅くなっちゃったv(リアルタイムな・・・) 私は茶系は全部好きですーv最近のマイブームは『中国緑茶』v |