気になるコト。

「おかしい。絶対」
野営をしている準備をしている時、ふいに拓也がしかめっ面でそんな言葉を漏らした。
いきなり放たれた言葉に、泉たちはしばし眼をパチクリさせていたが、すぐに拓也に質問を返した。
「なにが?何がおかしいワケ?」
もし今自分がやっている、肉リンゴを串に刺す。と言う作業を不器用だと言うならば、有無を言わせず殴ってやる。
などと心の中で恐い事を考えている泉の思考をあっさりと否定し、『輝二が』と拓也は返した。
「輝二?あいつはいつもヘンだろ?」
多分嫌味とかでは無く素で言う純平に苦笑を漏らす。
「まぁ否定はしないけどな。そうじゃなくて、風呂ン時が」
『風呂?』
3人は声を合わせて聞き返す。
拓也の言う風呂とは、水浴びの事だ。
ちなみに輝二は、ネーモンとボコモンを引き連れて薪を拾いに行っている。
「そ。ほら、泉以外はオレたち、危険を考慮して2人ずつ入ってるじゃん?」
うん。と3人は頷く。
「でもさ、オレ、輝二と一緒に入った事ねぇんだよな・・・あっ!別にだからって一緒に入りたいわけじゃねぇぞ!」
最後の否定はどうやら耳に入れてくれなかったらしいが、たしかに。と泉たちも納得する。
「そういえば輝二、拓也とは一緒に入らないわよねぇ・・・」
「うん。いっつも何か言っては避けてたなぁ・・・」
「なんで・・・・・・あ・・・」
「気になるね・・・あー―――・・・」
口元を引きつらせて、泉と純平は顔を見合わせる。
「・・・アレかしらね・・・」
「・・・アレじゃないかな・・・」
悟ったように、2人はふっと溜め息を漏らす。
「な、なんだよ2人ともいきなり判ったような顔しちまって・・・なんだよっ!何がアレなんだよ!」
「・・・拓也は知らない方が良いと私は思うわ・・・」
哀愁を漂わせるような雰囲気で、泉は遠くを見る。
「じゃ、僕は?」
「友樹はもっと知らない方がいいな・・・」
純平は頬を引きつらせて友樹の頭を撫でてやる。
さっぱり判らない拓也と友樹は、顔を見合わせて眉を寄せる。
「何だよ〜・・・オレたちにも教えろってば〜っ!」
「じゃ、輝二に直接聞けばいいじゃない」
「教えてくれなかった」
『・・・・・・・・・・・・』
さすが直球男神原拓也。
しかしまさかもう聞き済みだったとは・・・。
「な〜っ!お〜し〜え〜ろ〜よ〜っ!!」
拓也が駄々をこねる。
「じゃ、ムリヤリ一緒に入ってみたら?」
「い、泉ちゃんっ!」
いい加減ウンザリしてきて、投げやりにはいてしまった言葉に、泉はハッとする。
が、時すでに遅し。
放った言葉が元に戻るはずも無く。
「そっかームリヤリかー・・・よっし!それで行くかっ!」
「た、拓也、人にはそれぞれ秘密にしたい事とか内緒にしたい事とかがあるんだよっ!
な?輝二にだって知られたく無い事はあるんだからそっとしといて・・・」
「それが皆にも一緒に入りたくないって言うなら判るけど、オレ限定だぜ?それは納得いかねぇよっ」
確かに、それも一理ある。
純平は言葉に詰まってしまう。
もともと純平と拓也の語彙は一緒くらいだ。
なので、拓也がこうして有利な立場にある時は、だいたいは勝てない。
「ね、拓也お兄ちゃん。僕協力するから、わかったら教えてくれる?」
バカ。と泉と純平は心の中で呟いたが、拓也が笑顔でOKを出したのは、言うまでも無い。

「じゃ、今日の風呂のペアを決めよーぜっ!」
夕食の肉リンゴを食べ終え、ウキウキと拓也がそういった。
輝二は少しその態度に眉を顰めたが、すぐに元の顔に戻った。
(どうせ、拓也の笑顔はやっぱり可愛い・・・とでも思ってんでしょ・・・)
もちろんそれは図星で、輝二の顔はちょっと紅かったり。
「じゃ、僕今日は輝二さんと入りたーいっ!」
はーいっ!と元気に手を上げたのは友樹だ。
いつも友樹は拓也と入りたがるので、輝二は今度こそ眉を顰めた。
「・・・なんでだ?」
そんな質問も当たり前だろう。
そこまで考えていなかった友樹は、え?と言葉に詰まる。
「え・・・えーっと・・・えっと、ね・・・それは・・・」
「こ、輝二があんまり武術に長けてるから、ちょっと友樹は教えてほしいのよねー?」
思わず泉は助け舟を出してしまう。
「そ、そうなの!ほら、僕弱いから、少しでも強くなれたらなって・・・」
「ふぅん・・・?」
まだ輝二は訝しげに見ていたが、すぐに視線を逸らして樹に凭れかかる。
「何で助け舟出しちゃうのさ泉ちゃんっ!」
純平がヒソヒソと泉に小声で話し掛ける。
「しょ、しょうがないでしょ!何か条件反射っぽくなっちゃってるのよ!」
泉も小声で話し返す。
その様子を、第三者のネーモンとボコモンが、ハテナマークを浮かべて見守っていた。

最初に入ってくるねーと友樹が立ち上がる。
最近拓也の影響を受けてか、友樹にも甘くなってきている輝二は、さっと立ち上がった。
いつも、出来るだけ水辺の所に野営準備をしている。
今日の野営場所は、少し歩いたところに大きめの川があるのだ。
「あー友樹!ちょっといいかー?」
歩いていこうとした友樹を、拓也が決めていたタイミングで呼び止める。
「何ー?拓也お兄ちゃん?」
「ちょっと来いって」
「うん。あ、輝二さーんっ!先行ってていいよ〜っ」
友樹を待っていた輝二は、友樹から許し(?)を貰うと、さっさと歩いていった。
「・・・ヘンなところでマメだよな、輝二って・・・」
「ま、今回はそれが幸いになったって事でー」
ニパッと拓也が笑って立ち上がる。
「じゃ、行ってくるな♪」
と、拓也は上機嫌で輝二の後を追う。
まるで、これから大きなイタズラをする前の子供のようだ。
「・・・ああ・・・自ら狼に食べられに行くなんて・・・なんて・・・バカ・・・」
泉がそっと呟く。
「輝二さんって、狼さんなの?」
友樹だけは、このまま純粋さを守ってやりたい。
切にそう思う泉と純平であった。

川に辿り着き、そっと樹の陰から輝二の様子を覗き込む。
少し離れた岩に、キチンとたたまれた服が置いてあり、その上にチョコンとデジヴァイスがある。
そして川の中には、こちらの背を向けた輝二がいた。
しめしめ。
そう思い、拓也は輝二の服が置いてある近くにやはり脱いだ服を置き、そっと川に入った。
気候は安定していて、少し暑いくらいだ。
それでも、プールのように管理いるものとは違い、川の水は身を竦ませた。
それもすぐに去り、サラサラと肌を擦っていく水が気持ちが良くなる。
拓也はそっと輝二に近付いていく。
「友樹?」
気配に気付いたのか、輝二がこちらを向く。
どう反応を返すのかが楽しみで、拓也はそのままの笑顔で迎える。
「よっ♪」
「・・・・・・―――――――っ?!」
拓也が軽く茶目っ気を篭めて挨拶をすると、輝二は信じられないというように眼を見開いた。
「な、なんで拓也が・・・友樹は・・・?」
「友樹にはちょっと協力してもらったのさ。お前にちょーっと聞きたい事があってな」
「・・・聞きたい事・・・?」
この時、予想通り驚いてくれた輝二にウキウキしていた拓也は気付かなかった。
拓也と眼を合わせない事。
それから、近付いてくる拓也から、さり気に身を放していることを。
「そ♪何でお前、オレと一緒に風呂に入りたがらないのかーって」
「な、なんでって・・・」
ジリジリと近付いてくる拓也から、輝二は完全に目を逸らした。
そこで初めて、輝二がいつもと様子が違う事に気付く。
「・・・輝二・・・?」
拓也は気になり、更に水流に逆らって輝二に近付こうとする。
「来るなっ!!」
いきなり輝二に怒鳴られて、拓也は身を竦ませる。
「・・・あ・・・っ・・・ご、ゴメン・・・っ」
自分でも怒鳴るつもりは無かったのか、輝二はすぐに謝る。
それでも、いつもと様子が違うのは明らかだった。
「・・・こうじ・・・?なぁ・・・怒ってるのか・・・?」
もしかして輝二は、こうやってドッキリみたいな事をされるのが、嫌いなのか。
もしそれが原因で、避けられているのなら・・・と思うと、何故か胸が痛んだ。
「いや、怒ってない・・・ごめんな?怒鳴ったりして・・・」
と、輝二が近付いてきた。
機嫌を直してくれたのかとホッとしていると、輝二は拓也を通り過ぎてしまった。
「こ、輝二・・・っ」
何故か焦って、輝二を呼ぶ。
輝二は振り返らず、顔も向けず、拓也にポツリともらす。
「・・・俺、もうあがるから・・・」
2人きりの時、そんな風に突き放された事の無い拓也は、何が何だかわからなくなる。
「こ、輝二・・・怒ったのか?だったら謝るからさ・・・」
後を追い、輝二の肩に手を乗っけると、それは振り返った輝二によって叩き落とされた。
「あっ・・・悪い・・・っ」
輝二に悪気はない。
そう思っても、涙が出てしまった。
情けなくって、両手で顔を覆う。
「・・・拓也・・・ゴメン・・・」
いつもなら、フワリと抱きしめてくれるのに、今日は言葉だけだ。
何故か、自分と輝二の間に距離を感じたようで、更に拓也は切なくなる。
「・・・たくや・・・」
声色で、本当にすまないと思っている事がわかる。
だが、水で冷やされた肌に、輝二の体温は感じられなかった。
「・・・輝二、オレの事嫌いになった・・・?」
「違う・・・それは絶対に・・・違う・・・っ」
「じゃ、何でオレと一緒に風呂に入んないんだ?」
輝二は押し黙る。
切なくて、切なくて。
涙がポロポロと流れていく。
『輝二に嫌われている』
そう思っただけなのに、涙と痛みが止まらない。
「オレと、一緒にはいるの・・・そんなにイヤなのに・・・オレの事好きなのかよ・・・」
それはとんでもなく矛盾のある事だ。
あれほど拓也の事を好き好き言っておいて、抱きしめ、キスまでしているのに・・・。
「違う」
尚も輝二は否定する。
「じゃ、何で・・・っ」
拓也は顔を上げる。
思いがけず近くにあった輝二の顔。
ふと視線を下に逸らせば、しなやかな筋肉のついた輝二の身体があった。
「反対、なんだ・・・」
「え?」
ようやく輝二の発した言葉に、拓也は小首をかしげる。
「拓也の事が嫌い、とか、触りたくない、とか・・・そうじゃない・・・そうじゃないんだ・・・」
「じゃ、何で・・・」
上を見上げると、さらにアップで輝二の顔が迫ってきた。
何故か抵抗が出来なくて、拓也はそのまま輝二のキスを受けた。
肩に置かれている手と、唇に触れている輝二の体温がどうしようもなく嬉しくて、また涙が溢れた。
「・・・ン・・・っ」
鼻にかかった甘い吐息を漏らすと、輝二は更に深く貪ってきた。
だんだんと足腰が立たなくなってきて、拓也は輝二に掴まる。
同い年の、同じ性別を持っているのが信じられないほど、輝二の身体はしっかりとしていた。
「・・・ふぃ・・・っ」
ようやく唇を解放されると、拓也は眼を真っ赤に潤ませて、肩で息をしていた。
「・・・わかっただろ・・・?2人っきりで、こんな・・・裸なんで見たら・・・歯止め・・・・・・利かなくなるから・・・」
ぎゅっと、いつのまにか背に回された腕に力が篭められる。
「・・・はどめ・・・?」
輝二と違い、幼い事もあって、拓也はそう言う事にまだまだ疎い。
輝二は言葉を捜すように視線を彷徨わせていたが、どんなに遠まわしに言っても拓也には伝わらなさそうなので、輝二は耳元で直球に言う。
「セックス・・・したくなる・・・無理矢理にでも拓也の身体開いて、むちゃくちゃにしたくなる・・・」
途端に拓也の顔が真っ赤になる。
さすがに伝わってくれたようで、ホッとしたような反応が恐いような。
「な、だから」
「なんか・・・」
輝二の言葉を遮り、拓也は目線を合わせないままで呟く。
「なんか・・・嬉しいかも・・・」
「――――――――っ!?」
かぁっと、今度は輝二の顔が真っ赤になる。
本当にこのまま川に沈んでもいいくらいに信じられない。
「た、拓也・・・」
しかもこの愛おしい子は、多分そんな殺し文句だ何てわかってはいないだろう。
「だ、だけどオレは、外でヤるなんてイヤだからなっ!」
「う、うん。それはもちろん・・・」
腕をすり抜け、拓也は服のある方へを向かっていく。
それから、拓也が言葉に含ませたものに気付く。
「た、拓也・・・それって向こうに帰った後なら良いって」
「うわーっ!うわーっ!!オレ知らねぇー――っ!!」
輝二の言葉を遮り、拓也は大声を出す。
「たっ」
拓也。と呼ぼうとしたところで、拓也が服を持って見えないところへ行ってしまった。
はぁ。と溜め息をつく。
だが、それは決して残念なものばかりではなかった。
顔に笑みを浮かべ、熱を冷ませるように水につかる。
拓也を好きで、本当に良かった。
・・・拓也がどう思ったのかは、わからないが。

それからも2人が一緒に風呂に入ることは無かった。
その後、約束通り拓也が友樹に『何で輝二が拓也と一緒に風呂に入りたがらないか』をちゃんと事実で放したかは謎だが。



☆END☆


コメント

ふっと思いついて、今日の更新内容を変更してまでも書いたものです(笑)
そういや風呂の時どうしてるんだろ・・・と、風呂に入っている時に思って(笑)ああ、こんなんだったら萌え〜みたいな。
ってか、小5で欲情する子供ってどんなんだよ。とか書いてて突っ込みいれたり。
まぁでもそれって、ヤマ太も書いてる私が言えるセリフじゃ全然無いんですけどね!(笑)