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All of All 自分の人生で初めて出来た、『護りたいもの』 きらきらと輝くキミを、遠くで近くで、見守って居たいんだ。 その子が生まれたのは、ロイが十四歳の時だった。 リゼンブールに住み、ロイが慕っている恩師のホーエンハイムと、その妻の獣人であるトリシャとの子だ。 間近でトリシャの腹部が大きくなって行くのを見ていたが、それでもやはりこうして生まれてきた子を見るのは感動してしまうのは当然だろう。 「エドワードって言うのよ」 よろしくね。とトリシャがエドワードの代わりに挨拶してくれる。 すると横からホーエンハイムが手を伸ばし、トリシャに息子を抱かせてほしいとせがむ。 「また?」 とトリシャは苦笑してエドワードをそっと抱き渡す。 と、同時に聞こえる、盛大な泣き声。 慌ててホーエンハイムがトリシャに再び渡すと、途端に泣き止むエドワード。 「・・・やはり僕は嫌われているのか・・・?」 しょげてしまった夫に苦笑して、あの人、いつもエドワードに泣かれてるのとロイにひっそりと耳打ちをしてくれた。 「違うわよ。きっとでまだあなたが抱き慣れてないからエドワードもびっくりしちゃうのよ」 ね?と言われ、ようやくホーエンハイムもまたトリシャに抱かれているエドワードの頬をつついたりしてかまってやる。 錬金術の父として錬金術師たちから尊敬されているホーエンハイムがただ一人愛した女性が、トリシャだ。 そんな人と結ばれて授かった子なのだ。 喜ぶなと言う方が無理な話しだ。 ほほえましくその光景を見ていると、ふとトリシャと眼があった。 「ロイも抱いてみる?」 そう言われ、ロイは至極慌てた。 生まれたての赤ちゃんを見るのも初めてなのだから、もちろん抱くなんてしたことはない。 それでもエドワードを見ていると、その愛らしい子に触れてみたいと思う。 泣かれるのを覚悟でトリシャから大切に預かると、小さくて重い命はロイに体温を移してくれた。 同様に、ロイの体温もエドワードに伝わっただろう。ふとエドワードがその瞼を持ち上げた。 「―――――」 ロイは思わず息を飲んだ。 その、瞳の、美しさに。 「綺麗な眼だろう?」 見惚れていると、自慢げにホーエンハイムが言ってきた。 蜂蜜の様なとろりとしたきんいろの眼は、宝石の様に美しい。 と、その眼が、口が。 ふにゃりと笑った。 「あらあら」 トリシャはクスクスと微笑み、ホーエンハイムは自分には懐いてくれないのにと少しふて腐れている。 「これからよろしく。って言ってるのかしらね」 トリシャが代弁するように言う。 抱き上げて確かに感じた命に、愛おしい気持ちが湧いてくる。 「・・・こちらこそ、よろしく」 まるで理解しているように、エドワードの笑みが深くなる。 これが、ロイとエドワードの、最初の出逢いだった。 □■□ 少しだけカビ臭い部屋の、日の当たる場所でロイは読書に勤しんでいた。 恩師の蔵書は相変わらず見事で、毎日見ていても脳はまるで飽きない。 と、木製の扉が少しだけ開いた。 まずピコピコと揺れる艶やかな尻尾が顔を出し、次にひょこりと顔が覗いた。 「・・・ロイにぃ・・・?」 呼ばれ、ロイは書物から顔を上げた。 「おいで」 腕を拡げてやると、ぱっと顔を輝かせてエドワードが入ってきた。 勢いよく抱き着くと、満足したように尻尾がまたパタパタと揺れる。 「アルは?」 「まだひるねしてる〜」 「エドはもういいのかい?」 「うんっ」 暖かい存在をしっかりと抱きしめてロイは立ち上がり、ホーエンハイムの書斎から出ると、ちょうどトリシャと出会った。 「あらエドったら…お兄ちゃんの邪魔しちゃダメでしょ?」 メッとトリシャが叱ると、エドワードのふくふくとした頬がぷぅっと膨らんだ。 「じゃまなんてしてないもっ」 ね〜ろいにぃ。と同意を求められれば、エドワードに甘いロイは頷くしかない。 「ええ。私の方がお邪魔になってるんですし、気になさらないでください」 甘いことをトリシャも重々承知しているので、苦笑しながら子供部屋へと向かった。 多分、アルフォンスを起こしに行くのだろう。 「きょうのおやつはホットケーキ!」 今日のおやつを知っていると言うことは、ホットケーキの匂いで眼が覚めたのだろう。 「エドは食いしん坊だね」 くすりと笑えば、エドワードもへてりと少し照れつつ笑う。 ソファーでエドワードを抱きしめていると、ややあってアルフォンスを抱えたトリシャと、ホーエンハイムがやってきた。 五歳と四歳になったエドワードとアルフォンスが最近興味を示しているのは、錬金術だ。 父親もロイも錬金術師で、周りにある本もそう言う関係のものばかりなので、自然に覚えてしまったのだ。 それでも、自分の力に見合わないものを練成するのは危険と、ホーエンハイムはエドワードとアルフォンスに自分かロイの居ない場所での練成を禁止している。 覚えるな、と言っても、それは環境上仕方ないのだ。 「さ、おやつにしましょうか」 三時のおやつはエルリック家恒例の風景だ。 トリシャが準備をするためにアルフォンスをおろすと、アルフォンスはホーエンハイムの方へ行き抱っこをせがむ。 この中で一番小さいアルフォンスは、一番大きな父親の膝が大好きだ。 「ちいにぃよりもおっきい〜」 「うっさい〜!」 『ちいにぃ』、と言うのはエドワードのことだ。 エドワードやアルフォンスにとって、ロイは『兄』のような存在なのだ。 そのため、アルフォンスにとってエドワードは『長男』ではなく『ちっちゃいお兄ちゃん』になってしまう。 きゃっきゃと子供らがはしゃいでいると、トリシャがホットケーキをそれぞれお皿に盛ってやってきた。 それから生クリームとカスタードとチョコレートソース、バターやメープルシロップなどの容器も別に持って来る。 そして最後に、ホーエンハイムとロイにコーヒー。トリシャは紅茶。エドワードとアルフォンスには牛乳。 「・・・・・・・・・・・・」 コップをそっと遠ざけようとすると、ピシャリとトリシャがそれを止める。 「エド?牛乳飲めないならおやつ食べれないわよ?」 「・・・やだ」 「じゃあ、飲みなさい?」 「・・・・・・やだ」 毎日繰り返される光景に、ホーエンハイムとロイは苦笑を禁じえない。 好き嫌いの少ないエドワードとアルフォンスだが、エドワードはど〜しても牛乳が飲めないのだ。 けれど、牛乳に入っている栄養素はなかなかに馬鹿に出来ない。 それを知っているからこそ、ホーエンハイムもロイも助け舟を出せないのだ。 「アルはのむぅ」 そう言ってアルフォンスはホーエンハイムに切り分けてもらったホットケーキと共に、牛乳をおいしそうに飲んでいく。 その様子を見て、エドワードはまた渋い顔になる。 耳も尻尾もぺしゃんとしぼんでしまっていて、見ていて可哀相ではある。 と、エドワードが首を回してこちらを涙目で見て訴えてくる。 前にその攻撃に負けて代わりに飲んだことがあるのだが、そのあとトリシャにエドワード共々お叱りを受けてしまったのだ。 「エド、牛乳は飲まなきゃダメだよ?」 「・・・でもきらいなんだもん・・・」 またジワリと目に涙が溜まっていく。 どうしようとロイが困っていると、ふとチョコレートソースが目に入ってきた。 ふとロイは思いつき、そのチョコレートソースをエドワードのコップに入れてかき混ぜ始めた。 その様子をエドワードも見ており、真っ白だった牛乳は見る見るチョコレート色になっていく。 「これならどうだい?」 そう言って、もう一度ロイはエドワードにカップを渡す。 思わず受け取ってしまったエドワードだが、なかなか口をつけれない。 チラリとロイを見れば、飲んでごらんと促される。 ふんふんと匂いを嗅いでみれば、あの牛乳特有の臭さは消えている。 恐る恐る。と言った感じで、エドワードは牛乳に口をつけた。 と、喉に流したとたんに消える、眉間の皺。 「どうだい?」 もう一度感想を聞いてみると、今度はぱっと太陽の笑顔を見せてくれる。 「ココアみたいでおいしい!」 そう言って一気に飲んでしまった。 ホーエンハイムはそんなエドワードの頭を撫でてやり、トリシャも労ってくれる。 そうして最後に見上げるのは、やはりロイの顔。 「偉かったね、エドワード」 首を反らして自分を見つめるエドワードの額に小さなキスを落としてやると、エドワードは照れつつも、本日一番の笑顔を見せてくれた。 こうして小さな波紋を起こしながら、リゼンブールの幸せな一日は、過ぎていくのだ。 キミが僕のスベテと言うわけではないけれど。 キミが居なくなってしまったのなら、その空虚はどれだけ大きいかは自分でも計り知れない。 キミが居て。 僕が居て。 暖かな、周りがあって。 そうして僕らの関係が、完成していく。 コメント 一回書いてみたかったロイ兄設定のにゃんこもの(笑) 続けれそうだったらまた部屋作ろうかなぁと考えてます(笑) 今度こそ・・・今度こそ甘々なロイエドを・・・!! |