夏の日・晴天

「あちぃ・・・」
外ではセミが濁点がついた声でミーンミーンと鳴いている。
太一はタンクトップに半ズボンというかなりラフな格好でコロンと寝転がりながらうちわを仰いでいる。
「クーラーも扇風機も壊れるなんて・・・サイアク・・・」
リビングでう〜う〜唸りながらゴロゴロと転がる太一。
日の出は良好。雲一つ無い晴天。
クーラーや扇風機など、この暑さを防ぐものがあれば最高の日和だ。
「暑い〜!」
癇癪を起こした太一はじたばたとわめき始める。
ソファーでウトウトしていたネコのミーコがビクリと身体を持ち上げた。
「も〜ヒカリも母さんも壊れた途端どっかに行きやがってー!!」
ぎゃーぎゃーわめいて、うるさくなってしまったリビングをでて、ミーコはフローリングの廊下へと移動する。
丁度冷たくて気持ち良いところを見つけると、また横になってウトウトし始めた。
「空も光子郎も丈もどっかに行っちまっていないし!
みんなでオレを殺すきかー!!!」
ギャンギャン独りでわめく太一を無視しながらミーコがおっきなあくびをしてると、かちゃ、っと小さな音がした。
ミーコはピクリと緊張を見せたが、入ってきた見知った人物をみて、また寝転がった。
「暑いー!!暑い暑い暑い暑い暑いー―――!!!」
「お前な・・・何歳児だよ・・・」
聞こえるはずの無い声を聞いて、太一は暴れるのをやめる。
フッと眼を開けて上を見れば、飽きれた顔のヤマトが太一を見下ろしていた。
「や・・・ヤマトォッ!?」
すっとんきょうな声を上げて、太一はヤマトを見つめる。
「な・・・んでお前がここに!?」
「玄関から入って来たに決まってるだろう?」
バカか、お前は。
そんな事をヤマトに言われ、カチンときた太一は反撃を開始する。
「勝手に人の家に入るほうがバカだろ!」
「何度もチャイム鳴らしても叫んでも出てこなかったのは何処の誰だよ」
「・・・・・・」
「ん?」
「何度もって・・・?」
「何度も。結構外で待ってたんだからな」
見れば、ヤマトは汗まみれだった。
普段そんなに汗をかかないヤマトだから、結構辛抱強く待っていてくれたんだろう。
「・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
小さな謝罪はヤマトにも届いたらしく、クスリと笑った。
「で、何のようだよ?今日は会う約束してないだろ?」
太一はうちわを仰ぎながら少し不機嫌な声で聞く。
「なんだよその態度は。せっかくクーラー壊れて暑がってる太一の為に冷たいもん持ってきてやったのに」
「マジで!?」
態度が一転した太一に呆れながらも笑いを堪え、手に持っていたコンビニの袋を見せてやる。
「おー!アイスまであるー!さ〜んきゅ〜v」
とりあえず溶けかけているアイスは冷凍庫へと入れて、ペッドボトルのジュースをぐいっと一気に飲みほす。
「くはー☆うめぇ♪」
多少はぬるくなっているが、まだペッドボトルに水滴の残るジュースはたまらなくおいしく、からからに飢えている太一にはまさに地獄から天国だった。
「あ、でも・・・」
飲み干したペッドボトルをテーブルに置き、太一はヤマトに向き直る。
「なんでオレん家のクーラー壊れてるって知ってんの?」
太一の素朴かつもっともな疑問に、ヤマトはD−ターミナルを見せた。
「何?」
「見れば分かる」
選ばれし子供全員が共通してもつソレを操作して、受信画面を開く。
その中の1通に―――。

『――――:石田ヤマト
 ――――:八神ヒカリ

こんにちは、ヒカリです。実は、今家のクーラーや扇風機が壊れてしまっているんです。
もしお暇でしたらお兄ちゃんの相手をしてあげてくださいv

などと、自分の妹のかわいらしく、丁寧な文に目を通した。
「ヒカリのやつ・・・」
ありがたいような悔しいような複雑な思いの兄。
その横でヤマトがクックックと堪えきれない笑いを漏らしている。
「まぁいいや!命拾いしたし!」
オーバーなような気もするが、ヤマトは黙認した。
「昨日からクーラーの調子が悪くてさー・・・夜には扇風機も壊れちまったんだよ!
特に昨日雨降って湿気高かったろ?
汗ダクダクで寝苦しくてさ・・・ほぼ一睡もしてない状況・・・」
心底参ったという顔を太一はテーブルにうつぶせた。
なるほど、ただでさえサッカーの練習などで体力を消耗しているのに、この猛暑。
暑さに強い太一もコレには参る。
「ウトウトはするんだよ・・・でも深く眠れなくてさ・・・」
「なんで俺ん家電話しなったんだよ?」
「お前今日はバンドの練習だって言ってただろ?」
「・・・え・・・?」
「は?」
しばし、沈黙。
「太一・・・」
「あに?」
「ソレ、明日のコトだぞ・・・」
「うっそっ!?」
バッと太一は立ち上がってカレンダーを見る。
「・・・・・・・・・・・・」
呆然。
すぐその後で太一が床に伏せった。
「オレはこんなしょーもない間違えのために暑さに耐えていたのか・・・」
本気で泣くかも・・・太一は腕で顔を隠した。
ヤマトは太一の動きをおもしろく見ていたが、さすがに可哀想に思い、立って太一に近付いた。
「太一」
いつもの調子で太一を呼ぶ。
太一がうつぶせたままなので、ヤマトは太一の頭を持つと、自分の膝へと持ち上げた。
「うお!」
身体がいきなり反転し、太一は裏返った声をだした。
「なっなに!?」
ヤマトに膝枕されているかたちに気付き、太一は眼をパチパチさせる。
ヤマトは右手にもっているうちわを見せた。
「俺が仰いでてやるからちょっと寝てろよ」
太一の言葉を待たず、ヤマトはうちわを仰ぎ始めた。
太一に快適でいて、自分が疲れない程度。
太一は風を受け、気持ちよさそうに眼を細めた。
「ヤマト・・・」
「ん〜?」
「お前ってバカだろう?」
あんまりな太一の言葉にヤマトは少しカチンと来る。
「でも・・・サンキュ・・・」
その言葉を最後に、太一は久々に深い眠りへと堕ちて行った。
太一の何気ない感謝の言葉に心をジ〜ンとさせながら、ヤマトはうちわを仰ぎはじめた。
こういうのもいいな・・・。
いつもは自分がしてもらうから、分からないけれど。
膝に感じる暖かな体温。
ずっしりではないが、確かな重み。
上から見下ろす、相手の寝顔。
お腹をくすぐる柔らかな髪。
いつだか太一が膝枕っておもしろいな♪とかなんとか言ったが、それが今よく分かった。
「なるほど、それで膝枕だけはよくしてくれんのか」
真夏の中の小さな発見に、ヤマトは一人、微笑むのだった。

本日の最高温度・39度2部。
室内温度・はかりきれず☆



☆END☆


コメント

甘々・・・(苦)
なんか最近ホント暑いから書いてみたかった作品・・・
な、なんか私の小説って日常生活多し!?(笑)