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one-sided love 4 数日前のロックマンの様子が気になっていたが、仕事の方が忙しくてなかなかまた会いに行けなかったブルースは、ようやく暇を見つけて熱斗のPETの前まで来ていた。 『何もしてくれないから、苦しいんじゃないかっ!』 それでも、なかなかブルースがチャイムを押せないのは、最後に見たロックマンの姿が目から離れないからだ。 ・・・怖い、と思う。 泣かれるのが、嫌われるのが。 こんなことは初めてだ。 嫌われるのが・・・まして、泣かれるのが怖いなんて・・・。 自分には、そんな甘ったるいものはプログラムされていないと思った。 ・・・なのに、胸が痛い・・・。 ツキリツキリと、胸が痛む―――――。 はぁっと大きな溜め息をつき、PETに背を向きかけると、声をかけられた。 「あら?ブルース?」 もう一度PETの方を見ると、ピンク色のナビが居た。 ナビにしては珍しい、女性型のナビには見覚えがある。 「・・・ロー・・・ル・・・?」 自信無さ気に言った名前に、ナビはにっこりと可愛らしく笑った。 「あら、覚えててくれたの?嬉しいわv」 ロールはテコテコと歩いてきて、ブルースの前で止まった。 「何?どうしたの?ロックに会いに来たのに帰っちゃうの?」 「・・・お前には関係は無い」 冷たく言うが、ロールは堪えたようすもなく、あら。と返してきた。 「そんな事言っていいの?・・・今、ロックが体調崩して、私が見てきたんだけどなぁ・・・」 『体調を崩した』 その一言に思わずブルースは反応してしまい、それからしまったと思った。 ロールが面白げに笑っているからだ。 「ふふ・・・ブルースって以外に反応が素直なのね」 それとも。と、ロールは瞳にいたずら気な光を宿す。 「それはロック限定かしら?」 ふいっと視線から逃げると、ロールがまたおかしそうに笑った。 何となく馬鹿にされたような気がして、ブルースは踵を返して帰ろうとした。 すると、またロールに止められた。 「あら、お見舞いしなくって良いの?ロック、喜ぶと思うけど・・・」 言われ、ピタリとブルースは歩みを止めた。 「・・・本当に・・・」 「え?何?」 ウキウキとしたような声が聞こえ、ブルースは聞こうか一瞬迷ったが、しょうがないと思い、プライドを飲み込んだ。 「本当に、あいつは病気なのか?」 「・・・そうなのよ・・・」 途端にロールの声が沈んだので、ブルースは思わず振り返ってしまった。 ブルースはただでさえロックマンとも差があるのに、ロールはロックマンよりもさらに小さい。 ので、ブルースはロールを本当に見下ろして、その表情を見ていた。 「レヴォルっていうウィルスに感染しちゃったみたいでね・・・治す方法が無い訳じゃないんだけど・・・私には無理で・・・」 『レヴォル』 聞いたことの無いウィルスの名前だが、問題はそこではなかった。 「・・・じゃ、あいつはどうなるんだっ」 言ったブルースに、ロールはピッと指を鼻先にさした。 「『私には』って言ったでしょ?」 「では、誰ならあいつを助けられるんだ」 ロールは、ブルースにさした指を下ろさない。 「・・・お、れ・・・?」 「そう・・・あなたよ」 そう言うと、ロールは小さなプログラムを出した。 「これがレヴォルに聞く唯一のワクチンなんだけど・・・ただインストールするだけじゃ、ダメなの」 言うと、ロールはそれをブルースに手渡した。 「レヴォルは『白雪姫』をモチーフに作られたウィルスでね、治す方法もそれに則られているの」 「・・・方法・・・?」 そう!とロールは可愛らしい顔に真剣に眉を寄せた。 「感染してしまったナビを治すにはね、そのナビが好きな人が、口移しで与えないといけないの」 「・・・は?」 あんまりな方法に、ブルースは思わず間抜けな声を出してしまった。 「そっそんな方法でウィルスを駆除する方法なんてっ」 「嘘だと思うならやってみなさいよっ!」 ロールは怒鳴ってブルースの言葉を遮った。 「この方法はね、ナビを好きな誰もが出来るって言うものじゃないの!・・・その感染しているナビも、同じ意識を持ってないとダメなの!」 ロールは腰に手をおき、はるかに背の高いブルースを睨む。 「・・・それとも、ブルースはロックの事を何とも思ってないの?」 「・・・・・・俺は・・・」 言い返そうとしても、言葉が出てこない。 ロックマンの事を、何とも思っていないはずが無い。 ・・・何とも『想って』いないのならば、自分はこんなところでこんな会話をしてるはずがないから。 「・・・大体、そのワクチンはロックマンも俺の事を・・・その、好いていないといけないのだろう? ・・・俺は、あいつに嫌われているから」 「ほんっとーに!そうなの?」 またしてもロールに遮られたが、ブルースの意識はそこではなく、言われた言葉に向いた。 「ロックは本当に、ブルースの事を嫌いなの?」 「・・・そうに決まっている・・・」 その事を自分で認めてしまい、胸が痛んだ。 「バカっ」 そういうと、ロールはブルースを突き飛ばした。 唖然としていると、ロールは今までに無い勢いでブルースに詰め寄った。 「ロックがあなたの事を嫌いですって!?バカ言わないでよ!嫌いならどーしてあなたの事で胸を痛めないといけないのよ!」 ポロポロと涙を流しながら、ロールはそれでも口を閉じない。 「あなたが、ロックを!ここまで苦しめたんじゃないっ」 「・・・俺が・・・?」 「そうよ!」 一瞬で肯定されてしまうと、ブルースもそう思えてしまう。 「何をするにも考えるにも炎山炎山炎山!それでロックを傷つけているのに、それを理解もしないで今度はロックに近寄って」 そういえば、とブルースは思い出す。 ロックマンの様子がおかしくなったのは、メールを届けに来て、ブルースが炎山に呼ばれて席を立ったときだった。 「あなたはロックに何をしたの!?何も・・・何もしてないじゃない!」 『何もしてくれないから』―――――― 言われて、ブルースはハッとした。 ・・・自分はロックマンを『心配』しているのに、ソレに対して矛盾した事をやってきたのだ。 あんなに・・・あんなにもロックマンは、自分に好意を寄せてくれていたのに。 「甘えるのもいい加減にしてよね!」 ロールがそこまで怒鳴ると、さすがのブルースも反論が出来なかった。 「・・・俺は・・・」 言うブルースの言葉を、ロールは今度は遮らなかった。 「・・・・・・無力だな・・・」 「無力なら、こんな事頼まないわ」 その言葉さえもロールに切り捨てられたので、さすがのブルースも苦笑を浮かべた。 ロールは、すんっと鼻をすする。 「いい!?次会う時にロックがまだ治ってなかったら・・・私があなたを倒してやるんだからっ」 「お前が俺に、敵うとは思えんがな」 言うと、ロールは心外。というように眉を持ち上げた。 「あら、戦うなんていってないわ。私には私の、戦い以外の戦法があるんだから」 そう言うロールに、ブルースは敵わないというように苦笑をもう一度浮かべた。 PETにロックはかかってはいなかった。 多分、ロールが開けておいてくれたのだろう。 見慣れている訳でもないが、ブルースの知っている中で一番出入りしているPETの中に入り、ロックマンが居ると思われる寝室へと向かう。 PETにブルースの事が登録されているので、手をかざすとロックが解除された。 一瞬躊躇ってから、ノブに手をかける。 小さな金属音をたて、扉が開く。 小さくも無い部屋の向こうには、ロックマンが寝ていた。 いつもしているメットを外しているので、紺色の髪が赤い肌に目立つ。 息を微かに乱し、よく眠っている。 傍にあった椅子を引き寄せ、ソコに座る。 「・・・ロックマン・・・」 呟くと、胸が暖かくなった。 汗で額に張り付いた髪をすっと梳いてやると、ロックマンが微かに瞳を開いた。 「・・・ブルー・・・ス・・・?」 呟いて、ロックマンは溜め息を落とした。 「・・・そんな訳ないか・・・僕、あんな酷い事言っちゃったんだもんね・・・」 でも、と、ロックマンはブルースの方を向き、笑みを浮かべる。 それは、ブルースがずっと焦がれていたもの。 ・・・愁いがなければ、もっといいのに、と思う。 「でも、夢でも嬉しいな。ブルースがお見舞いに来てくれるなんて」 どうやらロックマンは、これを『夢』と思うことにしたらしい。 ブルースはそれに否定も肯定もせず、ロックマンの言葉を遮らない。 「僕、情けない・・・だって、炎山に嫉妬してるんだもん」 「嫉妬?」 ブルースが聞きなおすと、ロックマンは、そう。と肯定した。 「嫉妬。・・・何をするにもブルースは炎山が一番で、悔しかった。 だって、僕はブルースが・・・好き、だから・・・」 「・・・え・・・?」 ブルースが声をあげると、ロックマンは苦笑を浮かべた。 「やっぱ、気持ち悪いよね・・・こんな、事・・・」 それでも、とロックマンは続ける。 「僕はブルースが好きだから。・・・炎山に及ばないでも、『特別』になりたいから」 そういい、ロックマンは両腕で顔を覆い隠した。 「・・・ゴメン・・・」 震える声に、ブルースは耐え切れなくなり、椅子から立ち上がる。 手にもっていたワクチンを、口に含む。 ロックマンの腕を外すと、驚いた碧の瞳がバイザー越しのブルースの瞳を捉える。 何か言おうとした口を塞ぎ、ソレを流し込む。 ヒクっと震えた手は抵抗さえもせず、ロックマンは静かに目を閉じ、享受する。 喉が鳴った事を確認すると、ブルースはその熱い唇が名残惜しかったが、そっと離した。 涙でぬれる目を指で拭ってやると、その手で自分のメットに手をかけた。 ロックマンの眼が、また見開かれる。 「・・・覚えておけ・・・」 金属の音を立て、ブルースのメットが床に落ちた。 バイザー越しでは無い、ブルースの紅い瞳がロックマンを捉える。 もう一度その瞳が近付いてきたので、ロックマンは絡まる視線を解き、眼を閉じた。 「お前は俺の、手放せないものだ・・・」 もう一度、唇が重なった。 朝になり、完全に起きてもブルースがそこにいたので、さすがのロックマンもあれが夢で無いのに気が付いた。 自分のセリフもブルースの行為もまざまざと思い出し、真っ赤になってもう一度ベットに沈んでしまった。 しかも。 「・・・熱斗くん、気付いてたでしょ?」 朝一番の挨拶が『良かったな、おめでとう!』だったのである。 ピンと来たロックマンは、熱斗に問い詰める。 「だってさぁ・・・PETから声が聞こえるんだもん・・・」 照れたように熱斗は視線を逸らす。 ちなみに横にはまだブルースが居る。 まだロックマンの体調が完全ではないので、心配しているのだろう。 そこに、もう一人訪問者が。 「はろん。ロック、風邪の具合はどう?」 ロールだ。 メイルに頼んで、もう一度診察を頼んだのだ。 「あ、ロールちゃん。うん、もう全然平気だよ!」 「ちょっと待て」 その会話を阻んだのは、ブルースだった。 「風邪・・・?ウィルスに感染したんじゃないのか?」 キョトンとロックマンと熱斗がブルースを見る。 「ウィ・・・ルス・・・?」 ロックマンと熱斗が顔を見合わせる。 「・・・っこのナビが!お前がレヴォルというウィルスにかかったといってワクチンを・・・!」 「レヴォル・・・熱斗くん、聞いたことある?」 ウィルスの情報はオンラインを通ってロックマンたちナビにインストールされる。 だが、ロックマンの中にそんな名前のウィルスの情報はない。 「いや・・・・・・待てよ・・・レヴォル・・・レヴォ・・・」 熱斗は空中にスペルを書き、納得したというようにロールに笑いかけた。 「なるほど、レヴォルな」 「うふふっv単純だけどわからないものでしょ?」 熱斗とロールが笑っているので、訳のわからないロックマンと特にブルースはイライラと問いただす。 「だから、一体なんだというのだ!!」 まぁまぁとブルースを宥め、熱斗はニヤニヤと笑いながらブルースにレヴォルのスペルを書いてみるように言う。 ・・・『レヴォル』・・・。 アール・イー・ブイ・オー・エル。 『REVOL』 反対から読むと、『LOVER』・・・恋人。 「この・・・っ!はめたな!」 ブルースはロールに詰め寄るが、ロールは怖がる様子も見せずに、ツーンとソッポを向いた。 「だって、そうでもしなきゃあなた、ロックに何もいいそうに無かったんだもん」 言われ、ブルースは言葉を詰まらせる。 「それに、あのワクチンは本当よ?現にロックだってこーんなに元気になったじゃない」 そういい、ロールはロックの後ろに隠れる。 「うん、そうだね。ありがと、ロールちゃん」 「どういたしましてv」 そういい、ロールがロックマンに抱きつく。 途端にブルースからピリピリとした空気が漂ってきた。 「ブルースって以外にヤキモチ焼き?」 「違う!!」 熱斗がこっそりいうと、ブルースに怒鳴られた。 「ヤキモチなんて焼く事無いじゃない」 そういい、ロールは抱きついていた手を離し、ブルースの方にロックマンを押した。 ブルースも思わずロックマンを抱きしめてしまう。 ソレを見て、ロールは無邪気な笑みを浮かべた。 「だって、二人が一緒だから、私は嬉しいんだもんv」 プログラムされた事が総てじゃなくて。 感情があるからソレが増えていく。 0と1以外の答え。 それを考え、求めるために僕達は居るだから。 満ち足りた僕の回路には、確かにキミが、『ココ』に居る。 コメント よかった・・・完結した・・・(笑) 実はもう一話くらい伸ばそうと思ったんですがやめました・・・伸ばせば伸ばしたで、1話の内容が薄くなっちゃうので(苦笑) ところで『レヴォル』・・・騙されていただきました?(笑) この話考える中で一番考えた名前・・・というか引っ掛けです。 ロールを書くのが楽しいです〜!(ジタバタ) ・・・ブルースをおちょくるのにはロールが1番と判明。 ちなみにオペレーターズも然り(大笑) |