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甘い体温 気付いてしまったこの気持ちを、どうやって伝えればいいのだろう・・・。 あの日の朝から、どうも拓也の様子がおかしい。 朝、起きた自分に拓也は至近距離からの笑顔と、『おはよう!』の言葉を聞いた。 避けられている訳ではない。 話しかければ応えてくれるし、拓也からも話しかけてくれる。 ・・・輝二がソレに気付いたのは、あの朝の日から2日くらい立った日だった。 見張りを交代しようと洞窟を抜け、今見張りをしている拓也の元まで来ると、拓也はトロトロとまどろんでいた。 気持ちよさそうなところを起こすのは忍びないが、ここでこんな体制で寝てしまっては、筋肉が強張ってしまい、明日身体が痛くなってしまう。 そっと肩に手を置いて揺さ振ってやろうとした途端、拓也は腫れ物にでも触られたかのように、バッと飛び退いた。 輝二はもちろん驚いたが、拓也自身もとても驚いた表情をしていた。 「び・・・っくりしたぁ・・・敵かと思ったじゃん」 「・・・あ、ああ・・・悪い・・・交代だから・・・」 輝二が伝えてやると、拓也はニッコリと笑んだ。 「こっちこそ、驚かせてゴメンな?見張り、がんばってな♪」 それだけ言って、拓也はさっさと立って歩いて行ってしまった。 洞窟への道を歩きつつ、拓也は火照った顔を掌でパチパチと軽く叩いた。 もちろん、道のりと言ったって距離はほとんど無い。 さっと後ろに目をやれば、洞窟の奥にある焚き火の火も見える。 その中腹で、拓也はピタリと歩みを止めた。 「・・・やばいなぁ・・・」 顔がどうしようも無く火照る。 それは、焚き火の温かさだけではない。 先程の出来事で、火照りが抜けないのだ。 ・・・輝二が触れたところが、まるで火でも当てられたかの様に熱い。 それは、今でも抜けない。 「・・・・・・」 心臓がドキドキ言っている。 自覚してしまった。 だが、ソレを伝える術を、拓也は知らない。 輝二のように、ストレートにも出来ない。 照れ、というものが、どうしてもあるから。 「こう、じ・・・」 呟けば、胸が熱くなる。 どうすればいいのだろう。 どうしたら、この想いを伝えられるのだろう・・・? 次の日、輝二はずっと感じていた違和感の正体がわかった。 拓也が自分に触れないのだ。 そして同様に、自分が触れようとするとスルリと逃げていってしまう。 兄の輝一が近くに居るので、そうそう露骨に触れられないし、近づけない。 それに、態度はいつもと全然変わらないので拓也に、輝二はさらに悩むのだった。 「・・・・・・」 だんだんと身体が、心が拓也を求めている。 前方を友樹とじゃれながら歩く拓也を見つめる。 今すぐ、その華奢な身体を抱きしめてやりたい。 首筋に顔を埋め、拓也の匂いを吸い込み、その柔らかな唇に触れたい。 欲望は果てし無い。 それでも輝二は拳を握り締めるだけで、行動は起こさなかった。 大丈夫。 気のせいだ。 そう、必死に自分に言い聞かせて納得させる。 ・・・最悪な事態は、避けたくて・・・・・・。 「・・・・・・たくや・・・」 皆が寝静まった頃に、輝二は拓也に話しかける。 熟睡していた拓也は眉を寄せて寝返りを打ち、向こうの方を向いてしまう。 「・・・・・・」 仕方なく揺り起こそうと手を伸ばしたとき、拓也が上半身を起こした。 「・・・なに・・・?」 舌ったらずな言い方は、起きたばかりと言う事を証明している。 そんな状況でも自分を拒むかと思うと、胸がズキリと痛む。 少し眼を閉じて、心を落ち着ける。 ―――――大丈夫だから・・・。 「・・・こーじ?」 何も言わない輝二へと拓也は寝惚け眼を向ける。 「・・・ちょっと、話したい事があるんだが・・・」 何を?とは聞かず、拓也は立ち上がった。 「いいぜ」 ・・・拓也は、自分の行動をわかっているのだろうか・・・? 「こっちだ」 自分に続き、少し後ろから拓也が着いてくる。 大丈夫。 ちょっと理由を聞くだけなんだから。 そう、呪文の様に呟いて、輝二はドキドキとうるさい鼓動をなだめる。 そして、心臓を爆発寸前まで動かしているのは、拓也も同じだった。 聞かれる事は、大体予想がついている。 輝二には、とても悪いと思っている。 多分・・・いや絶対自分は輝二を傷つけたのだ。 輝二に触れて欲しくない訳でも、触れたくない訳でもない。 寝ている輝二の身体はいつもよりもとても暖かくて、離れたくなかった。 思い出すだけで、身体の奥が熱くなる。 ・・・熱、を・・・。 確かに輝二の体温を感じたい筈なのに、どうしても触れられない。 意識しすぎている。 だから顔が火照って、伸ばした手が震えてしまう。 どうする事も出来ない。 もう、戻れない。 熱を知らなかった頃に。 ボーっと思考に耽っていると、輝二の歩む音が止まった。 拓也もそれにならって、足を止める。 輝二は振り返らない。 「こう・・・じ・・・?」 堪らず声をかけると、輝二が振り返った。 そして、自分に向かって歩み寄ってくる。 自分の腕を取ろうとした輝二の手から、思わずビクリと逃げてしまった。 「・・・ぁ・・・っ」 弁解したくても、はやり言葉が思いつかない。 それでも何か言おうと輝二の顔を見て、拓也は固まった。 ・・・輝二が泣きそうな顔をしていたから・・・。 「こうっ」 「俺に触らられるの、嫌か?」 拓也の言葉を遮り、輝二は拓也に迫る。 「・・・いや、か・・・?」 拓也は速攻で頭を横に振る。 「違う・・・そうじゃないんだ・・・っ」 「じゃ・・・なんで・・・っ」 必死に必死に、大声を張り上げたいのを我慢したような声。 気付いた振りをしていて、わかってはいなかった。 ここまで自分は輝二を、追い詰めていたのだ。 拓也は俯く。 「・・・そ、れは・・・」 紡げない。 それとも、言えないのか。 それさえもわからない。 自分の考えなのに。 こんなにも明確な『答え』が出ているのに、輝二に伝えられない。 輝二は、こんなにも大変なものを自分に伝えて、示してくれていたのか。 そして自分は、ソレを跳ねつけてしまった。 ・・・もし、自分が輝二にそんな事をされたら、自分は果たして正常で居れるだろうか? こうして傍で、笑い合えるだろうか? 拓也が言葉に詰まっているその間を輝二はどう取ったのか、すっと離れていった。 「こう・・・っ」 「・・・ごめん・・・」 一言謝ると、輝二は拓也に背を向けて、皆の居る方へと歩き出してしまう。 「・・・こう、じっ」 呼んでも振り返らない。 ―――――恐い。 「輝二っ」 いつもシャンと背を張って歩いているその姿が、とても小さく見える。 ―――――怖い。 そしてその姿が、涙でぼやける。 ―――――コワイ。 胸が痛くて苦しくて、拓也は掻き毟った。 ・・・そして、輝二の背に走った、軽い衝撃。 淡い期待を持って振り向けば、そこには拓也が居た。 輝二の上着の裾を持ち、俯いた顔を上げる。 「――――――っ」 顔だけでなく、耳まで真っ赤に染まっているのが、月明かりだけでもわかった。 涙を抑えようとも拭おうともしない。 手は震えて、今にもその場にへたり込みそうな感じだった。 小さな小さな幼子が、何かを必死に守ろうとしている姿にも見えて、輝二は先程とはまた違う意味で胸が痛んだ。 拓也だけは、傷つけたくないのに。 「・・・オレ・・・」 嗚咽混じりのソレは、輝二にようやく届いたくらいに小さな声だった。 「・・・オレ、どうしていいかわかんないんだ・・・」 だってこんな感情、女の子にだって持った事が無い。 「輝二に触れたくって・・・でも、触れようとすると、ダメなんだ・・・」 伝える術なんて、知らない・・・・・・。 だけれど・・・。 「だってオレ、輝二がオレの事好きって言ってる以上に、絶対輝二の事が好きなんだもん・・・っ」 拒まれる事がこんなに恐い事だなんて知らなかったんだ。 いつだって自分は受け身で、輝二が何かをしてくれるのを待っていたから。 ・・・自分は何て、小さくて弱くて。 「――――――っ」 それ以上言葉が紡げなかった。 だけれど輝二は離したくなくて、服を持つ手に力を篭める。 土と草の擦れる音がした。 はっと気が付くと、ずっとずっと焦がれていた温もりに包まれていた。 自分の体温が、今よりもずっとずっと上昇していく。 「こっ・・・こうじ・・・っ」 「――――拓也、どうしよう・・・」 輝二が拓也の耳元で囁く。 その声は先程の痛々しいものではなく、とても優しい声色だった。 「俺、今絶対世界で一番幸せだ・・・」 まさか叶うなんて思わなかったから。 ただ傍に居れて、触れられたら、笑顔で居てもらえたら嬉しかったから。 輝二のそんな声を聞き、少し身体をずらしてその顔を覗き込めば、拓也はもう何も言えなかった。 ・・・とても、見た事が無いくらいに幸せな顔をしていたから。 「・・・・・・っ」 コツリと額を合わされると、パサリと音を立てて帽子とゴーグルが落ちた。 「拓也に負けない。俺だって、拓也の事を愛してる・・・」 まず、拓也の柔らかい唇を食む様に一瞬口付けた。 そしてもう一度視線を合わせる。 拓也の顔はまだ強張っていたが、輝二は笑んでいる。 「愛してる・・・」 もう一度囁き、唇を寄せる。 拓也は拒まなかった。 拒む理由が無い。 さっきまであんなに触れるのが躊躇われていたのに、今はずっと触れていたいと思う。 そろそろと、輝二の背に手を回す。 すると、輝二の抱きしめる手にも力が篭り、さらに口付けは深くなる。 「ん・・・」 キスの合間に、拓也の高い声が漏れる。 拓也の口内に侵入した輝二の舌は、拓也の舌を捕らえようとする。 「っんん・・・っ」 息が出来なくて、苦しいのと気持ちいいのがごちゃ混ぜになる。 口の端を流れる、自分のと輝二の混ざり合った唾液が気になり、ふっと力を抜いた瞬間、輝二の舌が拓也の舌を捕らえた。 ビクッと身体を震わせて、輝二の背に回った手にも力が篭る。 それでも、輝二は行為を続行する。 いつされても慣れないソレに、拓也は戸惑うばかりだ。 だが、自分の気持ちを理解し、相手の想いもしっかりと受け止められてのキスは、とてもとても気持ちよかった。 身体にも。 心にも。 チュッと音を立てて離れると、名残惜しそうに二人の間に銀色の糸が渡った。 背の高さ的に拓也が上を向くので、拓也の口の周りは唾液でベタベタだった。 それを舌で拭ってやり、目元にも持っていく。 拓也の熱で乾いて、塩になった涙を輝二が舐め取っていく。 先程の様に額を合わせる。 強張りの抜けた拓也も、ようやく笑んだ。 幸せそうなその表情に、輝二ももっと嬉しくなる。 「輝二」 噛み締めるように。 「こーじ」 その言葉を愛でる。 そして呼ぶたびに返って来る、その『声』 「好き、だから」 必死に、全部を伝えたくて。 ようやく声に出来た自分の想いを、この相手にずっと伝えていたい。 「うん。俺も、好きだ」 そして、伝え返してくれる、その喜び。 もう一度、二人で笑いあって。 ずっと、抱きしめあっていた。 伝えると言う恐さと、畏怖と。 望んだ言葉を、望まれている言葉を口に出来ない悔しさ。 それでも、キミは気付いてくれた。 だから、僕は言葉に出来た。 その笑顔を見たいから。 その、声を聞きたいから。 僕は、ずっと『言葉』を紡いでいきたい。 コメント 何だか輝拓がシリーズ化してましたね(笑) ようやく告白までこぎつけたって感じです(笑) ・・・しかし最近泣きたっくんと幸せ輝二さんをよく書いてる気がするのは気のせいでしょうか(笑) ・・・ところでエロシーンに突入すると、決まって後ろ(パソコンの)を親が通る回数が増えます。 ―――――何なんだよお前ら!!(まじ憤慨) |