キミとの距離

こんな気持ち初めてだから。
こんなに胸が高鳴ることなんて、一度も無かったから。
キミを、正面から見ることができない・・・。

ボーグの修道院の、エリートのみに割り当てられている個室。
今日の仕事を終え、ユーリが風呂から上がって、ベッドに座ったのがつい12時ちょっとすぎの事。
明日の仕事を確認し、数枚の紙に眼を通す。
とても10代の子供のすることではない。
しかし、ユーリにとっては『当たり前』でなければ行かなかった。
『ボーグ』を率いている、ユーリにしてみれば。
2枚ほど目を通して、ユーリは、はぁ。と溜息をついてから、ベッドにボスッと音を立てて横になった。
ここのところ、うまく集中ができない。
理由はわかっている。
同じボーグのボリスのことでだ。
『好きだ』と告白されて、いろいろな経緯を踏み越えて、今は一般で言う、恋人関係になっている。
だけど、まさかヴォルコフにバレる訳にはいかないので、これは内緒の恋。
問題は、ユーリがボリスに対して、これからどう接していったらいいのかということ。
『いままでと一緒に接してくれればいい』
そうボリスは言うけれど。
「無茶、言うな・・・」
はぁ。と深く溜息をつく。
隠していて、遠くから、近くから見れればいいと思ってた。
そのまま、しばらく目を閉じている。
もう一度溜息をつき、ユーリは立ち上がった。
紙を机の上に置き、もう一度ベッドに横になる。
考えていてもしょうがないし、会ってしまう時は来るのだ。
とりあえず今日はもう寝てしまおう。
そう、わかっているのに、なかなか睡魔は訪れてくれない。
そうすると、何故が自分が一番考えていることがさらに鮮明に思い浮かべてしまう。
会いたいのに、会いたくない。
・・・恥ずかしいから・・・。
幼い時からボーグに入れられ、訓練を受けてきたユーリにとって、これは初恋だった。
最初は否定した。
何故。
何故、自分が同性を好きになるのかと。
何故、自分が愛を知らなければならないのかと。
悩ませたのはボリス。
でも、悩みを解消してくれたのもボリスだった。
どうしようもなく、どうしようもなくて。
ユーリがまた天井を見ながらそんなことを考えていると、コンコン。とノックがした。
それから、少し躊躇った後に、戸の開く音。
「ユーリ?」
遠くから声がする。
ボリスの声だ。
ユーリはとっさに布団をかぶって、タヌキ寝入りをする。
身体を横にすると、右耳が下に来る。
すると、足音が近付いてくるのがわかった。
「ユー・・・」
自分を呼ぶ声が途中で途切れたのは、寝ている(ふりをしている)自分を見つけたから。
寝ちゃってるのか・・・。
小声の一人言が聞こえる。
心臓がバクバク言っている。
そうすると、もう一度歩く音が耳に入る。
それは遠ざかるどころが、だんだんと近付いてきている。
瞼の裏に入り込んできていた人口の光が、不意に途切れる。
それから、ベッドがキシリと軋む。
ボリスが目の前に来たのだ。
しかし、どうすることも出来ずに、ユーリはタヌキ寝入りを続ける。
ふいに、目の前の空気が乱れる。
次の瞬間には、自分の髪を優しく撫でる手があった。
気持ちいい。
撫でられた率直の感想。
だけど、想いとは反比例に、鼓動は早さを増すばかり。
今すぐ起きて、ここを立ち去ってしまいたい。
なのに、ずっとこうしていたかった。
ユーリが心の中で葛藤していると、唇に暖かなものが触れた。
ヒクリと肩が揺れてしまう。
ボリスに、寝たふりが気付かないことを祈る。
それは触れただけで離れて、名残惜しげにペロリと舌で舐めてから、離れていった。
顔が紅くなっていくのが止まらない。
「また、明日な」
おやすみ。
そう言って、頭を撫でられて、ボリスは離れていった。
足音が遠ざかり、やや暫くしてから、扉が静かにしまった。
ユーリはパチリと目を開く。
それから、唇をおさえる。
まだ少し湿っている唇は、なんだか恥ずかしかった。
「『また、明日・・・』」
屈託もなく言ってくれるその言葉が、嬉しかった。
心臓は先程よりもバクバク言っているし、自分の気持ちが分かったわけでもない。
それでも・・・。
不眠は解消出来たような気がした。
ユーリはおやすみ。と誰に言うでもなく呟き、今度は本当に寝るために布団をしっかりと肩までかけた。

初めての気持ちだから、なにも分からないことだらけで。
それでもキミは、何も聞かずにただ手を伸ばしてくれている。
いつかはその手をしっかり握り返せるように。
今は今で、今の自分に向き合っていこう。


☆END☆


コメント

逃げろ!!(殴)
一度は書いてみたかったボリユリ。
いつかは告白話を書いてみたいなぁ・・・。
ってか本年初の小説こんなんですか(ツッコミ)