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Do you like me? ・・・想いと言うのは、伝わるものと伝わらないものがあって。 それはある意味、『勝者』と『敗者』なのだろう。 けれど、掛け橋をしてくれた人が『敗者』で、自分が『勝者』なら・・・それは向こうにとって、一体どういう気持ちなのだろう。 PET内のチャイムを鳴らすと、バタバタと奥からこちらに向かってくる足音が聞こえる。 ・・・そして、何かに躓いた音と声。 「・・・・・・」 大体予想がつき、ブルースは小さく溜め息をつく。 そして、ロックが解除された。 「や、やぁ、ブルース・・・」 迎えてくれたのは、頭を抑えたロックマンだった。 ふと奥に目をやれば、何やら散らばったプログラムが。 「・・・どうやったらそれなりに片付いているこの部屋でものに躓いて頭を打てるんだ・・・」 「だって!」 ブルースの言葉に反論しようとして、やめる。 「なんだ」 気になるブルースは、先を促す。 それでもロックマンは、もじもじと下を向いて言おうとはしない。 「・・・なんだ」 もう一度聞くと、ロックマンがようやくボソボソと口を開いた。 「・・・だって・・・ブルースに早く逢いたくって・・・急いじゃって・・・足元見ていないんだもん・・・」 「・・・・・・」 頬を染めて、上目遣いでそんな風に言われ、ブルースは不覚にも『可愛い』と思ってしまった。 「だってだってだって!!」 さらに言葉を続けようと躍起になるロックマンの頭を撫でて黙らせると、熱斗用に炎山が送ったメールを手渡す。 「・・・よってく・・・?」 ロックマンは小首を傾げてブルースにそう言う。 あんな事を言われた後では断れるはずもない。 「・・・寄らせてもらおう」 そう言えば、不安そうなロックマンの表情は一気に輝いた。 「ぼっ僕、お茶入れてくるねっ」 そう言い、パタパタとPET内へとロックマンは駆けて行く。 「・・・おい、そんなに走ると・・・」 「ぅあっ!」 こけました。 両想いになってからは、ブルースはよくロックマンの(正確には熱斗の)PETによく寄るようになった。 オペレーター公認で、炎山も仕事が忙しくない時にメールを頼んでくれるので、こうやって一緒に居る時間も長い。 熱斗にメールを渡して(ブルースに言われて思い出した)話している間に、ブルースはPET画面には映らない位置でメットを外した。 話し終えたロックマンはお茶をブルースに出し、自分もソファーに座る。 ロックマンは嬉しそうにニコニコと笑いながら、ブルースに話題を投げかける。 ネットシティの事、ウィルスの事、オペレーターの事。 相変わらずロックマンが一方的にしゃべり、ブルースは頷く側だが、それでもロックマンは嬉しそうだ。 「だって、ブルースが居るもん」 前に聞いたら、少し意外そうな顔をして、それでも嬉しそうにロックマンがそう言ってくれた。 無口な自分と居るのが、そんなに楽しいのかと思う反面、そう言ってもらえるのがとても嬉しかった。 ブルースが一番信頼し、大切に思っているのは炎山だ。 もちろん、ロックマンはその事を知っているし、炎山の好きなのは熱斗だ。 でも、ブルースは『恋人』という立場としてはロックマンを一番大切・・・好きという感情を持っている。 それもロックマンはわかっているから、前ほど炎山に嫉妬はしない。 ・・・ちょっとだけ寂しい気もするが、こうして笑顔を見せてもらえるのはとても嬉しい。 『変わらない』と思っていたものが『変わって』しまう事の寂しさが、よくわかったから。 そんなふうに待ったりしていると、チャイムの音がまた鳴った。 ロックマンはブルースに一言言ってから、立ち上がった。 ・・・確認しなくていいのだろうか・・・。 そういえば、自分の時もセキュリティを表示させなかった気が・・・。 「ブルース!ごめんっ!メットして!メット!!」 戻ってきたロックマンの方がいきなりそんな事を言う。 クエッションマークを浮かべつつも、ブルースは素直に言葉に従い、メットを再びかぶった。 それを確認し、ロックマンは『いいよ〜』と玄関の方に向かって声をあげた。 誰か来たのかと横を見れば、そこには自分が今一番苦手とする人物・・・ナビが・・・。 「こんにちはーブル〜スvvv」 ロールだ。 自分とロックマンが離れそうだった間を取り持ってくれたのが、このナビだ。 感謝はしている。 しているが、どことなく言葉にトゲがあると言うか、からかわれている。 ・・・そしてもう一つ、負い目を感じているのだ・・・。 ロックマンがロールの分もお茶を入れている間に、ロールはソファーへと腰をかけた。 ロールはニコニコと笑い、ブルースを見ている。 その間が何となく心地悪くて、ブルースは紅茶をひとすすり。 「よかった」 ロールが発した言葉に、ブルースはバイザー越しに眉を潜めた。 「上手く言ってるみたいで。ロック、とっても嬉しそうv」 ロールは本当に嬉しそうに笑う。 照れと、胸の痛みを隠してブルースは紅茶を飲み干した。 「・・・で、お前は何をしに来た」 「ロ・ー・ル」 「・・・ロールは何をしに来た・・・」 逆らってもいい事は無いので、ブルースは素直に名を呼んだ。 ロールは満足そうに笑う。 「私はメイルちゃんからのメールを届けに来たの」 パッとメールをロールは取り出した。 「お待たせ〜」 そこにちょうどいいタイミングで戻ってきたロックマンに、ロールはメールを渡す。 ロックマンはもう一度断ると、熱斗にメールを届けに行った。 そこで、妙な間が生まれる。 元々ブルースは話す方ではないし、話す方であるロールは今お茶を味わっている。 それでも、何となく居心地が悪いので話題を探す。 「・・・おい・・・」 「え?なぁに?」 思わず声をかけてしまった。 聞きなくない事が無い、といえば嘘だ。 だけれど、いざ聞こうとなると、はやり躊躇いは生まれる。 それに、ロックマンにはあまり聞かれたくは無い内容だ。 「ロックマンならすぐには戻ってこないわよ?」 見透かしたように、ロールがそんな事を言う。 ブルースが驚いたようにロールを見ると、またニコリと笑われた。 ・・・こいつは一番扱いにくい・・・ そんな風に考えて溜め息をつき、ブルースは決意した。 「・・・お前はロックマンが好きなのか?」 突発も無く言われ、さすがにロールもきょとんとする。 「・・・は?」 「・・・っだから・・・っ」 突拍子も無さ過ぎたと後悔するが、ここまで言ったら最後まで言わなければ気がすまない。 「――――お前はロックマンの事が好きなのだろう?」 「うん。だーいすき」 『大』まで着きました。 自分が言ったらさぞかし気味の悪いだろう言葉を言えて羨ましい・・・なーんて心の隅で思ったり。 「・・・では、何で俺とロックマンをくっつけた」 『大』好きならば、前に自分とロックマンが離れた間にくっつけるように仄めかせた筈だ。 ロックマンにとってもロールは大切だろうし、ロールにはそれくらい出来そうな気がする。 大きな、ロックマンによく似た碧の瞳をパチクリと瞬かせた後、ロールは『プッ』と笑い始めた。 それがやがて、控えめながらも声に出した笑いになり、ブルースも僅かに覗く頬を紅く染めた。 「・・・別に、笑われるような事を聞いた覚えは無い・・・っ」 何かいい訳にも聞こえるセリフをはくと、ロールはようやく声に出す笑いを止めた。 ・・・顔はまだ、笑顔のままだが。 「ふふふ・・・ご、ゴメンね・・・まさかそんな事聞かれるとは思わなかったから・・・」 しかも、あんなブルースらしくない発言を。 思い出して、笑いがぶり返しそうになり、ロールは何とかそれを引っ込めた。 ようやく笑い終わった後、ロールはヒタッとブルースの眼をバイザー越しに捉えた。 ロックマンの視線によく似ている。 ボンヤリとそんな事を思った。 「私は確かにロックの事が好きよ。友人としても、男としても」 『男としても』 その言葉に、ブルースは少し身を強張らせた。 ・・・このナビを敵に回して勝てる自信は・・・はっきり言って無い。 「でも、それは私独りが幸せになったって、仕方の無い事だわ」 思わぬ言葉を耳にして、ブルースは食い入るようにロールを見る。 ロールはニッコリと笑った後、紅茶へと視線を落とした。 「ロックを自分の方に眼を向けるようにする事は、今の私の位置なら出来ない事は無いわ。 ・・・そう、例えばあなたとロックの間に距離が開いた時とか」 暗に、この前の事を言っている。 ブルースはなんとも言えなくて、そのままロールの言葉に耳を傾けた。 「だけど、ロックはブルースの事が好きだから。 その隙間を埋めることは出来ても、私は『あなた』にはなれない。 だって、ロックはあなたがあなただから、あそこまで好きになったんだもの」 何でもストレートに感情が出てしまうロックマン。 そのコロコロ変わる表情を見るたび、今何をして欲しいのか、不器用な自分にも何となくわかる。 「・・・ねぇ知ってる?ロックが何かを独占したがるのって、始めてみたのよ?」 「は?」 突然話題が少し変わり、ブルースは戸惑う。 「ほら、さっき私が来た時、すぐに上がらせずにあなたがメットをするまで待たせてたでしょ?」 ちなみに、今はロールもメットを外している。 綺麗な金色の髪が、緩やかなウェーブを描いて流れている。 「ねぇ、あなたってメットを取ったところってロックにしか見せてないでしょ?」 「・・・・・・ああ・・・」 「あれって、ロックもメットを外したあなたを見せたくないのよ」 驚いたように、ロールを見る。 「私にすら、よ?」 楽しそうに言うロールに、ブルースはまた眉を寄せる。 「・・・なら尚更、お前・・・ロールはオレを敵視していいんじゃないのか?」 「しないわよ」 さらっとロールは言った。 「ロックが幸せなら私はそれですっごく幸せ!」 「・・・本当にか・・・?」 「ほんっとーに☆私の『好き』は、どちらかというと、兄弟って感じが強いから」 「・・・強いな・・・お前は・・・」 それは、本心からの言葉だ。 自分は、好きな相手を取られて、それで向こうは幸せで・・・こんなに嬉しそうな顔を出来るだろうか? 「例えロックがあなたの事を『恋人』として1番好きだとしても、『友人』としては多分私が一番だわ。 何て言ったって友達以上恋人未満な関係ですからv」 「・・・・・・」 複雑な言葉だ。 それでも。 「・・・お前が・・・ロールが哀しんでいないなら、俺はようやくあいつを独占できる」 ブルースの言葉に、驚いた表情をしたロールも、次の瞬間には花のような笑顔を浮かべた。 「あなた、変わったわ」 ロールはそう、楽しそうにいう。 「・・・そうか?」 「ええ。私の話もちゃんと聞く。自分の意見もぶつける。・・・ロックを、ちゃんと見てる・・・」 悔しい気持ちが無い訳ではない。 それでもやっぱり、ロックが好きだから、幸せになって欲しい。 「前にも言ったけど、あなたが自分の勝手でロックを不幸にしたら・・・私があなたを倒しちゃうんだからね☆」 イタズラ気な視線に、『本気』が見え隠れする。 「もちろんだ」 「あ、ケンカとネットバトルは数に入れてないからね〜」 要するに、そこまでは自分は入っていかない、と言う事だ。 そこまで話し終わったところで、ロックマンが戻ってきた。 「ごめんね、ロールちゃん。待たせちゃって・・・」 見れば、手にはメールがある。 ロールは紅茶を最後まで飲み干すと、立ち上がった。 「じゃ、これをメイルちゃんのところまで」 「はい、確かに預かりましたv」 どうやら急ぎのメールで、ネットが打つまでロックマンは傍に居たのだろう。 「じゃ、お楽しみのところお邪魔してゴメンねvまたね、ロックvvv」 そう言い、ロールはロックマンの頬にチュッと可愛らしいキスをした。 「―――――――――っ!!?」 さすがにこれにはブルースも驚いた。 ロックマンもナチュラルに受けていたからだ。 振り返り様、ロールと眼が合う。 ロールはウィンクをし、ぺろっと舌をだす。 ロックマンがロールを玄関まで送り出す。 ついでに、空になったブルースのカップに紅茶を入れるためにもう一足伸ばす。 「・・・ねぇねぇ・・・っ」 先程の頬チューの事を考えていると、ロックマンが隣りに座って、こちらの方を見上げていた。 「メット。メットとってっ」 せがまれ、ブルースはメットを取る。 途端、ロックマンの笑顔がさらに眩しくなる。 「・・・へへへっv」 「・・・・・・」 嬉しそうに笑うロックマンの腕を、ブルースはいきなり、しかも思いっきり引っ張った。 「わっ・・・っ」 倒れこんできたロックマンを受け止め、間髪をおかずに唇を落とす。 「ん〜っ」 まだ慣れていないロックマンは、深く口付けられるとなお息が出来なくなってしまう。 短く、何度も唇にキスを落とす。 『恥ずかしいけど嫌いじゃない』ロックマンは、ぎゅーっとブルースの服を掴み、必死に答える。 そんなロックマンが愛おしくて、ブルースはロックマンをソファーに押し倒してなおキスを続ける。 ようやくブルースが唇を離すと、ロックマンは思いっきり息を吸った。 口の周りは二人の交じり合った唾液でしどしどに濡れており、酸素不足で頬は真っ赤だ。 「な、なに・・・?いきなりどうしたの?」 ふと見上げれば、紅い瞳が自分を捉えている。 「・・・消毒だ・・・」 「しょーどく??」 訳を全くわかっていないロックマンは、首をひねるばかり。 「・・・いい・・・」 首筋にキスを落とし、吸う。 「・・・んっ・・・」 鼻にかかった声が艶めかしくて、ゾクリと来る。 「ふふ・・・気持ちいい・・・」 「・・・・・・」 ロックマンにしてみれば、『じゃれあってる』程度に感じているのだろう。 そっちの方には全く興味と言うか関心が無さそうだし。 とりあえず、今はここまでのライン。 身体を起こすと、ロックマンがピトリとくっついてくる。 その体温が、心地いい。 「・・・ロックマン」 「?なに?」 「・・・好きだ・・・」 コツリと頭を横に居るロックマンの方に傾ける。 「――――っ」 多分、今のロックマンの顔は真っ赤だろう。 それでも、自分の方に擦り寄ってきてくれる。 ・・・大切にしたいもの。 何を、犠牲にしてでも。 オペレーター以外のヒトで、出遭えるなんて。 いとおしくて、イトオシクテ。 離せない、この存在を。 手に腕に、身体に伝わってくるこの温もり。 自分は・・・これからもコレを手にしていきたい。 紺色の髪を梳きながら、そこにキスを落とす。 幸せそうなロックマンの顔。 ・・・今の自分は、これで嬉しい。 コメント 前々から実は考えていた作品です。 本当はマンガだったんですが、量が↑なもので(笑) ロールはロックマンの事が好きだけど、それ以上に幸せになって欲しい!と思ってるんです。 と言うか、ブルースが特別で、他のロックマンに近づく女の子ナビは、『メッ!!』(大笑) こういう関係好きだなぁ(笑) |