カタコイ

この想いに気付いてほしいのではなくて。
・・・ただ、一緒に居てほしいんだ。

パチパチと弾ける火の中に、さらに薪をくべる。
紅い炎が拓也の顔を火照らせ、熱くなる。
炎を見つめ、人知れずに溜め息をつく。
夜中、拓也は見張りをしている。
背にある洞窟では、4人と2匹が今は安らかに寝ているだろう。
もう一度溜め息をつき、膝に顔を埋める。
・・・一人はイヤだ。
考えたくも無い事を考えてしまう。
―――――自分の想いを、一々確認してしまう。
「こ、じ・・・」
自分の声が、薪の爆ぜる音に掻き消される。
それでいい。
それならば、自分の想いも消えてしまえばいいのに。
ぎゅっと瞳を閉じる。
・・・なんて。
なんて。
・・・・・・報われない恋をしてしまったのだろう。
叶わぬ、恋を―――――。
「・・・来なければよかった?」
この世界に。
「声を、かけなければよかった?」
エレベーターの中で。
「・・・どうせなら・・・」
最後の最後まで、冷たくてくれたのなら、吹っ切れたのに。
熱の入り込めない靴の中が、少し冷たい。
そこだけが、火照る身体の中で唯一冷たい。
「こう、じ・・・」
もう今は、触れる勇気さえも持てない。
名前を呟くだけ。
それなのに、こんなに胸が暖かい。
・・・こんなに、胸が痛い・・・。
「なんだ、気付いてたのか?」
返されるはずの無い声が聞こえ、拓也は一気に身を強張らせた。
草を踏む音が聞こえ、それが徐々に近づいてくる。
振り返る事も出来ない。
ただ平然を装うのが精一杯だ。
数十秒も立たない内に、輝二が拓也の横に座った。
心臓が爆発しそうなくらいにドキドキ言っている。
それを隠すかのように、拓也はまた焚き木を二つに折り、焚き火の中に入れた。
「・・・もう交代の時間か?」
「いや、もう少しなんだが・・・ちょと眼が覚めちまってな」
「・・・そっか・・・」
それ以上会話が続かなくって、拓也は焦る。
いつもなら自分から話し、輝二が受け答え・・・とも言えないが、聞き手になってくれる。
だがそれは、仲間達が居てこそ保てるものだ。
焦れば焦るほど言葉が出てこない。
視線を彷徨わせ、それでも言葉が見つからず、溜め息をひとつ。
「・・・最近・・・」
言葉をかけられ、はっと拓也が輝二の方を向くと、輝二の顔がずっと近くにあり、拓也は思わず顔を引いてしまった。
輝二は、そんな拓也の態度に一瞬眉をしかめたが、質問を優先させた。
「最近、お前なんか元気ないみたいだが・・・大丈夫か?」
そういい、拓也の方に手を伸ばす。
「そ、そうかな・・・オレは全然平気だけど・・・」
ふいっと輝二の手を避ける。
触れない。
この手に、触る事が出来ない。
触ってしまったら、自分の気持ちを吐露してしまいそうで。
「・・・拓也・・・」
輝二が自分の名を呼ぶ。
そのたびに、泣きたくなるくらいに嬉しくなる。・・・切なくなる・・・。
感情をぐっと堪え、小さな声で『何?』と答える。
「・・・拓也、お前俺の事・・・避けてないか?」
言われ、思わず身を震わせてしまう。
「・・・そんな事、ねぇって・・・何言ってんだよ・・・」
蚊の鳴くような声で、視線も合わせずに言われたって、説得力が無いだろう。
輝二はそんな拓也の態度に目を細めたが、それ以上は何も言わなかった。
「・・・俺は、拓也に感謝してるんだぜ?」
「え?」
思わず顔を上げてしまい、輝二の方を見る。
輝二は拓也の方は見てはおらず、焚き火を見ていた。
「この出会いや旅が偶然にせよ、俺はお前に会えていろいろな大切なものを見つけられたと思う・・・。
それは多分、お前に会わないと無理だったと、俺は思うんだ」
やめてくれ。
「お前が本気で俺に意見をぶつけてきてくれたから、俺も自分の意見を貫くだけじゃなくて、伝えると言う事が出来るようになったんだ」
・・・やめてくれ・・・!
「だから、ありがとな」
・・・・・・頼むから、そんな事言わないでくれ・・・。
拓也の心が悲鳴を上げる。
「・・・そっか?」
・・・心が、身体が・・・輝二を、欲してしまう――――。
「そう言ってもらえたら、嬉しいや」
そういい、拓也は今自分が出来る最高の笑顔を造った。
輝二も疑問に思っただろうが、深いところまでは聞いては来なかった。
「・・・もう少し、見張りの交代まで時間あるだろ・・・?少し休んでろよ」
「いや、俺がもう交代するよ。・・・ありがとな、話し聞いてくれて」
「お安いご用だってっ」
そういい、拓也は逃げるようにその場を去った。
「拓也!」
洞窟に完全に入る前に、もう一度輝二に呼び止められた。
「・・・おやすみ・・・」
「・・・・・・おやすみ・・・・・・」
振り返りもせずに微かに言うと、拓也は今度こそ洞窟の中に入っていった。
暗いので、岩肌に手をつけて歩く。
自分の歩く音と、石の落ちる音。それに混じり、自分の嗚咽が混じる。
「・・・・・・ぅ・・・っ」
堪えきれずに、拓也はその場にしゃがみこんだ。
必死に必死に嗚咽を堪え、涙を流す。
「こ・・・じ・・・っ」
反響する、その音。
「輝二・・・!」
好きなのに。
諦めたいわけではないけれど、報われない。

どうして。

どうして・・・。

あなたじゃなきゃ、ダメなんだろう・・・。



☆END☆


コメント

リクエストで1位になりました、『輝拓の、拓也の片想い』ですv
・・・暗っ!!(おい)
い、いいのかなぁこんなんで・・・(書いておいて何を言う)
拓也だったら、多分誰にも言わないで悩む何だろうなぁって思うんです。
で、ギリギリのギリギリで思わず言ってしまって、ばれてしまうと(笑)
・・・リクエストしてくださった皆様、こんな感じでよろしいでしょうか?(汗)
ちなみに『カタコイ』は『片恋』、『片思い』って意味でつけました☆