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tortoiseshell candy あまくて。 でも、どこか自分の知ってるそれとは違うあまさで。 それが、とても、ここちよかったの。 任務を終え、教団に戻りコムイに報告を終えると、先程まで居た筈のアレンの姿が消えていた。 ひとつ、息を吐く。 行き場所なんてわかりすぎていて、結局追いつかれるくらいなら離れなければいいと心の中で思いつつ、神田は歩き出す。 今回の任務は、アレンとの共同任務だった。 別に、特に大変なモノだったと言う訳ではない。 どんなに苛烈な任務でも、アレンは文句一つ言わないだろう。 これが自分のすべきことだから、と笑いながら。 「・・・ッ」 それを思い浮かべ、神田は知らず眉を寄せた。 神田の、アレンの嫌いな癖。 いつでもなんでも、自分を真っ先に犠牲に出すところ。 気に入らない。 気に入らない気に入らない、気に入らない。 どれだけ注意しようとも、もう癖とも言えるあの行為は収まる気配を見せない。 カツカツとブーツを響かせ、歩き辿り着いたところは、神田の部屋。 アレンには合鍵を渡している。 自分が任務の時でも、自由に入れる為にだ。 結局自分の部屋に入る訳なので、神田は遠慮せずに扉を開けた。 ベッドの端に背をもたらせ、床に座って顔を埋めているアレンの姿がある。 その頭には、ティムキャンピーが心配そうにアレンをじぃっと見ている。 「・・・おい」 神田が声をかけると、ひくりと肩が揺れた。 近づくと、それに応えるように上がっていく、顔。 頬には大きなガーゼが貼られ、その瞳は大きく潤んでいる。 小さな嗚咽が、アレンから漏れた。 「・・・あれはお前のせいじゃない」 神田がアレンに視線を合わせるように膝を折ると、アレンは、でも。と掠れた声を出した。 「・・・ぼく、が・・・もぅちょっとはやくきづ・・・け、ば・・・ッ」 それだけ言うと、ついに涙がその頬をこぼれ落ちた。 今回の任務中。 どこからか迷い込んできてしまったらしい子供が、アクマの放った攻撃に巻き込まれた。 幸いに命は取り留めたが、その小さな身体に負った傷が、アレンは忘れられないのだろう。 「・・・死んだ訳じゃない。傷も、そのうちに癒える」 「でも、今は痛いんだよ?」 それはお前も一緒だろうと言おうとして、神田はその言葉を飲み込んだ。 他人に対してはいつでも親身になるくせに、アレンは自分のこととなるとてんで頓着しなくなる。 まぁそれは、神田も人のことを言える立場では決してないが。 「・・・お前が悪いわけじゃない」 もう一度、神田は繰り返す。 そうして、ぽろぽろとこぼれ落ちる涙を拭ってやり、俯いていた為にくしゃくしゃになってしまった髪を梳いてやる。 その優しい手つきに、アレンは一層顔を歪め、神田に抱きついて、その肩を揺らした。 神田もそれ以上何を言うわけでもなく、泣き続けるアレンを抱き返してやった。 かんだ、と時々呼ぶ声。 嗚咽混じりのそれに、神田はそのたびに返事をしてやる。 ・・・それはアレンの確認行動。 突然目の前から大切な人がいなくなってしまう悲しみを知っているものの、必要行動。 かんだ。 甘く切ない声が自分の名を呼ぶ。 ああ、とだけ返す自分の言葉を、アレンはどのように受け取っているのだろう。 かんだ。 何度も、何度も。 呟き、囁き、呼びかけてくる。 飽きず、何度も。 その内に嗚咽は収まってきて、だがアレンの涙が乾く頃には神田の団服は肩口がびしょびしょに濡れてしまっていた。 □■□ 「ほら」 濡らしてくれたタオルを、アレンは礼と共に受け取り、目元に当てた。 泣きすぎて真っ赤になった目が、どれだけの間アレンと神田が抱き合っていたのかを教える。 そのまま目を閉じてしまったアレンを見て、神田は静かに息を吐く。 まったく、甘い。 この目の前の少年の考えも、自分の少年への対応も。 まるで。 その甘さは、まるで・・・ ふと思い出すものがあり、神田は机の引き出しを引いた。 出てきたのは、時々無性に欲しくなるもの。 「かんだ」 その一つを手にし、引き出しを戻した時にアレンの呼ぶ声が聞こえた。 タオルを目から離し、じっとこちらを紅く不安そうな目で見てくる。 「神田」 もう一度呼ばれ、神田はアレンの方に戻って行った。 アレンの横に腰掛けると、すぐにアレンは肩口に頭を乗せてきた。 団服を脱いだ為、すぐにアレンの体温がジンワリと布越しに伝わってくる。 あたたかい。 アレンも、もっとと求めるように神田に擦り寄ってくる。 「・・・あまえた」 「子供ですもん」 調子の良い時にだけ子供に戻るアレンは、それでも神田に抱きついてくる。 頼ってくれると言うことに、どうしようもない。 惚れた弱みと言うやつで、嬉しさが込み上げてくる。 仕方の無いことだ。 ・・・好きなのだから。 「おい」 短く呼ぶと、アレンがふっと顔を上げた。 なんですか、と声をかけようとしたのだろう、開いた口に、先程持ち出したものを押し込んだ。 「ッ・・・?」 いきなりのことに目を丸くして驚いたアレンは、だがすぐに口の中に広がる甘さに口を動かした。 「あま・・・い・・・」 「鼈甲飴だ」 「べっこ・・・?」 わかっていないふうなアレンに、短く神田は日本の飴だと答える。 もごもごと口を動かしていたアレンだが、でも。とまた言葉を続けた。 「・・・なんか、僕の知ってる飴と違う・・・」 「ああ・・・お前らは果物なんかの果汁なんかの味のが多いからな」 「?これは違うんですか?」 「簡単に言うと、これの材料は砂糖と水だけだ」 「ぇえ〜?」 だが、その混じりけの無い甘さは、確かに砂糖のそれ。 甘く、じんわりと舌に馴染む。 「おいしいです・・・」 ほわ、とアレンに笑みが戻る。 ようやく笑ったアレンに、神田も気付かれないように力を抜いた。 やはり、笑っていてくれる方が心臓には良い。 顔に出さずとも、やはり泣いているのを見るのは良い気分のするものではないから。 「神田みたい」 「は?」 だから、アレンの言った一言に、反応が遅れてしまった。 「べっこう飴。神田みたい」 「・・・・・・」 神田が言葉に詰まっていると、アレンは先程よりもトーンの上がった声で更に続ける。 「あまくて、でも飽きないですし。 なんて言うのかな・・・あったかいあまさなんですよね、これ。 だから、神田みたいです」 笑った顔は、まるで何かを発見した時の子供の表情だ。 呆れやら照れやらがあったが、そんな自慢げな顔をされれば、突っ込みも出来なくなる。 特に、今まで泣いていたとなればなおさらだ。 「・・・気に入ったのか?」 それ、とべっこう飴を言えば、アレンは満面の笑みで『はい』と返した。 神田は今だ引っ付いているアレンの身体をそっとはがすと、立って、先程の引き出しをもう一度開けた。 「やる」 そんな素っ気無い一言と共に飛んできたものを、アレンは慌ててキャッチした。 厚手なビニールには、シールの上に神田の祖国の言葉が書いてある。 中には、きらきらときんいろの飴が入っている。 「・・・いいんですか?」 「いらないなら返せ」 手を出してきた神田から慌ててアレンは袋を遠ざけ、いります!と叫んだ。 ふっと神田は表情を崩し、もう一度アレンの隣に座る。 「・・・・・・」 アレンは飴を口の中でコロンと転がす。 「神田はもういらないんですか?」 いらない訳ではないが、自分よりも数倍おいしそうに食べるアレンに食べられる方が、飴だって嬉しいだろうと神田はらしくないことを思う。 だがもちろん、そんなこと口に出せる程神田も性格が丸くなったわけではない。 と、そこで頭をもたげたのは、ちょっとしたすけべ心。 「俺はこれでいい」 え、とアレンがきょとんとしていると、神田はその顎を手でくっと上を向かせ、無防備に薄く開いている口に舌を差し込んだ。 口内を舐め、すぐに離したが、べっこう飴の甘さはちゃんと伝わってきた。 時間差でかーっとアレンの頬が染まっていく。 まったくいつまで経っても初々しい。 「かっ・・・!」 「お前が貰ってもいいかって聞いてくるから、俺はこれでいいっつったんだろーが」 言うと、うっとアレンは言葉を詰まらせ、顔を俯かせた。 それから、もじもじと手の中で飴の袋をいじり、そっと神田を上目遣いで覗き見る。 「・・・かんだが、それで・・・いいなら・・・」 ぽそりと呟かれた言葉に、にっと神田は笑みを作った。 それからもう一度、今度はしっかりと。 アレンの口を味わっていった。 単純な材料で出来た、なのにあたたかいあまさのそれは、まさにあなた。 あなたがいてくれれば嬉しいなぁとか そんな私も単純な、『tortoiseshell candy』 コメント tortoiseshell candy=べっこう飴。 訳があってるかどうかは不明ですが・・・!(・・・) てか、今での中でアレンが全部泣いてます。ついでに神田慰めまくりです。 アレンが『かんだー』(しかもひらがな)で呼んでたら絶対に可愛い。 萌え。 私の脳みそはいつもこんな感じ・・・です・・・(ガクリ) |