|
きみの為のきみへの想い 聞かされていたには聞かされていた。 一緒に任務についた時には、と、本当に珍しく頼まれもした。 それでもやったら、と脅しもかけられた。 ・・・ならばあの恐い友人に従うしか、自分には選択肢は無いと思う。 それが例え、アレンを犠牲にしたとしても。 「アレンさー」 クロウリーとの戦いを終え、城の外で待っていると、ラビが唐突に声をかけてきた。 「はい」 アレンがラビの方を見ると、自分から呼んでおきながら、ん〜と言葉を濁すようにアレンから視線を反らしている。 きょんとしてアレンがラビの言葉を待っていると、ようやくラビが次の言葉をかけてきた。 「オレはさ、人の戦いにあんま指摘なんてしたくないんよ。 どうやってとか、理由や仕方なんて人それぞれだしさ、オレだってなんも知らんヤツに言われてもムカツクし」 「・・・はぁ・・・」 要を得ないラビに、アレンは曖昧に相槌を打つ。 ラビも、自分で遠回しに言って居る事はちゃんとわかっているらしく、そんなアレンに何も言いはしない。 「でもな、ど〜みてもな、オレは言った方が言いと思って。 だから、これはオレの勝手なお節介だから、聞いて欲しいなーみたいな」 「はぁ・・・どうぞ・・・」 するとラビは、それまで背を持たせていた樹の幹から身体を起こし、アレンに向かい合った。 「お前のその、自分を切り売りしてまで他人を庇う姿勢は、なかなかいただけなくてさ」 「・・・・・・」 会う人達に言われるそれに、アレンは苦笑するしかなかった。 神田にもリナリーにもコムイにも、クロスにさえ言われてきた。 自分の身など顧みもせずに戦うそのスタイルは、傍に居るものの方が心臓に悪い。 「うーん・・・僕も気を付けようとはしてるんですが・・・なかなか身体が動いちゃって・・・」 「条件反射ってのは、ある程度いつも身構えているから出るんよ。 ッつーことは、お前の芯の部分は全然その戦い方を変えようとは思ってないわけさ」 「・・・・・・」 痛いところを突かれ、アレンは口を紡ぐ。 それでも、その苦笑を収めないところを見ると、やはり自分が言ったのでは効果は薄いだろうとラビは心の中で思う。 「改める気はないんか?」 「無いって言うか・・・やっぱり、僕が傷付くくらいで人が助かるのなら、助けたいです」 力を持っているから。 そう、アレンは続ける。 だがその力も、クロスから見ても、ラビから見てさえもまた不安定で未熟なモノだ。 アレンとて、無傷で助けられるなんて微塵も思ってはいない。 だから、『自分』と言う盾を使うのだ。 ・・・こりゃユウが心配する訳だ。 やんわりと、だが注意を受け入れる気の無いアレンには、ラビの言葉はこれ以上届かないだろう。 ならば、しょうがない。 ラビは懐を探ると、黒いゴーレムをアレンの前に差し出した。 バサ、と羽をはばたかせると、風でアレンの髪がフワリと舞った。 「?」 戸惑ってラビを見ると、ラビは眉を寄せてアレンを見ている。 「実はな、アレンのことユウから聞かされててさ」 「――――――」 ひくりとアレンの身体が強張る。 「言われてたんさ。あんま無茶するようなら注意しろって」 「・・・・・・」 アレンは、先程のようにラビの言葉を黙って聞いている。 ・・・その表情は先程とは明らかに違うが。 「で、もし改めないようなら、俺に言えって」 と言う訳で、とラビはゴーレムを指差す。 「ユウと繋がってます☆」 いつから、とは聞けなかった。 多分、先程のラビとの遣り取りは聞かれていただろう。 神田とラビの性格を考えたのなら。 『・・・モヤシ?』 やはりと言うか何と言うか、ゴーレムから聞えたのは神田の声。 ずぅっと聞いていなかった、世界で一番大好きな声。 けれど今は、一番聞きたくない声。 アレンが固まっていると、苛立った神田がもう一度声をかけてくる。 『三、二、い・・・』 「わー!わー!居ます居ます!ちゃんとココに居ますー!!」 前にこの方法で答えないでいると、恐ろしい目にあわされたことがあり、アレンはギリギリのところで返事を返した。 ふんっと、神田の息を吐く音が聞える。 『・・・お前また怪我したんだって?』 やはり事前にラビが神田に言っていたのだろう。 キッとラビを見ると、ラビはふいっと視線を逸らした。 「・・・酷い傷じゃ、無いです・・・」 ポソリとアレンが呟くように言うと、ゴーレム越しの神田が黙った。 沈黙が恐い。 『ラビ』 呼ばれ、ラビはへーいと返事をする。 「えーとな、クロちゃんが適合者かもで、んでも向こうさん話聞かないもんでアレンのやつ武器化解いたんよ。で、肩におもっくそ怪我負ってる。 んで、そのまま首筋に噛み付かれそうになって、そこにも怪我、及び後ろ髪食いちぎられてる。 エリアーデって姉ちゃんにも、説得しようとしてたっぽいな」 「ラビ―――!!」 なんてことを!!と、アレンが涙目でラビを睨む。 が、そんなアレンも、神田の一言でゴーレムに再度向き合った。 『・・・ほう?』 「・・・・・・」 『おいモヤシ』 「・・・アレンです・・・」 こんな時に、よくそんなことで反撃できると思う。 ラビだったら、とっくにゴーレムを埋めて逃げている。 『そんなこと聞いてんじゃねェよ』 すぱっと神田に切られると、アレンはたっぷりと間を置いてから小さな小さな声で謝った。 するとまたしても聞えたのは、溜め息。 キッとアレンは、強気にゴーレムを睨む。 「なんですか!ちゃんと謝ったじゃないですか!」 おいおい、と、ラビは再び飽きれて内心で突っ込む。 だが、自分が言わずとも神田が言うだろうと茶々をいれずに傍観している。 『お前ちゃんと謝るって意味わかってんのか? 謝るってのは、自分の行いを振り返って、改めることだ。 お前改める気も無いのに、俺にそんな言葉だけの謝罪を言うのか?』 アレンは再び黙ってしまう。 こうしてしょげている姿を見ると、思わずラビはアレンを庇いたくなってしまう。 まるでその姿が叱られている小動物みたいだからだ。 だが、ここで庇護欲にかられ庇う訳にはいかない。 ラビから見てみても、アレンの自己犠牲的な戦い方はいただけない。 傍にいない神田からしてみれば、その心配は半端なものではないだろう。 何せ、『あの』神田が自分に頼みごとをしてきたのだから。 物事に執着など見せなかった神田が、ここまでアレンに執着を見せている。 神田を知っているラビに取っては、同時に面白い展開でもあるのだ。 「・・・」 『戦うななんて言わねェし、誰かを庇うなとも言わねェ。 俺らはエクソシストなんだし、庇う庇わねぇはそいつ次第だからな』 「・・・はい・・・」 『俺が言いたいのは、自分の命をかけてまですんなって言ってんだ』 「・・・はい・・・」 『他のやつのことも考えろ。お前が良くても、お前を知っていながら見てる方はツラい』 「・・・・・・」 『モヤシ』 「は、い・・・」 諭すような神田の声は、いつものようなトゲを含んではおらず、その優しい口調に、ラビは本当に神田のその変化に嘆息する。 人間、変わろうと思えば変われるものなのだ。 『大体まだ任務にすらついてねェんだろ?温存しろよ』 「・・・すみませんでした・・・」 先程よりもしょんぼりとした声に、ラビは苦笑する。 ゴーレム越しの神田にも、先程と違うアレンの声はちゃんと伝わっているだろう。 『気を付けろよ』 「はい」 『また無茶しても、ラビに聞くから逃れられると思うな』 「はい・・・」 『・・・モヤシ』 アレンが鼻を啜ると、それまで小言を言っていた神田が不意にアレンを呼んだ。 アレンはボロボロの団服で涙を拭くと、神田の言葉を待つ。 『あんま、心配かけんな』 「―――――――」 くしゃりとアレンは顔をゆがめ、ボロボロと泣いてしまう。 かろうじて出た声は嗚咽に紛れ、それでも神田には伝わっただろう。 慰めるようにゴーレムがアレンの前を飛び回るので、アレンはその黒い物体をギュッと胸に抱きしめた。 『じゃあな』 「・・・かんだ、も・・・きをつけてくださ・・・」 当然だ、とだけゴーレムは伝えると、アレンの手から解放され、ラビの元へ戻ってきた。 まだ鼻を啜っているアレンの頭に手を乗せ、子供を慰めるように視線を合わせて語りかける。 「オレ、クロちゃんの様子見てくっからさ、アレンここで待ってろな?」 今だ涙の収まらないアレンは、コクリと頷くと樹に寄りかかってしゃがみこんでしまった。 それを遠巻きに見つつ、ラビは苦笑する。 「ユウも過保護になったな」 ゴーレムに向かって語りかけると、煩い。と返ってきた。 「まぁわからんでもないさ。アレンのユウに言われてたけどさ〜まーさかあそこまでとは思わなかったさー」 もう一度、煩いと返ってくる。 ちらりとアレンをもう一度見ると、まだ泣いている。 「・・・神田の声聞いたら、恋しくなっちゃったみたいよ?」 『・・・・・・』 黙ってしまった神田に、ラビは声を上げずにニヤニヤ笑う。 出来るだけ任務中神田がアレンに連絡を取ろうとしないのは、こういうことなのだろう。 「ま、出来るだけオレも努力するさ」 『ああ』 ラビはふざけてはいるが、その実力は神田とタメを張る。 神田も、それをちゃんと認めているのだ。 「お前も気をつけろよ?怪我したらまたアレンのやつ泣くぜ?」 『会う頃には治ってんだろ』 「・・・それが、アレンに取っては一番恐ろしいんでないの?」 神田が黙る。 まったくこの二人は、自分を大切にしないと思う。 「お前もさ〜自分大切にしろ?アレン泣かしたいんか?」 ちっと舌打ちが聞えた。 思わず、ラビは笑い声を抑え切れなかった。 次に合った時には六幻を向けられるかもしれないが、その時はアレンに庇ってもらおう。 ずっと変わらなかったすさんだ世界に入ってきた小さな光は、それでも周りに影響を及ぼした。 それが嬉しくて、でも少しだけ嫉妬して。 次に会う時が楽しみだ、とラビは心からそう思った。 この任務が終わり、改めて顔を合わせれたら。 そう考えるのは、思った以上に楽しそうである。 『ところでそのクロウリーとか言うやつ。会ったら覚えろと言っておけ』 ・・・約一名の、生死を除いては・・・。 コメント ラビ視点(?)でお届けしました。 神田の性格が違うっちゅーねん。 そしてアレンがやっぱりちわわになっちゃうなぁ(笑) アレンがクロウリーに髪を食いちぎられた時の私の頭の中に最初に浮かんできたのは 『これ見たら神田怒るよなー』 とか言うまさに同人の鏡の様なことでした。 本っ当に自分は、何に対しても絶対ただでは転ばない性格だと思います・・・よ・・・。 |