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キミと一緒に〜この道を歩きながら〜 友はお台場小学校の4年生。 母親は大概は家にいるが、週に何回か夕方に草サッカーのコーチとして出掛けてしまう。 父親は現在売れっ子のバンドマン。 『TEEN−AGE WOLVES』というヴォーカル兼ベースのバンドの要。 容姿端麗・眉目秀麗。金髪碧眼の女性の憧れの的。 しかしそんな有名人が家でゴロゴロしてるはずもなく。 その言葉の通り朝から晩まで働きっぱなし。 テレビにラジオにと出演に引っ張りダコ。 家にまともに帰れるのは月に1、2回あれば珍しい方だ。 それでも父親はどんなに忙しくても、疲れていても毎晩電話をくれる。 そんな父親を友は尊敬しているし、素晴らしいと思う。 でも、ひとつだけ気に入らないところがあって・・・。 「ただいま〜」 夕方、四年になってから始まったクラブを終え、帰路についた友。 いつもなら勇が飛びついてくるのに今日はそれが無い。 「おかえり〜」 「!?」 奥のリビングから、低いテノールの良く通る声が聞こえた。 友は急いで靴をぬぎ、廊下を走る。 「よっ。お疲れ」 「・・・・・・父さん・・・」 そこには、太一の夫で友と勇の父親のヤマトがソファーでくつろいでいた。 でも。 帰って来てくれたのは嬉しい。 疲れているんだからビール飲みながらゴロタランしてるのもかまわない。 気に入らないのはその腕に抱えている人物こと。 「ともー!おかえりーv」 勇はヤマトにぎゅーと抱き着いて、顔だけをこちらに向けてから、またヤマトの方に視線を戻した。 そう。勇はヤマトがえらくお気に入りなのである。 たまにこうして帰ってくれば、勇は友には目もくれずヤマトと始終一緒にいる。 大事な大事な勇を取られて、友は不機嫌も不機嫌。 その事を知っているのは母親の太一だけ。 太一は台所から苦笑を漏らしながらその様子を見ていた。 「ほらーみんなメシだから手伝えー」 「オッケー」 その言葉に一早く従うのはヤマト。 語尾にハートがついてもおかしくはないその言葉に友は一人溜息をつく。 まったく。何年一緒に暮らしていてもバカップルの熱は冷めないようで。 特にヤマトが本格的にバンド活動を開始して、逢える回数が減ってからはさらにベタベタするようになってきた。 「え〜?パパがてつだうことないよ〜!ともがてつだってくれるから、オレとあそぼ〜よ〜!」 カチン☆ 悪気は無い悪気は無い。 小さい子の言う事だと思っても、それを言ったのが勇だからこそなおさらムカツク。 「でもな、勇・・・」 「いいよ、別に。父さん疲れてんだろ?ゆっくりしてなよ」 友はカバンをおろして、台所へ向かう。 「すまん、友」 「ね〜ぱ〜ぱ〜!」 勇がヤマトの注意を自分に向けたので、友が怒りのこもった溜息をつくと、腕まくりをした。 「友」 「なに?」 盆に、盛り付けてある茶碗を乗せ、テーブルへと運ぼうとする。 太一に呼ばれ、振り向くと髪をガシガシと撫でられた。 「気にすんなって。勇はヤマトがたまにしか帰ってこないから甘えれるうちに甘えてるだけだよ」 「・・・ウン・・・・・・」 友はどうもこの母親には口答えができない。というか逆らえない。 父親曰く、遺伝らしいが。 太一と話して少し機嫌を直した友は、改めて茶碗を運ぶ。 「ほら、二人も席つけって」 後から太一がおかずを運んで夕飯の準備が整った。 「わかったー」 「パパーだっこしてーv」 勇がコロモンをソファーに置いて両手をヤマトに伸ばす。 「よし・・・っしょっと・・・」 「きゃーvたかーいv」 勇はヤマトにぎゅっとしがみついてきゃっきゃはしゃいだ。 それを見て友の機嫌はまたしても急降下。 「友・・・」 これには太一も苦笑するしかない。 「ね〜パパ〜きょうパパといっしょにねてもいい〜?」 握り箸を太一に直されながら食事を進めていると、勇がそんなことを言った。 「ああ。久し振りに一緒に寝るか」 「うっわ〜いv」 「こら、勇!箸を振りまわしたらダメだろ?」 めっ!と太一に注意されてちょっとシュンとした勇だったが、またさっきのテンションに戻ってヤマトととめどない会話を始める。 「あ!ねえ!ママととももいっしょにねて『かわ』やりたい〜♪」 「お〜いいな〜」 「ね〜とももやろ〜よ〜」 「嫌だね!」 さっさとご飯を食べ終えた友は食器を流しに持っていき、自分の部屋へと入っていってしまった。 「・・・とも〜〜〜」 冷たい友の態度に勇の目がウルリとゆがむ。 「ほら、勇!泣くな」 太一が勇の頭を撫でてなぐさめる。 「う〜〜〜〜」 勇は暫くグズっていたが、またさっきの様にヤマトにベタベタと甘え始めた。 パタン、と扉を閉めると、明かりをつけていないので外の光が部屋に入ってくる。 「・・・んだよ・・・勇のヤツ・・・・・・」 友はボスっとベッドに身を沈め、しばらくいろいろ考えてた。 翌日。第2土曜日で学校は休みだが、調べものをするために図書館へ行くために早起きした友は、部屋を出た途端に聞こえた大きな泣き声に顔をしかめた。 「母さん・・・はよ・・・・・・。どうしたの?」 騒がしい原因が勇だと知り、友は近くにいた太一に話しかける。 「ああ、友。おはよ。実はな、ヤマトが急に仕事入っちゃって今すぐ局に行かなきゃ行けないんだけど勇がぐずっちゃってな・・・」 太一は苦笑を友に見せると、ヤマトにしがみついて離れない勇に近付いて行った。 「ほら!勇!ヤマトが困ってるだろう?」 太一はそういって泣き喚く勇をヨイショと持ち上げた。 「やだぁ〜!パパ、いっちゃやだ〜!!」 あーんっ!!と金切り声に近い声で勇が泣き叫ぶ。 「ほら!ヤマトも行けって!」 暴れる勇をなんとか抑えながらヤマトに出かけるように促す。 「スマンっ。勇、また近いうちに絶対帰ってくるからなっ。友も元気でな!」 ヤマトはそれだけ言葉を残すとガチャっとドアを開けて出ていった。 「あっ!パパー!!!」 勇は暴れて太一の腕から脱出したが、もうヤマトはマンションのアーチをくぐって車へと乗りこんでいた。 「ぱぱ・・・」 ムカムカしながら、友は太一が用意してくれた朝食を食べる。 「友、今日は早起きだけどどっか行くのか?」 太一が甲斐甲斐しくミルクをコップに注いでくれて、礼を言ってウン、と頷いた。 「社会の宿題で調べモノあるから・・・図書館行って来る」 「そっか。気をつけてな」 「うん」 太一はニッコリと微笑むと、まだ玄関に張り付いている勇のところへと向かったいった。 「じゃあ行ってきま〜す」 靴をはいて、洗濯物を干している太一に出かける事を知らせる。 向こうから太一の叫んでるような声で、 「気をつけてな〜!がんばってこいよ〜!」 という声が聞こえた。 友はわかった、と太一に聞こえるくらいの声で言うと、ドアを開けて外へと出た。 外に出た途端、ムワッとする空気が友を包む。 不快な肌触りに友は眉をしかめるが、そのまま歩き始めた。 暫く行くと、後ろから勇の声が聞こえた。 友は一回立ち止まって後ろを振り返ったが、すぐにまた歩き始めた。 「まって!とも、まって!」 やっと追いついた勇が友を見上げる。 友は機嫌の悪さを隠さずに勇を見下ろす。 「・・・んだよ・・・」 「とも、どこいくの?オレもつれてって!」 お気に入りのコロモン人形を脇に抱え、もう片方の手を友に伸ばす。 いつもならためらい無くその手を握るのだが、今は状況が違う。 「嫌だね。とっとと家に帰れ」 冷たく言い放ち、さっきよりも歩調を強める。 「とも?まってよとも!」 友の早歩きは勇の走る強さと同じだ。 勇は一生懸命友に合わせる。 「とも?とも?どうしたの、とも?」 勇が不安げに友を見る。 「別になんでもねーよ。お前といると勉強にならないから帰れよ」 追い払うように友は今度は走り始めた。 「とも!?まって!」 勇も友を追いかける。しかし4歳児が10歳の友にかなうはずも無く、どんどんと差が開いていく。 「とも、と・・・うぁっ!」 ドテ、という音が聞こえ、勇が思いきり転げた。 友はその様子を見て、一瞬勇の元に走り出そうとしたが、寸でで止め、その場に立ち止まった。 「・・・ひっく・・・ぁぁぁああんっ!!」 あたりにすさまじい泣き声が響く。 幸いあたりには人がいなく、それほど迷惑にはならなかったが、ほおっておいたらチョットした騒ぎになってしまうだろう。 勇は地面にうずくまっているので、今走れば完璧に勇をまけるだろう。 ・・・でもそんなこと、友に出来るはず無かった。 クルリと踵を返し、勇の方へと歩み寄る。 「ほら・・・勇・・・」 友は勇を起き上がらせて服の埃を落としてやる。 身体についた傷を調べて、勇を抱きしめて背中をポンポンと叩いてなぐさめてやる。 「泣くな、勇」 友の服を掴んで、グシュグシュと顔を擦りつける。 友はコロモンを拾い上げて、今来た道を戻っていく。 勇はまだグズって、友から離れようとしない。 そんな勇が可愛くて愛しく思う。でも、同時に憎くも思う。 「なんだよ・・・父さんがいなくなった途端甘えてきやがって・・・俺は父さんの変わりじゃねーぞ・・・」 「う?とも・・・?」 なに?と涙と鼻水とヨダレでグショグショの顔を友に向ける。 「お前、俺が父さんと似てるからって変わりにすんなよな」 いい迷惑だ・・・。 そういう友の表情は苦しそうだったが、幼児の勇にそんな難しいこと理解できるはずもなく、首をかしげた。 友ははぁ、と溜息をついてもう少し簡単な言葉に直した。 「勇は、父さんが好きなんだろ?だったら俺じゃなくて父さんにベッタリしてればいいだろ?って言ってんの」 勇はやっと理解が出来たらしく、友の服をひっぱりながら言葉を紡ぐ。 「あのねーママがね、いってたの。『すき』っていうのはいっぱいあってねー『あい』っていうのはひとつなんだって。 でね、どんなのが『すき』で『あい』なの?って聞いたらね、『すき』ていうのはこころがぎゅーってなることでね、『あい』っていうのはきゅーってなるのなんだってー」 「・・・???。で、何が言いたいんだ??」 イマイチ要領を得ない勇の発言に友はさらに聞きなおす。 「あのねーパパはこころがぎゅーってしてね、ともはきゅーってなるのー」 「・・・っっっ!!!」 ようやく勇のいいたいことが分かった友は、その頬を紅くさせる。 「そ、そっか・・・」 友は勇を抱えなおし、紅くなった顔を隠そうとする。 しかし、勇の追求は続く。 「ねー。ともは?」 「は?」 「ともはオレのことぎゅーってなるの?きゅーってなるの?」 好奇心でキラキラさせた目で友を見上げる。 ・・・この目からは逃れられないと友は悟る。 「・・・きゅーってなるよ・・・」 それを聞いた途端に勇の顔がぱあっと明るくなる。 「じゃあオレたち、『そーしそーあい』だね!」 ぶっと友がふきだす。 「お、お前・・・そんな言葉どこで覚えてくるんだ!?」 「?ママがおしえてくれたよ?」 ・・・母さん何教えてるんだよ・・・。 いつもは普通を装っているけど、やっぱり父さんと会えなくて寂しいのかな・・・。 でも勇にそういうこと吹きこむなよ・・・。 前にヒカリおばさんに言われた、 『昔からいちゃいちゃしてて周りから見てて恥ずかしかったわ〜』 という言葉がよくわかった。 ようやく痛みが引いていつもの調子に戻った勇は友の腕の中でコロモンと遊んでいる。 「そいえばとも〜?どっかいくんじゃないの?」 クリっと小首をかしげる勇は最強に可愛い。 「いいよ・・・明日行くから。それに、今は勇の手当ての方が先だろ?」 「じゃあねーあしたもオレついていっていい?」 「・・・別に・・・」 「うあーい!やったぁ♪」 「こら!暴れんな!落ちるぞ!」 まったく・・・コレも血筋なのか・・・。 そう考えるとちょっと悲しいけど、勇を独占出来るなら、いい。 とりあえず、ライバルは親父。 絶対負けない! コメント コドモたちのパラ小説第2弾です☆ これ書いてるとタケヤマとか治賢とか近親相姦カップリングの人の気持ちがよく分かる・・・(笑) |