10 『二人』

『生まれ変われた』ということよりも。
『巡り逢えた』ということが、嬉しいから。

心のつかえを取れたカイとレイは、みるみるうちに回復していった。
無事退院し、不器用ながらもレイはカイに近付くようになった。
カイも、笑うようになる。
レイの眠り癖も復活し、今もカイの膝を借りて、夢の中だ。
暖かな日差しを、こうして感じている。

『もう、大丈夫みたいネ』

二人で水原ホビーショップを訪れた時にマックスに言われた言葉。
驚いた表情の後に、ニッコリと笑われながら言われたそのセリフの意味がカイには理解できなかったが、レイは頬を少し染めて、『まぁな』と笑っていた。
なんのことだ?とカイが尋ね、なんでもない。と少し紅くなりながらレイが答えるのをマックスが見て、また笑われた。
結局何のことかはわからなかったが、レイがなんとなく嬉しそうで、恥ずかしそうだったので、無理に聞くのを止めた。

サラサラと、樹の葉が擦れ合って、涼やかなメロディを奏でる。
誘われるように、レイは更にカイに擦り寄って来て、深く眠る。
読んでいた本を閉じ、レイの髪を撫でてやる。
艶のある、紺のような漆黒の髪。
今日はいつもの髪止めではなく、三つ編みにしている。
まだ幼さの残る輪郭。
長いマツゲが、肌に影を落とす。
純粋に、綺麗だと思う。
あれほど焦がれていた風景が、自分の眼下にある。
それは、夢のような、コト・・・。
瞼を親指でさわり、今は見ることの出来ない金眼を間接的にふれる。
そして、もう片方の手で自分の眼を、やはり瞼越しにさわる。
「・・・コレは、歴史の証なのかな・・・」
うざったいと思っていた、感情。
『好きになる』という、感情ち(きもち)・・・。
こんなにも執着できる人に逢えるなんて。
「運命、なのかな・・・」
それでも。
不幸に『なるかもしれない』なんて、あやふやに捕らわれるのは嫌だから。
そんなコトを考えていると、レイが少しだけ眼を開けた。
カイを確かめると、もう一度眼を閉じて、横に寝ていた身体を仰向けにする。
「・・・何・・・?」
自分の眼をさわっていたカイの手を両手で掴み、握る。
「・・・いや・・・」
カイはそういいながら、包まれた手を広げて、レイの頬をくすぐってやる。
気持ちいいのか、レイは少し首をあげて、カイのその行動をおとなしく受けている。
「・・・いいな・・・」
「?」
カイの言葉の意味がわからなくて、レイはカイを上目使いに見る。
「何かに・・・こうしてすがれるというのも・・・いいものだな・・・」
カイが穏やかに笑うのを見て、レイも嬉しくなる。
「うん。カイと一緒に入れて・・・オレも嬉しい・・・」
だけど、実際、不安は消えない。
自分と一緒に居るコトで、カイが傷付いてしまったら。
そう考えただけで、今でも眠れなくなることがある。
でも、不思議だね。
その闇から救ってくれるのも、カイだから。
「・・・遠くから・・・」
レイが再び口を開く。
「・・・・・・遠くからでも、カイを見ることが出来たら・・・幸せなんだって思ってた。遠くから見てることが、幸せなんだって」
それはカイを傷つけないと思ったから。
「・・・だけど・・・」
レイはゆっくりと起き上がる。
「違った・・・」
四つん這いになり、カイに顔を近づける。
「こうやってカイにふれられる。なんて、嬉しいんだろうって思う・・・」
コツリと小さな音を立てて、カイとレイの額が触れ合った。
「制約を守ってれば、カイも、オレも苦しまないって思ってた。
カイを望まなければ、カイを失わないですむって、思った。・・・・・・でも・・・」
今は赤銅色の瞳。
カイの視界には、自分の眼の金色が広がっているのだろう。
「カイを、求めてしまった」
求められずには居られなかった。
「・・・火は・・・」
レイは少し眼を閉じて、また開けて、言葉を続ける。
「使う人によっては、とても暖かな灯火になると、思う・・・」
彼等の生き方が、間違ってるとは思わない。
それでも、もし一緒にいれたなら・・・。
カイがふと動き、唇が一瞬触れ合った。
「運命も過去も信じない。俺は俺だ。そして、レイ。お前は、お前だ」
何度も何度も・・繰り返しカイに言われたそのセリフ。
「うん・・・そうだな・・・。・・・でも・・・でもな、カイ・・・。オレはやっぱり過去も信じるよ。今までそうしてきてしまったし、どうしても割り切れないから」
だけど。・・・だから・・・。
「・・・ようやく、逢えた・・・」
時を越えて。
姿が違ってしまって。
心も変わってしまったけど。
また、こうして巡り逢えた。
キミと自分。
今度は、二人の唇がしっかりと重なる。
『好きだ』
そういって、静かに微笑んだ。

それは、自分に関わらずとも受け入れなくてはいけないもの。
それは、自分に関わり、それでも避けなくてはいけないもの。
それは、遠い遠い、それこそ自分が生まれるよりもずっと前から定められてしまっていたこと。

今度は、しっかりと受け止めるよ。
自分が信じて。
彼が居て。
この気持ちがあれば。
定めだって乗り越えられるよ。

季節が変わって。
変わっていっても。
こうしていけたら、ただ純粋に幸せだね。



☆END☆


コメント

んん〜〜〜・・・イマイチ納得のいかない終わり方になってしまいました(汗)
それでも今回は予告通りに終われてよかった☆(大笑)
ちなみに元歌詞はこちらですv
聞いてて思ったのですが・・・『ガーネットクロウ』の『夢みたあとで』とすっごくあってたりもします・・・(自分的解釈/でもマジ)
コナンで是非確認してみてください(爆)
ダラダラと10話まで着ましたが、飽きずに読んでくださった方々、本当にありがとうございましたv