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Interdependence 五感が狂う。 視覚が、 聴覚が、 嗅覚が、 味覚が、 ―――――触覚が。 あなたに逢うと、私が狂う。 最初はロイからのアプローチからだったと、ふとエドワードはソファーに腰掛け書物を読んでいるときに思いだした。 三年間続けられたアプローチに自分が応えたのはつい最近。 以前から東方に帰ってくればロイの家に泊まっていたし、誘われればご飯にも行った。 話しは自分の旅のや錬金術のことに花が咲くし、ロイは自分だけでなくアルフォンスもちゃんと大切に扱ってくれる。 付き合ってもあまり変わらないと思っていた中で、一番変わったのは触れ合う時間が増えたことだ。 ソレは例えばキスとか、スキンシップ以上の触れ合いとか。 ロイの一つ一つの仕草が、どれだけ自分を想ってくれているかがありありとわかって、エドワードはそっと顔を紅くする。 「う〜〜〜〜・・・」 今まで錬金術に旅に研究に夢中で、そう言う感情を考える暇などなかったし、興味も無かった。 目立つ容姿をしているせいか、時々声をかけられたりするけれど、そういう時に沸くのは嫌悪か無興味だ。 アイノコトバなんて薄っぺらくて、信じる気にもならなかったと言うのがエドワードの本音。 だって、本当の『愛情』を自分は知っているから。 付き合えばわかる、とか。 まずは友達から、とか。 じゃあどこからどこからが友達と恋人の境界線なんだ。 そういうその場しのぎの言葉は要らない。ほしくない。聞きたくも無い。 そうして自分の中で勝手にこっちの理想像を描いて、予想外の動きをすればすぐに興味を失う。 それは違う。 そんなのは『愛情』などではない。 ソレはただの『感情』だ。 一時の気の狂い。気の迷い。気違い。 なら、何故自分はロイの言葉を信じたのだろう。 「・・・なんで・・・?」 思わず呟いてしまった言葉は、正面のソファーに座っていたロイにも聞こえてしまったようだ。 「ん?なにが『なんで』なんだい?」 遠慮もクソも無く聞き返してくるのは、上に立つものだからか、それともそう言う性格だからか。 とりあえずロイは言いたいことはかなりの確立で口に出して聞いてくる。 根掘り葉掘り聞いてくるのはエドワードは好きではないが、ロイは『なんでもない』といえばすぐに引き下がる。 曰く、聞いてしまうだけで向こうが話したがっていないのなら無理に聞きたいとも思わない。だそうだ。 矛盾しているようで結構あっさりしているロイのこういう性格は、嫌いではない。 むしろ好むところだ。 だから、エドワードは思わずロイには答えてしまう。 「ん〜?なんでオレ、あんたのアプローチには応えたのかなって」 言えば、珍しくロイがポーカーフェイスを崩している。 いつも浮かべている笑みが消えていて、何となくエドワードはしてやったり、などと思ってしまった。 「だってオレってこう見えて結構モテるんだぜ? なのに、なんで大佐を選んだのかな〜って」 悪ふざけの延長線で、エドワードはニヤッと笑みを作ってロイを攻撃する。 が、ロイの崩れたポーカーフェイスはすぐに戻ってしまい、読んでいた本に栞を挟むとこちらのソファーに移動してきた。 「理由を知りたいかい?」 そう言いながら横に座ってきたロイに、今度はエドワードの方が驚いてしまう。 「え・・・あんたわかんの?」 自分でもわからない理由を、この男はそれさえも把握してしまっているというのか。 もちろん。 そう自信有り気に頷かれれば、エドワードで無くとも信じてしまうだろう。 「なに、なに・・・なんで?」 擦り寄るように聞いてくるエドワードを可愛らしく思いつつ、ロイは渋るようにソッポを向く。 「でもしかし・・・こういうものは自分で理解した方がいい気もするしなぁ・・・」 明らかにさっきの仕返しだが、ここで逆切れすればもっと教えてもらえる確立が低くなる。 ドッカンと怒りで吹っ飛びそうな意識を宥めつつ、エドワードは教えて。と改めてロイに向かい合う。 それでもその眉間に刻まれた皺にロイは苦笑しつつ、結局はエドワードに弱いロイは、エドワードを手招いて膝に乗せた。 最初はむずがるエドワードだが、こういうスキンシップは嫌いではないらしく、スポッとロイの膝に収まった。 その頭を自分の方に押して体重をかけさせ、自分もその背をソファーに預ける。 「それはね、時間の差だよ」 「・・・時間の、差?」 「そう」 眉を寄せて不思議がるエドワードに、ロイはさらに言葉を重ねていく。 「キミを想う時間、考える時間・・・残念ながら、一緒に居れる時間は少ないけれどね。 ・・・でもその分、長い間想っているから、イーブンかな」 「でも・・・時間って・・・」 「愛する時間が長いのなら、相手を知れる。そう言う努力が出来る。だから、きみとの距離が近付いてこれる」 「それは、一方的な考えじゃねェのか?」 もっともなエドワードの言葉に、ロイは素直に頷く。 「そう、それを自分だけが満足するように行ってしまっていったら、それはただの一方通行な感情。 近づくどころか、平行、もしかしたら離れてしまうかもしれないね」 ロイの言い方は一々理論的で、ときどき会話をしているのか議論をしているのかわからなくなるコトがある。 しかし、やはり自分よりも長く生きているということで、知って居ることの幅の考えることの違いもなかなかに面白い。 「だから、きみのことを理解したい。きみがちゃんと私を見てくれるように努力をする。・・・それから・・・」 「・・・それから・・・?」 津々に聞いてくるエドワードにそっと触れるだけのキスを送り、額をあわせて囁くようにロイは続ける。 「それから先は、キミ次第、だよ」 結局、想いに応えるかどうかはその当人次第だから。 可能性があるなら近付きたいし、傍にいたい。 自分の出来ることすべてをかけて、手に入れたいという想いを手に取って欲しい。 「私にとって幸いだったのは、きみが私のその想いにちゃんと応えてココに居てくれるということ」 そう言い、ロイはまたエドワードにキスを落とす。 額に、両頬に、鼻の先に、瞼に。 ・・・唇に、もう一度。 一々音を立てていくそれに羞恥を覚えながらも、嫌いではないキスをエドワードは甘受する。 「『想い』は違うがね。きみがきみたちの母君を愛しているように、私もまたエドワードを愛している。・・・そういうものに似ていると、私は思うよ」 フワリと笑うそれは、自分だけが見れるものだとわかったのは最近だ。 ホークアイ中尉たちに向ける笑顔とも女性たちに向ける造った笑顔とも違う。 ロイの、ロイと言う『人』のちゃんとした笑顔。 こういうところに気付けるのも、それが嬉しいと想うのも、エドワードがロイにのめりこんでいる証拠。 それは与えられるだけのものではない、互いに与え続けるモノ。 もう一度、もう一度と啄ばむようにロイがキスを落とすたびに、ゾクリとするものがエドワードの中に込み上げてくる。 「な・・・んか・・・」 少々息を上げつつ、キスの合間にエドワードが呟くと、それを耳に捕えたロイはやんわりとその行為をとめる。 「なん、か・・・変だ」 「変?」 突拍子も無いエドワードの言葉に、ロイはまたキョトンとしてしまう。 止められてしまった行為を催促するように、ロイに自ら擦りよりながら、エドワードは言葉を紡いでいく。 「・・・大佐が触るところが、いつもよりも敏感になる。 触れられてるだけなのに、そこが熱くなる気がする」 それは触ることだけに留まらなくて。 この眼も、鼻も、口も、耳も、肌も。・・・全てが。 ロイを見る時にだけ、妙に過敏になっていく。 まるで、自分が狂わされる。 媚薬のような、麻薬のような存在。 向こうも、そんなふうに自分のことを想ってくれているのだろうか? 互いにそうだから、惹かれあって、自分は結局大佐のものになったのだろうか。 「オレはオレのもの。だけど、ちょっとだけ、大佐にならちょっとだけオレをあげてもいいよ」 呟く言葉にロイは苦笑する。 「『少し』だけ?」 「少しだけ」 キッパリと言われ、さすがにロイは少しへこんでしまう。 「今はまだやることがあるから。ソレをなすまでは、少しだけ」 あんたもだろ? 言われてしまえば返す言葉は無い。 今はまだ互いに二番目の存在だから。 互いに互いの野望を成すまでは。 「だから、ソレが終わったら、『もう少し』」 クスクスと意地悪に笑うエドワードに、ロイは嘆息する。 エドワードとしてみればからかっているのだろうが、こちらから見れば誘っているように見えるこの上ない。 ・・・たまにはこちらの理性のことも考えて欲しいとたまに思う。 「そうだね。キミと私が野望を果たすまでは、まだこのままで」 その代わり、果たしたあとを覚悟しておきなさい? また耳元で囁かれた声にエドワードは赤面しつつ、否定も肯定もせずにロイの肩口に額を乗せた。 キミは麻薬。 きみは媚薬。 五感を、自分を狂わせる、甘美な存在。 自分で無い自分を魅せるもうひとつの感覚。 互いに互いを。 それは、依存の関係。 コメント 短い・・・SSの領域ッスね(苦笑) 最近短いのを(他で)書いているせいか長いのが書けません。 ・・・と言うか長いのを書く暇がありません(泣) ふっと頭に思い浮かんだ『五感』をテーマに今回は書いてみましたv ちなみに『Interdependence』とは『相互依存』との訳になります。 |