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cherish feeling 「Holy Light〜そっと〜世界照らすよ〜♪」 ヒカリは上機嫌で台所で何か作っていた。テイルモンの身長では何をやってるか見えないのでヒカリの服の端っこをくいっくいと 引っ張ってヒカリを呼んだ。 「ん?どうしたの?テイルモン」 「なにしてるんだ、ヒカリ?」 「ああ、これ?」 ヒカリが指で示すと、テイルモンからは視角で見えないが、多分それなのでコクリと頷いた。 「これはね、チョコ作ってるのよ」 「…ちょこ…?」 テイルモンはチビモンたちのようにあまり食べ物に執着しないので、あまり食べ物には知識がなかった。 『名前は知ってるがどんな味かはわからない』というやつだ。 よっぽど好奇心をむきだしにしたのだろう、長いしっぽが無意識のうちに左右に揺れていた。 ヒカリはそれを見つけると、クスリと小さく笑い、作りかけのまだ湯銭にかけているトロトロのチョコを指にすくい取ってテイルモンに舐めさせた。 「どぉ?」 「…甘い…v」 テイルモンも女の子(メス)。やっぱり甘いものが大好きなんだろう、その頬が緩んだ。だが、ふとした疑問に片眉をあげた。 「けど…なんでチョコなんて作っているんだ?」 「うん、それがね、チビモンたちに『バレンタインデーにはチョコをあげたりするのよ』って教えたら欲しい、って言うから」 「ばれん…?」 「バレンタインデ―。女の子がね、好きな男の子にチョコをあげる日なのよ。本当は2月14日なんだけどね」 「ふうん…?で、誰にあげるんだ?」 テイルモンの無邪気な質問にヒカリはちょっと頬を紅く染めた。 「ん…タケルくんよ。それに、せっかくだからお兄ちゃんにも。」 それに、テイルモンにもねvと、ヒカリはふにっとテイルモンの鼻をつついた。 「2人…3人もあげるのか?」 「本命はね。義理チョコではみんなにあげるよvもともとチビモンたちに頼まれたからだし」 「本命…?義理…?」 「本命っていうのは本当に『好き』な人。義理っていうのは…そうだね、『おしるし』みたいなものかな?」 「じゃあヒカリは3人も『本当に』好きな人がいるのか?」 「うん。でもみんな違う意味でよ。お兄ちゃんは『家族』で一番好き。テイルモンは『心の中』で一番好きv」 「じゃあタケルは?」 「えっ!?」 一番答えにくい質問を聞かれ、ヒカリはあせった。顔はさっきよりもまっかっかだ。しかし、ヒカリはテイルモンには隠し事をしたくなかったので、正直に答えることにした。 「そう…ね、『ドキドキする』一番…かな?」 「???よくわからない」 んん〜、とヒカリはどう言っていいかわからなくなってしまった。 「テイルモンはドキドキすること…したことないの?」 テイルモンからの詰問から逃れる為、ヒカリは逆に質問してみた。 「どきどき…?」 テイルモンは考えてみた。 ヒカリはもちろん大好きだけどドキドキとはなんか違う。ウィザーモンも…ちょっと違うと思う…。じゃあ…? そこでテイルモンの頭に浮かんできたのは… 「!!!」 「ど、どうしたの、テイルモン?」 いきなりぼん!っと顔色を変えたテイルモンにヒカリは正直驚いた。 「…誰か思いついたの?」 ヒカリはテイルモンを刺激しないように優しく聞いた。テイルモンは迷ったが正直にコクンと頷いた。 「誰か教えてくれる?」 「…モン……」 「え?」 「パタモン…」 「あら」 ヒカリはぱっと顔を笑顔にした。対してテイルモンは頬が紅くて怒っているような顔をしてた。 「テイルモン?」 「私はあいつなんか好きじゃない!」 テイルモンは自分の考えを否定するかのように頭をぶんぶん振った。ヒカリは驚いたが、何故?と優しく聞いてみた。 「だってだって!あいつはのろまだし私より全然弱いし!それに・・・それに!」 「それに…?」 テイルモンはそこまで言うと耳としっぽをシュンと垂れ下げて黙ってしまった。ヒカリは相変わらず優しい笑みをたたえていた。 「それに、あいつだって私のことキライに決まっている…」 「どうしてそう思うの?」 「私は…あいつに命令してばっかだし、それなのにいっつもくっついてるから…。…迷惑がられているに決まっている…っ」 ―…ヒカリは思い出していた。3年前の淡い想い出を。 ヒカリの初恋はタケルだった。もちろん、小学二年生の頃の自分にそんなキモチ理解出来るはずもなく、泣きたくなるような不安を覚えた。切なくもあった…でも、ほんわかと暖かく、嬉しくもあった。 結局、告白は兄(たち)がらみのタケルからだったが。 多分、今のテイルモンはそのときの自分と同じ心境だろう。 「ねぇテイルモン?」 ヒカリの言葉にテイルモンはふっと顔をあげた。ちょっと上を見上げれば優しい笑みをたたえたヒカリがいた。 「その『キモチ』はみんなに感じる?」 テイルモンはちょっと考えてから首を横に振った。 「じゃあ、パタモンだけ?」 テイルモンはまた迷った。 「…ヒカリにはちょっと感じる…」 「どんな感じ?」 テイルモンはそっと両手を自分の胸に当てた。その頬はほんのり朱に染まっている。 「ここがチクチクするの。それにバクバクいってる。…でも…」 「でも?」 「…ほんわか、あったかい…」 テイルモンはきゅっと自分を抱きしめるような格好になった。しばらくすると、不安そうに顔をあげ、ねぇ、と聞いてきた。 「なに?」 「これって、パタモンを『好き』ってことなのか?私、パタモンに『恋』してしまってるのか?」 その大きなくりくりの瞳は心配と不安にゆらゆら揺れていた。 「私には、わかんないな」 「でもヒカリはタケルに…!」 ヒカリは苦笑を浮かべて、テイルモンを抱き上げた。 「あのね、テイルモン。人の、人への『想い』の感じ方はね、みんな違うの。私は私の。タケルくんはタケルくんの。パタモンはパタモンの。 …テイルモンは、テイルモンの…」 「私の……」 テイルモンはきゅっとヒカリの胸に顔を埋めた。 「ねぇヒカリ…」 「なに?」 「私に、チョコの作り方、教えてくれるか?」 「テイルモン…」 「まだ、『恋』なのか、わからないけど…」 テイルモンの小さな身体が小刻みに震えていた。 「チョコ…あげてみたい…」 「うん…」 がんばって…とヒカリは呟くように言った。 今日は(チビモンたちが無理やりヒカリに頼んだ)バレンタインデ―。本当なら、女の子も男の子も心が騒ぐ日。 ガラガラガラ…。 「こんにちはー。ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」 「あっ♪ヒカリちゃ〜んv」 ヒカリがパソコン室に入っていくと、早速大輔が見つけた。 「あ、ヒカリちゃん!日直ご苦労様」 「うん、ありがとう、タケルくん」 あ、そうそう、とヒカリは持っていた大きな袋を探り始めた。 「はい、大輔くん」 「えっ!こ、これ…」 「バレンタインデ―のチョコ。市販のにちょっと手を加えただけので悪いんだけど…」 「ヒカリちゃんがくれるんならなんだってもらうよ〜vありがと〜vv」 ひゃっほー!!と大輔は上機嫌に飛び回った。 「はい、これは伊織くんの分」 「えっ!?ぼ、ぼくにもですか!?」 「あ、ごめんねっ。迷惑かな…?」 「い、いえ。あの…じつは、もらったことなかったので…」 「じゃあよかったv」 ヒカリはほっとした。と、下から呼ぶ声がした。 「なーなーヒカリー。おれのは〜?おれたちのは〜?」 無邪気に聞いてきたのはチビモンだ。 「ふふっ。ちゃーんとみんなの分もあるわよv」 はい、とヒカリはデジモンたちにもチョコを配っていった。 「ごめんねーヒカリちゃん。無理言っちゃって」 「いえ、私が好きでやってることですから」 「あれ?タケル、お前もらってねーのか?」 「うん、そうみたい」 タケルはなんでもなさそうに言った。大輔はにまっと笑って、 「やったーvやっぱりヒカリちゃんはタケルよりオレの方が好きなんだ〜v」 大輔は勝手にそう決めつけていた。そんな大輔に聞かれないようにヒカリはそっとタケルに耳打ちした。 「タケルくんのは帰りに渡すね」 「うん、ありがと。今年二つ目だね」 「ふふ…。そうだね」 「タケルとヒカリが顔を見合わせてにこっと笑っていると、今度はパタモンがタケルの頭の上に乗ってきてヒカリに聞いてきた。 「ねえねえヒカリ〜。ぼくのは〜?」 「パタモンも、帰りにねv」 「わーいっv」 パタモンは嬉しさのあまり部屋中を飛び回った。他のデジモンもてんやわんやの騒ぎだった。 「タケルくん…」 「なに?ヒカリちゃん?」 「ちょっとお願いがあるんだけど…」 「じゃーまた明日なー!」 「ばいばーい」 「ばいばい、大輔くーん」 大輔、京、伊織と別れたヒカリとタケルは近くの公園にいた。さて、とタケルはパタモンとテイルモンを呼んだ。 「なに?タケル?」 「ちょっとヒカリちゃんと話したい事があるんだ。…悪いけどテイルモンと一緒に少しはずしてくれるかい?」 「うん、いーよ。行こ、テイルモン」 「あ、ああ…」 「?」 パタモンとテイルモンの姿が見えなくなると、ヒカリはさっきの袋からみんなにあげたのとは違う包みに入ったチョコを取り出した。 「はい、タケルくん。…手作りだからおいしくないけど…」 「ううん。ありがと、ヒカリちゃん」 タケルが礼を述べると、ヒカリはううん、と首を横に振った。 「私こそありがとう」 「…?」 「パタモンとテイルモンのこと」 ああ、とタケルはニコっと笑った。 「いいよ、そんなに大変なことってわけじゃないし。…それに…」 「それに?」 「ヒカリちゃんの頼みだもの。できるだけ叶えてあげたいから」 そういってはにかむタケルの頬は夕日のせいだけじゃなく、染まっていた。 「うん…ありがと…」 そう言ったヒカリの頬も紅く染まっていた。 「さっきさぁ…」 「?」 「ヒカリちゃん、パソコン室で僕にだけくれなかったでしょ?正直…哀しかったんだ」 「タケルくん…」 「あ、ごめんねっ。困らせるようなこと言っちゃって…」 「ううん。…ねぇタケルくん…」 「なに?」 「ずっと、一緒にいよーね」 …ヒカリはタケルに甘えるように肩に頭を預けた。 「…うん」 タケルもそれに答えるようにヒカリのうすい肩に腕を回した。 「タケル、ヒカリとなに話してるんだろうね」 ねぇテイルモン。とパタモンはテイルモンにふった。 「さ、さあ…」 テイルモンはその視線から逃れるようにふいっと横を向いた。 「…ねぇテイルモン」 「な、なに?」 「今日なんか変だよ?どうしたの?気分でも悪い?」 「べっべつに平気よっ!」 「そ、そう?ならいいんだけど…」 テイルモンは自己嫌悪をおこしていた。 (パタモンは心配して言ってくれたのにあんな言い方して…。また印象悪くなっちゃった…) しう…とテイルモンの耳としっぽが垂れ下がった。 「…ねぇ、やっぱりどっか悪いんじゃないの?」 「そっそんなこと…!」 「だってテイルモン、なんかいつもみたいに話してくれないし、耳としっぽ垂れてるし…それに顔、紅いよ?」 ぴと、とパタモンは小さな手をテイルモンの額にあてた。その瞬間、沸騰したお湯のようにテイルモンの体温が上がった。 「触んないで!」 テイルモンはパシっとパタモンの手を振るいはらった。はっとパタモンを見ると、ボーゼンとした顔でテイルモンを見ていた。 (傷つけた…!) そう思った瞬間、テイルモンの大きな瞳からポロリと大きな涙が零れ落ちた。 「テ、テイルモン!?」 「…かないで……」 「え?」 「近づかないで!!」 テイルモンは大きな声で叫んでいた。 「テ、テイルモン!?どうしたの!?」 パタモンが近づこうとすると、テイルモンは攻撃態勢にはいった。 「テイルモ…」 「私に近づかないでっ」 「どうして!?どうして近づいちゃダメなの!?」 「っまえをっ!!」 「え?」 「お前を傷つけるから!!」 「…ぼくを?」 テイルモンはこくんと頷いた。 「別にぼく傷ついてないよ?」 イマイチよくわかっていないのかパタモンはのほほんな答えを返した。 「今傷ついてなくったってこれから傷つけてしまう!」 テイルモンのきつく閉じた眼からは次々に涙が零れ落ちていた。それを見てパタモンもだんだん事態が飲み込めてきた。 「いいよ」 「…え?」 「傷つけてもいいよ」 「な、なに言って…」 「ぼく、テイルモンになら傷つけられてもいいよ」 「パ…タモ…」 パタモンはテイルモンに近づいてぎゅっと抱きしめた。 「だってね、ぼくテイルモンのこと好きだもの」 「―っ!?」 「タケルがね、教えてくれたの。『大切にしたい』ってキモチはどんなカタチであろうと『好き』なんだって。 ぼくね、テイルモンより弱いし、泣き虫だけどね、テイルモンのこと、『大切に』したいの」 テイルモンの瞳からまた涙が一粒零れ落ちた。 「うん、私も…」 まだ『好き』ってキモチがどんなのか、これが『好き』ってキモチかはわからないけれど…。…多分…。 「私も、パタモンのこと、好きだよ」 しばらくパタモンとテイルモンはそのまま抱き合っていたが、テイルモンが,あっ、と持っていた袋をパタモンに渡した。 「…これ…?」 「あのね、ヒカリに教えてもらってチョコ…作ったの…。…で…」 「ぼくにくれるの…?」 テイルモンは下を向いてこくりと頷いた。 「ありがとっ!」 テイルモンはそおっと顔をあげた。パタモンは本当に嬉しそうに笑っていた。 「…ん…」 ―テイルモンの作ったチョコはお世辞にもおいしいと言えるものではなかった。…でも、パタモンには本当に嬉しくっておいしかった。 「あのね、タケルくん、私思うの」 「なに?」 「『好き』ってね、伝えることは確かに大切だけど…本当に大事なのはその意味を考えて、これからもずっと『好き』って気持ちを護ってくことだと思うの」 「うん、そうだね。…僕は…」 「え?」 「僕は、ずっと、ずー―――っとヒカリちゃんを『好き』でいるからね」 「…ん…」 小さきものたちの小さき恋。でも、その想いたちはきっと、誰にも負けず、誰にも劣らず育って行くだろう。この大空のように、大海のように。 ・・・きっと、ずっと…。 コメント デジ小説第4作目です。この2人(二匹?)のカップリングはグミチョコ(テリア×ロップ)の次に好きですv な、なにやらこっぱずかしいものになってしまいました…(汗) ……もう見れません…(赤) |