キミと居る為の事

キミの笑顔が好き。
・・・だから、悲しんでいる時は、傍に居たい・・・。

拓也はじっとうずくまっている。
突然現れた謎の島。
そこで対立する、ヒューマンとビーストの形を持つデジモンたち。
先程も、ディノヒューモンとグリズモンが偶然出遭ってしまい、戦い合っていた。
ベアモンやコテモン、ベビーデジモンたちを無視したその戦い。
耐え切れなくなり、拓也と輝二はアグニモンとガルムモンになり、その場を収めたのだ。
・・・それから・・・。
拓也はその場にうずくまってしまった。
泉たちが何度も声をかけたが、何も言わずにうずくまっている。
先程の事情が事情なので、泉たちは今、古代壁画の描かれている部屋に行っている。
だが、輝二は拓也をそのままにしておく事が出来ず、かと言って何も出来る訳ではないが、その場に居座った。
「・・・拓也・・・」
何度声をかけても拓也から返信は無い。
どうしよう、と輝二は思う。
泉ほどとは言わないが、せめて純平くらいに口が達者だったらよかったのに。
語彙を総動員しても、慰めの言葉も質問の言葉も思いつかない。
自分は無力だ。
そう、思わざるを得ない状況・・・。
「た」
「オレ」
拓也。と再度言葉をかけようとすると、それを遮るように拓也が言葉を発した。・・・いや、勝手に輝二が黙っただけなのだが。
「オレ、何にも出来なかった」
ようやくしゃべった声は、震えていた。
輝二は拓也との間隔を詰める。
「最初は、ヒューマンの方が可哀相だって思ってた。・・・いきなりビーストの奴等に襲われて・・・ビーストの奴等、ひでぇって思った」
それは輝二も同様だ。
ただ、輝二の場合はヒューマンとビーストが逆なのだが。
多分ソレは立場は違えど、泉や友樹、純平やボコモンネーモンも同じだろう。
「だけど・・・ベアモンとコテモンに逢って・・・ディノヒューモンとグリズモン争ってるの見て、ホントにヒューマンは正しいのかなって思った」
「・・・俺もだ」
いきなり現れ、無二を言わせずにディノヒューモンたちに襲い掛かってきた。
・・・ホントに、ビースト・・・ヒポグリフォモンの言う正義は正しいのだろうか?
「オレ、わっかんねぇ・・・」
ひっく。と嗚咽が聞こえた。
「形違ったって、同じデジモンだろ?どこに争う必要、有るんだよ・・・!」
「・・・だけど・・・」
言おうとして、輝二はやめる。本当に今、この言葉を拓也にかけていいのか判らなくなった。
「・・・なに?」
震えた声で、拓也は問う。
「言ってみろよ。何だよ」
促され、輝二は迷った末に、飲み込んだ言葉を口にした。
「・・・俺たちも、争ってたよな。って・・・」
ハッと拓也が顔を上げ、驚いた表情で輝二を見る。
何となく正視出来なくて、輝二は俯いた。
そんな輝二を咎めるでも無く、拓也は視線を正面に戻した。
「そ・・・だよな・・・」
理由なんて忘れた。
だが、それが原因で島が突然現れ、泉に二人のせいと言われたのは、記憶に新しい。
「・・・確かに、そうだ・・・」
ハハッと、拓也が乾いた笑いを浮かべる。
それは、拓也が落ち込んでいる時にやるクセだ。
拓也がまた話さなくなったので、輝二は迷った末に拓也の横まで行き、腰をおろした。
「・・・何かと何かが同じところで住まうには、絶対争いは必要なんだ」
良い方にも、悪い方にも。
拓也は正面を向いている。
その、まだ幼い頬を伝う涙を拭ってやると、拓也が輝二の方を向いた。
決して咎める視線ではなかったので、輝二は続ける。
「ただ独りの意見が総てを決めてしまうなら、それはとても重大な事だ。
だって、もしそれがとても悪い方向に言ったら、その総指揮者にしか責任が行かないだろう?・・・それは、辛すぎる・・・」
その通りだ。
自分たちも、お互いの意見の事で反発していた。
「・・・だけどオレ、輝二の事・・・いらないって思ったことは、無い・・・」
「もちろん俺もだ」
そうなんだよな。と、輝二は溜め息をつきながら呟く。
「ディノヒューモンとグリズモンたちに足りないのは、そこなんだよな・・・」
ヒューマンとビーストは『共存出来ない』のでない。『共存を拒んでいる』のだ。
凪いだ風が、二人の間を通り抜ける。
「・・・オレは・・・」
と、唐突に拓也がしゃべりだした。
輝二が拓也の方を向こうとすると、拓也が輝二に凭れかかってきた。
「たっ!拓也・・・!!」
輝二は一気に自分の顔に血が集まるのがよくわかった。
何せ、輝二から拓也に抱きついたりする事はよくあるのだが、拓也からこうして自分の方に寄ってきてくれたのは、初めてなのである。
自分からするのには全然照れなんて感じないのに。
そう思うと、少しおかしかった。
「オレは、だけど・・・輝二とケンカしても、一緒に居たいぜ?」
鼻血出るかも。と輝二は本当に心配した。
「もちろん、俺もだ」
何とか平然を装っていたが、拓也がこちらを見上げた時に、それは壊れた。
ぷっと言う噴出し恩の後に、拓也の遠慮の無い笑い声が響いた。
顔の明る味をそのままに、輝二はムスっとした表情を作る。
さすがにこれは恥ずかしすぎる。
「な、なにお前・・・っ。自分ではしょっちゅう抱きついてくるくせに、オレからやると照れんのかよ」
「・・・しかた、ないだろ・・・」
確かに仕方ないかもしれない。
好きな子に抱きつかれて、何にもならないと言う方がおかしいのだ。
その上、『一緒に居たい』との殺し文句付きだ。
拓也はまだ笑っている。が、どうする事も出来なくて、ブスッと顔をしかめる。
その内拓也は笑い声をしまい、更に輝二に凭れかかってきた。
・・・これで機嫌が直ってしまうから恨めしい。
「うん・・・でも、こうしてると、安心するな」
そういえば、拓也の目はまだ紅いが、すっかり泣き顔は消え去ってしまっている。
輝二は改めて、拓也の肩に腕を回し、落ちないように支えてやる。
「・・・これからまた、たくさんのデジモンが死ぬな」
デジタマに戻るデジモンたちに『死』というのがふさわしいとは思えないが、そうとしか表現できない。
だがそれも、間違ってはいないだろう。
「・・・俺は、ビーストの方に戻る」
拓也から、非難の篭った呼び声がかかる。
「違う。戦いを煽りたいんじゃないんだ。・・・ただ、もう一回、グリズモンを説得してみる」
「・・・そうだな・・・・・・あれじゃ」
ベアモンとコテモンが可哀相すぎる。
あんなにあんなに。二人は仲良しなのに。
大人のツマラナイ意地に流されてしまい、いつも犠牲になるのは子供なのに。
「じゃ、オレはディノヒューモンの方をあたってみるよ」
先程ディノヒューモンから、ヒューマンの方に加勢してくれないかと要求を受けた。
これなら、容易くヒューマンの方に入れるだろう。
・・・そうしたら、また拓也と離れ離れだ。
もの哀しくて、何となく、キスをしたくなる。
「・・・拓也・・・」
拓也の顔を上げさせ、自分の顔を近づけていく。
抵抗が無かったので、そのまま近づけ、あと1センチ・・・と言うところで・・・。
ペチ。
拓也からでこピンが降ってきた。
「・・・で、何でそう言う思考に結びつくんだ?」
やれやれ。と、拓也は輝二から離れる。
・・・やっぱりダメか。と輝二が項垂れると、拓也から更に言葉がふってきた。
「そういうのは、事が終わった後だろ?」
え?と輝二が顔を上げると、満面の笑みの拓也が居た。
『事が終わったら』
その後には、この二人の間にも、何かが起こるのだろうか?



☆END☆


コメント

ネタばれ小説ですみません(土下座)
あんまり具体的には書いてないので・・・大丈夫かなぁとは思うんですが(汗)
今回はちょっと輝二救済小説ーみたいな(笑)
甘えん坊な拓也を書いてみましたv(笑)