ダキシメテ。テバナサナイデ。

手放すコトは、何度もしてきた。
別にそれがイタイとか思ったこともないし、何の感情も抱かなかった。

強く感じたのは、レイがBBAを出て行ったとき。
離れないでと思ったのは、レイが日本に一緒に来なかったとき。
「カイ?」
ボ〜っと窓辺にいると、レイが声をかけてきた。
今は旅の途中。
タカオの、リベンジを果たす旅。
「ん?」
素直に反応を返す。
レイは風呂から上がったばかりで、ホコホコと蒸気していた。
半袖半ズボンから見える白い肌に、カイは不覚にもドキリとした。
それから意識を離す為に、カイは木ノ宮たちは?と聞く。
「まだ風呂に入ってるよ。風呂がすっごくでっかくってさ。泳いだり遊んでる」
レイも、カイと並んで窓辺へとよってくる。
少し冷たい風は、風呂上りの肌にはとても心地よい。
横顔を盗み見るつもりが、何故か目の前にウナジがあり、細い首筋に釘付けになってしまう。
レイは、実際女みたいだ。
カイは何度も疑ったことがある(進行形で)
だが、身体を繋げるたびに同姓だとわかる。
別にそれがどうとかはないが。
「・・・俺は、『レイ』が好きだから」
「え?」
カイのポツリと漏らした言葉は、『聞こえるだけ』であって伝わりはしなかった。
しかし、それはカイにとっては幸い。
なんでもない、と片付けると、カイはソファーへと横になる。
「え?カイそこで寝るのか?」
意外そうにレイが言う。
カイにも伝わり、上半身を起こす。
「そうだが・・・何故だ?」
レイは言おうかどうしようか迷っているようだったが、しばらくすると、少し頬を染めながら
「あのベッドで、カイと一緒に寝たかったから」
あまりに直球な言葉に、カイは恥ずかしいのも忘れて呆然としてしまう。
しばらくして、レイが不安そうにこちらをみているのがわかった。
カイの紡ぐ言葉を、必死に待っている。
『言葉をちょうだい』
それは、カイとレイの秘密で約束。
カイはしばらく無言で言葉を考えていた。
「・・・こんなみんなで寝るところで、お前とは寝れない。襲ってもいいって言うのなら話は別だが」
冗談も(多分)混じった言葉を伝えながら、カイはソッポを向く。
レイはポカンとしていたが、すぐに破顔して、カイに飛びついた。

朱雀が負けた。
それは、チーム全体に震撼を与えた。
それでもレイは先程普通に接してくれた。
多分もクソも、自分を気遣ってくれたのだろう。
しかし。やはりショックらしくて。
夜中の会話は、少なからずカイの闘志に火をつけた。

それから更に深夜。
チッチッチッチッチッチッチッチ・・・古い時計が永延と時を刻む。
いつもなら気にならないその音も、今はうるさいくらいに耳に響く。
少し歩いて来よう。
カイはそう思い、静かに毛布を退けて立ち上がった。
何気にレイの寝ているはずの簡易ベッドを見てみる。
だが、そこにはレイの姿は無かった。
「!?」
いつの間に。
カイは気配に聡い。
しかもこんなに近くに居るのに気付かないはずがない。
予定変更。
レイを探しに。
片手には、薄い布を持って、カイは静かにドアを開けた。

カイの家も広い。
しかし、ここもかなりの面積をもっている。
慣れと勘と記憶力でなんとか外へと通じる大扉を発見する。
キィ。
木と金属のこすれあう、あの高い音を立ててドアが開いた。
暗闇の中に、月の光に照らされて、樹木たちが輪郭だけを誇示している。
足元に気をつけながら、周りの気配をたどる。
手入れの行き届きすぎない庭は、自然の形も残しており、絶妙なバランスを保っている。
ここら辺は、センスがあるなとカイは珍しく他人を褒める。
と、樹が揺れた。
「!?」
カイは意識をそちらに集中させる。
まだ、遠くにある樹だ。
あきらかに揺れ方がおかしい。
あの、風に揺られて奏でるような音ではなく、『揺らされている』ような音。
その中から、澄んだ声が聞こえてくる。
まだ、ハーモニーしか聞こえないソレ。
気になって、カイは気配を殺してそこへと歩みよる。
徐々に、はっきりとした声が聞こえる。
聞きなれすぎた声。
それでも、ずっと聞いていたい声。
レイの、歌声。
中国語で唄っているのだろう。歌詞がわからない。
もっと、近づく。
レイは高い樹の枝に腰をおろし、脚をプラプラ揺らしながら唄っている。
ただし、いつもと違うのは、髪。
いつものようにひとつに纏めてはおらず、髪を風に好きなだけもてあそばせている。
寝巻きのままで着たため、やはり艶かしいとしか見えない素足が惜しげもなく現れている。
昼でもないのに。太陽があるわけでもないのに。
木漏れ日が、おちた。
太陽よりも優しく、妖しい、蒼白く黄色い月は、何故かレイだけを照らしている。 ツレテカエラレソウデ・・・。
「・・・レイ!」
カイはたまらずレイを呼んだ。
途端、歌が中断される。
レイは下・・・カイを見つけると、驚いた顔をしたあと、軽い音をたてて地面に着地した。
「カイ!?どうしたんだよ?」
「こっちの質問だ。レイ、ここで何やってた?」
カイの質問に、レイはキョトンとしている。
「何って・・・歌、唄ってたんだけど・・・?」
やっていたことをそのまま口にすると、今度はカイから重っ苦しいため息が聞こえた。
「なんだよ!」
さすがにその態度にはカチンと来たのか、レイはプクッと頬を膨らませる。
説明するのもめんどくさいので、カイはそれより。と話をそらした。
「お前いつ部屋を抜け出した?俺は全然気付かなかったぞ」
カイの質問に、レイはああ。と納得したように頷いた後、少し寂しげな表情をみせた。
「オレさ、ほら。昔っからオキテの中で育ってきたろ?
気配を消したりとかそういうの、慣れちゃってさ」
苦笑というよりは、自否的な笑みだった。
「いくらカイが敏感でも、オレ一応プロだしね」
レイのジョークのような言葉さえも、悲痛に聞こえてしまう。
でも、レイは同情とかそんなの望んでない。
彼が望むのは、言葉。
「それより」
今度は逆にレイがカイに質問する。
「カイは平気か?・・・その・・・」
「・・・・・・ああ・・・」
カイは、渋い顔をつくる。
実際、負ける気は無かった。
勝機はあったし、負けはしない戦いだった。
「・・・強い?」
レイの言葉に、カイは素直に頷く。
「でも、だからこそ、燃えるだろう?」
カイはふっと息を漏らすように笑った。
「・・・ああ・・・」
そこで、沈黙。
「・・・・・・レイ・・・」
先に口を開いたのは、意外にもカイだった。
ん?と聞き返すと、カイはヒタとレイを見つめている。
「お前は、白虎族に帰るのか?」
いきなりの質問に、レイはついていけなかった。
「・・・ず、随分唐突だなぁ」
苦笑しながらも、うん。と頷く。
「世界を見て、今、白虎族にないものを見つけるのが、今のオレの旅の目的だから」
予想通り、といえばその通りの言葉に、カイは唇をかみ締める。
「・・・俺から、離れるのか?」
「離れないよ」
即答の言葉に、カイは俯いていた顔をあげた。
「離れないよ。だって、村の事とか抜かして、オレにとって居て欲しいのは、カイだから」
だから、離れない。
恐いくらいにキレイに笑うレイは、ホントに美しいとしか言いようのない。
「・・・そんな甘々なこと、通じると思うのか?」
「ん?なーんとかなるだろ?」
レイは、頬を蒸気させながら、嬉しそうに笑う。
「今のこの位置が、すごく心地いいから。後のコトは後で考えるよ」
カイは、たまらずレイを抱きしめた。
「・・・・・・俺は、絶対離さないからな・・・」
うめくような言葉に、レイはカイの服に顔を埋めながらまた微笑んだ。
「・・・やって見せてよ」

離さないし、逃がさない。
手放さないし、行かせない。
傍に居てくれるなら、ずっとここに。
ここに居て。ここに居て。



☆END☆


コメント

一言。眠い(死)
物語考えないで書くとここまで駄作が出来るんですねv(撲殺)
つ、次がんばりまぃーっす・・・。