離れても、ちょうどいい距離。

暖かい色が好き。
夕日の、橙色が好き。
僕の、勇気の色だから。

「ヤマトー」
毎週おきまりになった石田宅へのお泊まり会。
例にもれず今週もやってきた太一は、夕食をご馳走になって、ただいまリビングでグタグタくつろぎ中。
太一がソファーから寝そべって言ったその言葉は、どうやら本人には届かないらしい。
まぁ距離も離れているし、向こうは水を使っているので当たり前といったら当たり前なのだが。
それを理解して太一は、ヤマトが片付けを終えてこちらに来るのをまった。
外で待つのは嫌いだけど、中でこうやってゆったり待つのは好きだ。
だって、他にすることがあるから。
外で相手のことを思いながら待つのなんて限界がある。
少し遅れた。
まぁ自分もいつも遅れてるししょうがない。
かなり遅れた。
ムカツク。
すごく遅れた。
怒りを通り越して心配になってくる。
まぁざっとこんなもの。
相手のコトを思うのは当然のこと。
だって好きだもん。
でも、たまには他の事を考えたい。
人間だしね。浮気もしょうがない。
でも、中で待つのはいろいろ出来る。
たとえば、匂い。
ほら、こうやってクッションに顔を埋めればヤマトの匂いがする。
部屋に入ったとたんに、その匂いで安心感に包まれる。
多分、それは向こうも同じ。
たとえば、音。
皿や食器を洗う、陶器の擦れる音。
低い、綺麗な声の奏でる鼻歌。
会わなければ、こうやって二人きりにならなければ出来ない自分だけの特権で。
こんなこと、絶対外で待ってる時は出来ない。
だから、中で待つのは好き。
「太一」
そんなことを考えて幸せに包まれていると、いつのまにかヤマトが太一を見下ろしていた。
「ヤマト」
逆に、太一がヤマトを呼び返す。
「ん?なんだ」
すぐに答えてくれるその声が嬉しくて。
太一はクスリと笑ってから身体を起こして、ヤマトを見上げた。
「な。ヤマトは何色が好きだ?」
ヤマトは、ンー。と天井を見上げながら数秒考えると、青。と答えた。
「なんで?」
「友情の色だから。あと、一番落ち着いてる色だろ」
「バーカ」
最初の答えは予想済み。後の答えはポコリと軽く殴ってやった。
そのまま、少しじゃれあいにもつれ込む。
「それにさ」
太一の弱い横っ腹をお返しとばかりにくすぐるヤマトが、急に真面目に太一の眼を見た。
「お前と、反対色だろう?」
太一はビックリした顔を隠せない。
「・・・その答えは、予想してなかった・・・」
太一が正直に言うと、ヤマトは勝ち誇ったような顔になる。
ソファーに、太一が仰向けで、それにかぶさるようにヤマトが一緒に寝転がる。
両手で太一の両頬にわんやりとオリを作る。
そのまま顔を接近させ、額をくっつけた。
ヤマトの蒼い瞳が、視界いっぱいにひろがる。
その横から、金髪がさらさらと肌を滑って。
色は違っても、多分ヤマトも自分と同じ感じでいるだろう。
「どうせ同色になれないなら、一番離れてた方がいいよ。
意見が合わないのは互いに違う意見をぶつけ合える証拠だし、交われないなら離れられないしな。
・・・不安定な幸せをおくるより、俺はぶつかり合える毎日がいいよ」
それを実感したのは3年前。
絶対、こいつとはウマが合わない。
自分自身はもちろん、仲間にまでそう思われるから自分たちの対極の位置は本当に180度違うもので。
でも、いまこうして居れるのは、それのおかげ。
「・・・オレは、ヤマトが生まれてきてくれただけで幸せだよ」
「ホントに?」
ヤマトが聞き返すと、太一は堪えきれないように笑い始めた。
そして、ヤマトの首に腕を回す。
「嘘。こうしてヤマトと出会えて、冒険できて、こうして一緒に居れてホントに嬉しい。
こうしていれれば、オレはホントに幸せ!」
太一が笑うと、気持ちのいい夏がきたみたいだ。
「オレは、太一とこうしてキスできて幸せ」
「ホントに?」
今度は太一がそっくりヤマトに聞き返す。
「嘘。ホントはもっとヤりたい。太一の、スベテを見たい」
ヤマトの眼が、発情したオスの眼になった。
「見たけりゃ見ればいいじゃん。でも、オレだって必死に抵抗するからな」
意味も無いやりあいが始まる。
ホントに、こうしてじゃれあえるのはあの冒険のおかげ。
そしてもって生まれた、この、色・・・『感情』のおかげ!

綺麗な色が好き。
大空の、蒼色が好き。
キミの、友情の色だから。



☆END☆


コメント

ひっさしぶりに更新(笑)
いかがなもんでしょ、こんなヤマ太v