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Orange Noel 暗闇よりは、陽を。 キミが生まれてきてくれた日に、オレンジ色の光を。 アレンにとって、12月25日は、誕生日と言うよりも世間通りクリスマス、と言う印象の方が強い。 万年貧乏のマナとアレンが暮らしていくには、そういう行事の日には、特に稼いでおかなくてはいけない。 もちろん、そのあとでちゃんとマナはお祝いをしてくれたが、それでもアレンにはあまり誕生日と言う実感はなかった。 元々、自分の本当の誕生日すら知らないのだ。 それはクロスとの修行中もそうだったし、これからもその『実感』は沸かないものだと思っていた。 多国民が集まる黒の教団では、それでも下のバチカンがキリスト教に属していると言うこともあり、教団内でもクリスマスは行われていた。 もちろん、クリスマスと言うのは名目で、ただの馬鹿騒ぎと言えばそうなのだが。 だが、今年は少し違っていた。 最近入団した幼いエクソシストのアレンは、その聖なる日である今日が誕生日だと言う。 もちろん、直接本人よりの情報ではなく、科学班もといコムイの情報だが。 という訳で朝からアレンはプレゼントの嵐にあっていた。 部屋から出て、食堂に行けば、毎日アレンが食べているご飯の量よりも大量のプレゼントの山が隣の席に出来ていた。 それらをラビに手伝ってもらい、部屋まで運んでもらった。 「ひゃー。すっげぇなぁアレン」 どさりとプレゼントの上にプレゼントを重ね、ようやく一息ついたラビがベッドへ腰掛けた。 アレンも同じように息を吐くと、ラビの隣に腰を降ろした。 「僕もまさかこんなにもらえるとは思ってませんでした。 リナリーとコムイさんが欲しいものある?って聞いてきたんで、くれるんだなぁとは思ってましたが」 「アレンは人気者さー」 言うと、照れつつも嬉しそうに、アレンはにっこりと笑顔になった。 そんなアレンの笑顔を可愛く思いつつ、ごそごそとポケットに手を突っ込み、包みをアレンに差し出した。 笑顔からその包みに視線を落とし、きょとんとしているアレンの顔が、小動物のようで本当に可愛らしい。 「オレからのプレゼントv」 はい。と、まだキョトンとしているアレンの手を取り、プレゼントを乗せる。 「あっ」 ありがとうございますっ!と、涙目で礼を言い、ぎゅうとラビに抱きついた。 可愛らしい年下のエクソシスト。 その小さく、華奢な身体を抱き返してやりつつ、ラビは心の中で (こんなとこユウに見られたら命がねェな〜・・・) と、嬉しいようなハラハラするような、微妙な心中だった。 □■□ 教団内がアレンを含め浮かれる数日前、神田はイライラしていた。 「ちっ」 嫌味かあの巻き毛はッ、と、念で人が殺せるのなら(もう数十回は)コムイを殺していただろう。 よりにもよって、アレンの誕生日前に任務に借り出されてしまった。 仕事だ任務だとは言いつつも、やはりイライラするのは仕方ないのだ。 現在停車している駅から汽車を乗り換えるのだが、実はまだプレゼントすら買ってはいない。 丁度買おうと街に下りようと廊下を渡っている最中にリナリーに会ってしまい、そのままコムイのラボへと向かったためだ。 乗り換えの汽車の出発まで一時間ほどかかるとのことなので、なんとかその間に買ってしまおうと、神田は街をうろうろしているのだ。 今回神田が任務に借り出され、現在汽車待ちをしているのは、ドイツはバルド海に面したキール中央駅。 現在は冬という事もあり、雪の影響で汽車の遅れもかなりのもので、時間に几帳面と言うか神経質な日本人の神田からしてみれば、苛々を増長させる以外の何でもない。 神田がうっかり自分の誕生日をないがしろにし、アレンを哀しませてしまったので、アレンの誕生日はちゃんと祝ってやろうと思っていたのに。 白い息を吐きつつ、神田はあたりを見回す。 寒いと言っても、こういうところでは出店も多い。 気軽に立ち寄り、売買を促す為だ。 とりあえず近くで暖かいお茶を買い(緑茶でないのが残念なところだが)そのまま手を暖めるようにして持ちつつ、当たりをキョロキョロと見る。 食べ物がいいかもしれないが、どうせならば何かかたちに残るものをあげたい。 だが、どうせあのアレンのことだ。 誕生日になれば、名前の知らぬものからも誕生日兼クリスマスプレゼントをもらっているだろう。 腹立たしいことに。 ちっ、と、もう一度舌打ちをし、ふとある店が目に付いた。 歩みを止め、その店に近寄る。 店と言っても、ちゃんとしたレンガ造りのような家・・・店ではなく、雪避けのテントのような出店だが。 「おやお兄ちゃん。いらっしゃい」 白い息に鼻を赤くさせた老人が、神田に気付いた。 「・・・これは・・・」 ちらりと老人を見た後、並べられているものを指差した。 「ああ、これは琥珀ですよ」 「・・・琥珀・・・」 「ええ。ほら、ここはバルド海沿岸が近いでしょう?ここは琥珀が良く取れましてね。ちょっとした名物になってるんですよ」 老人の話しにへぇ、と相槌を打ち、神田はその一つを手に取った。 「中には言ってるのは、虫や木の葉ですよ。何千万年も前に生きてそこにあったものが、樹木の樹脂で内包され、化石化したものなんですよ。まったく、不思議なものですねェ」 よほど琥珀が好きなのか、それとも話し相手が居て嬉しいのか。 老人は目尻を緩ませて話し始めた。 神田はその手に持っていたものを置くと、きょろきょろと商品を見始めた。 「・・・・・・」 そして、適当なものを手にとった。 「これを貰う」 「はい、ありがとうございます」 そのシワシワの手で大切に琥珀を受け取ると、老人は神田に背を向け、簡単に包み始めた。 それから、代金を受け取り神田に渡すと、またにっこりと笑顔を作った。 「プレゼントに琥珀を選んでいただけて、本当に幸せです。 ありがとうございました」 そう言い、老人は深々と神田に礼をした。 「・・・礼を言う」 神田は何となく照れ、赤くなってしまった頬を見られないようにすぐに踵を返した。 何故か、あの白い子の笑顔を思い出してしまって。 □■□ 「あの」 科学班のラボにアレンが顔を出したのは、クリスマスの日、要するに誕生日当日のお昼過ぎだった。 「あれーアレンくんだー」 やほーと、アレンに気付いたコムイの頬はげっそりと削げてしまっている。 今日の夜に行われるクリスマスパーティに備え、出来るだけ仕事を片付けてしまおうと(リーバーたちに泣きつかれ)必死なのだ。 身体とパーティとどっちが大事なんだろうと本気でアレンは考えつつも、てててと近付いた。 「あの・・・あの、神田は・・・」 神田との関係があらかたの教団内の人に知られてしまっているとは言え、やはり自分の口から神田の事を聞くのは気恥ずかしい。 ふわりと頬を染めたアレンは殺人的に可愛らしく、コムイは思わず抱きしめようとしてしまうが、そうすると後で神田にばれた時にボコり決定なので、頭を撫でるだけに留めておいた。 「神田くんなら連絡があったよ。今日、戻るってさ」 ぎりぎりだけどよかったねぇと言われ、アレンは恥ずかしくも嬉しいので、えへへとコムイに笑いかけた。 あまりに自分の誕生日に無神経な神田だったので、一緒に祝うのは無理かも、とアレンは思っていた。 自分から『誕生日を祝って欲しい』なんて、アレンには言えない言葉なので、半ば諦めていた時に神田に貰った言葉。 『お前、誕生日いつなんだよ』 あの時の神田は、いつもの通りにしていたが、頬がかすかに赤かった。 普段神田が言う言葉ではない、と言うことは自分でもわかっていたのだろう、照れくさそうに。 ラボを出たアレンは、今日には帰って来るだろう神田の事を想い、ふふ、ともう一度ふわりと笑った。 そして、ちゃんと神田が帰って来たときに見つけてもらえるようにと、神田の部屋へと向かった。 のだが。 「・・・・・・」 プレゼント攻撃は今だ続いていた。 もちろん、プレゼントをもらえるのは嬉しい。 くれる人も、気持ちを篭めてくれているので、それだけで嬉しいのだが。 さすがにぐったりとしてしまう。 コムイのラボを出た時にまだ高く昇っていた太陽も、もう西に傾きかけている。 廊下の窓から見える、紺色に染まってしまいそうな空を見上げる。 「・・・かんだ・・・」 へにょっと、眉がハの字になってしまう。 今日は、今日こそは暇でいたかったのに。 溜め息が出るのも仕方が無い。 と、 コツコツコツと、ブーツの音がした。 だが、別にここではブーツを履いているものは珍しくないので、アレンはそのまましゅんとしたまま窓に額を預ける。 コツコツコツコツコツ 「ぅ、わぁっ!」 だが、その近付いてきた人物が、いきなりアレンの手を取りそのまま歩いていくので、突然のことに驚きつつ転げないようにと足を進ませてしまう。 その拍子に、持っていたプレゼントを全て床に落としてしまった。 拾わなければと思いつつ、何とか体勢を立て直しその人物を見上げると・・・・・・ 「か・・・っ」 サラサラの黒髪に、だが少しくたびれた団服。 きゅうと握りしめている手は、やはり外を歩いてきたからなのだろうとても冷たかった。 「・・・探したじゃねぇか、このバカ」 相変わらず、顔に似合わない言葉づかい。 「・・・すみませんでした・・」 けれど自分を探してくれたことが嬉しくて。 握られている手と反対の手で、アレンは神田の腕を抱きしめた。 □■□ 結局連れて行かれた場所は、アレンが向かおうとしていた神田の部屋だった。 扉を閉めた途端、手を離され、神田は荒々しく団服を脱ぎ、椅子に放り投げた。 そして、定位置であるベッドへと腰をかけ、ようやく落ち着いたのだろう、息を長く吐いた。 一方アレンは、こうして誕生日を誕生日として意識することが少なく、またこうやって恋人と過ごすなどしたことがないので、いきなりのことに緊張しまくっている。 未だ先程の場所から一歩も動けず、硬直してしまっている。 「・・・おい?」 そんなアレンに眉を顰めつつ、神田はポンポンと手でベッドを叩いた。 隣りに座れ、と言うことだろう。 普段何気なしに神田の隣りにべったりとくっついているのに、意識してしまうとどうしても恥ずかしくて行動が出来ない。 「おい」 だが、動かないアレンに、先に切れるのが早い神田が動いた。 「ふわっ」 ベッドから再び立った神田が、アレンの腕を引っ張り、そのままベッドへと放り投げたのだ。 もちろん、それは軽い力だったので、アレンはちゃんと受け身を取れたが。 アレンがベッドに座った(座らされた)のを確認し、神田も再び横に座った。 アレンは倒れた身体を起こし、チラリと神田を見やる。 「・・・あ、あの、あの・・・神田・・・」 呼ぶと、神田もアレンを横目で見て、ズボンのポケットから小さな包みを取り出し、アレンの手を引っ掴むと強制的にそれを渡した。 きょとんとするアレン。 「プレゼントだ」 途端に、アレンの手を離し、横を向いてしまった。 だが良く見れば、その耳が紅くうっすらと染まっている。 自分だけではないのだ。 どきどきしているのは。 そう思うととても嬉しくて、アレンはぎゅうと神田を抱きしめた。 包みを解くと、それは五センチほどの琥珀の置き物だった。 「わぁ」 宝石に特に興味の無いアレンも、その夕日を浴びてキラキラと光を弾くその石を、綺麗と素直に思う。 「・・・あれ?」 と、アレンは中に何か黒いモノが入っているのに気付く。 良く見ると、それは何かの葉っぱのようだった。 「・・・琥珀は・・・」 そこで、神田がポツリと落とすように呟いた。 「琥珀は、樹木の樹脂が化石化する前にいろいろ内包することがあるんだってよ。 ・・・だから、それは、・・・――――――」 はぁ、と神田が溜め息をつく。 いや、気を落ち着かせる為の深呼吸だろうか。 「・・・モミの木の葉、だ」 言われ、もう一度アレンは琥珀を覗き込む。 それはもうほとんど緑色を失ってしまっているが、確かにモミの葉の欠片を含んでいるのがわかる。 「・・・神田・・・」 きゅうとアレンはもう一度神田に抱きつく。 「嬉しい・・・すっごくすっごく嬉しいです・・・ッ」 「・・・そうかよ・・・」 涙もろいアレンのことだ、鼻声になっている時点でその目に涙を浮かべて居る事など容易に想像できる。 「太陽の光を閉じ込めたみたいです」 キラキラと夕日を弾く琥珀。 神田は出来るだけ、そうあって欲しいと思うのだ、アレンに。 闇に抱かれるよりは、陽に当たってぬくぬくと。 アレンはそれを望まぬだろうが、苦労など少ない方が良いに決まっている。 エクソシストである以上、それは叶わぬことだが。 それでも、 それでも。 だってアレンは、神田が唯一守りたいと思ったヒトなのだから。 「神田」 振り向く前にアレンに顔をつかまれ、強制的にそちらを向かされた。 それから、文句を言う前に唇に当たる暖かい感触。 「神田と今日を迎えられて、僕はとっても幸せ者です」 衒いの無いその言葉に、神田の方が照れてしまう。 はぁ、と息を吐いた後、アレンの後頭部を掴み、先程よりもずっと長く深く、キスをする。 突然のことにアレンは驚いていたが、逆らう間も与えずに口内を侵していく。 歯列をなぞり、即座にアレンの舌をからめとる。 今だ上手く息の仕方が出来ないアレンのために、時々口を離して空気を与えてやりつつ、普段よりも長く施していく。 「ん、は・・・ッ」 くちゅ、と水音が耳に響く。 それが恥ずかしくて、でも神田がしてくれてると思うと嬉しくて。 結局アレンは、神田にすがり付いてしまうのだ。 「えと・・・」 そのまま神田と抱き合ってる状態で、アレンはもじもじと神田に切り出した。 「あの、あのですね、神田・・・」 「ンだよ・・・」 くいくいと神田のシャツをアレンが引っ張るので、神田は仕方なくアレンから身体を離した。 「あのですね、神田・・・ホントは僕、神田と今日過ごしたかったんですけど・・・えと、あの、ですね・・・」 もたもたと肝心な事を言わないアレンに、またしても神田が焦れた。 「どうせ、夜からのパーティに誘われて断りきれなかったのだろ」 「!!!」 言うと、アレンがビクリと肩を揺らし、次いで、どうしてわかったの?!と言う顔で神田を見上げた。 「・・・テメェの性格からして、断れるわけねェだろ」 はぁ、と溜め息をつく。 残念だか仕方が無い。 これくらいは想定内だ。 「ご、ごめんなさい!ホントに! あ、でも神田が嫌だって言うなら断っても・・・ンんっ」 あわあわと謝罪を口にするアレンの唇をもう一度塞ぎ、ちゅ、と音を立てて離した。 「・・・仕方ねェだろ、約束したもんは。約束したからには、守れ」 「・・・・・・でも・・・」 「ソレが嫌なら最初から約束なんてするな」 痛いところを突いてくる神田に、アレンはますますシュンとしてしまう。 少々言い過ぎたかと神田も、そんなアレンを見て、う。と顎を引いてしまう。 「・・・どうせお前だって、料理嫌ってくらい食うんだろうが。 なら、楽しんでくればいいっつってんだ」 ぽそぽそと付け足すように言うと、アレンはまだ申し訳無さそうな顔をしていたが、それでも、はい。と頷いた。 「でも、神田も一緒がいいです」 アレンも次いでとばかりに付け加える。 どうも神田の言いっぷりが、行かないように聞こえたから。 「・・・あまり気が進まん」 「・・・一緒がいいです・・・」 神田ぁとアレンがもう一度呼ぶ。 ・・・・・・その声に弱いと言うのに・・・。 「ああもう!わかったよ!行きゃいいんだろ!行きゃ!」 やけっぱちのように叫べば、アレンは嬉しそうに、微笑んだ。 「・・・ヘンな奴」 嫌がったり、渋ったり。 自分でもひねくれたやつだと思うのに、アレンはこうして嬉しそうに笑うのだ。 本当にとても嬉しそうに。 その笑顔を見るたびに、必要とされていると思う。 その笑顔を、消したくない。 神田はアレンを抱きしめ、道連れて横になった。 「・・・パーティは夜からだろ?・・・だったら、俺は少し寝る」 お前も付き合え、と、小さく言われ、アレンはきゅうと神田に抱きついた。 よほど疲れていたのだろう、照れ隠しなどではなく、神田はあれからすぐに眠りに着いてしまった。 アレンはと言えば、それほどの眠気は無いため、ずっと琥珀を夕日に当てて見ていた。 多面に反射し、光を弾き、余計に内包物を際立たせた。 太陽を閉じこめた色。 暖かく、優しいプレゼント。 それは何よりも、神田からの贈り物だから。 「大好きですよ」 小さくアレンは、神田の頬にキスを落とした。 コメント 琥珀=太陽 モミの木=アレンたん 要するに神田は、アレンには太陽の暖かい陽の中で笑っていて欲しい、と言う事で琥珀を渡したのです。 ・・・神田がドリーマーの恥ずかしい子になってしま(撲殺/by神田) 『Orange Noel』はずっと付けたかったタイトルです。 半年くらい前からずっとずっとアレンの誕生日のタイトルはこれ!って決めていまして。 でも心変わりしたらどうしようと思っていたのですが、ちゃんとつけれてよかったですv ちなみにこれは曲のタイトルでもありまして、新居昭乃さんの歌なのです。 オレンジの表現どうしよーと思っていたのですが、クリスマスは夜だけじゃない!と言う事で、夕日と琥珀でまとめてみました(苦笑) 何はともあれ、アレンたん、お誕生日おめでとう〜☆ |