手を、ずっと繋ぎながら・・・。

泣きたくなるくらい哀しいよ。
キミはどこ?
キミはどこ?
ここに居てほしいのに。
お願いだから。
お願いだから。
僕から離れていかないで。

「――――っは・・・っ」
レイは、うなされながら飛び起きた。
額や顔だけでなく、着ている服の中まで冷や汗でビショビショだ。
荒れる呼吸を整える。
・・・嫌な夢。
レイは身体を抱きしめながら、身体の震えがおさまるのをまつ。
小刻みに身体が震える。
―――おさまらない・・・。
泣きたい気分だ。
レイはもっと強く自分を抱きしめる。
お願いだから。
身体の震えはそれでもとまらない。
青い服の裾をぎゅっと持ち、まるで子供がオバケにでも恐がっているような態度。
曖昧の夢なのに、自分は何をそんなに恐がっているのだろう?
寝ているときも纏めている髪留めを力任せにとる。
パサリと乾いた音を立てて、レイの長い髪が辺りに広がる。
まるで保護してるかのように、レイを包む。
夢は、覚めた途端忘れてしまって。
ホンの小さなきっかけで思い出してしまう。
「――――カイ・・・っ」
思い出したのはカイの顔。
自分に背中を向けるカイの姿。
恐くて恐くて恐くて。
もうどうしようもなくて・・・。
気が付いたら足が駆け出していた。

レイたちは、今回小さな個室をそれぞれあててもらった。
レイは簡素な作りのドアを開け、ひとつ向こうのドアの前に立つ。
ノブを回す手が止まる。
・・・ここでカイに縋り付いて、なんて言う?
恐い夢を見た。
・・・そんな子供みたいな。
呆れられるのが眼に見えている。
回しかけたノブを戻し、レイは部屋ではなく外の方へと足を向ける。
ドアを背中に向け、レイは歩き始めた。
キィ・・・。
少々耳に障る音が辺りに響く。
ばっとレイが後ろを向くと、今までレイが立っていたドアが開いていた。
中から顔を出したのは、カイだった。
「やはりレイか。ここまで来てなんで中に入らないんだ」
どうしてわかったの?とか、
別になんでもない。とか言えなかった。
足が勝手にカイの方へ走り出して、我に返ると、カイの匂いにつつまれていた。

カイは備え付けられていたポットからお湯を出し、お茶を入れてくれた。
「ほら・・・」
「・・・りがと・・・」
カイに湯飲みを渡されると、ベッドについていた手を離し、レイはスン。と鼻をすすりながら、お茶に口をつけた。
目元が紅い。
長いマツゲに水・・・否、涙の粒がまだついている。
あれから、カイに抱きついたレイは、抱きしめたまま離さず、ポロポロと泣いてしまったのだ。
ワケのわからないカイは、とりあえずレイを自分の部屋につれていき、懸命にあやした。
しかし泣く理由がわからない。
とりあえず自分にすがってくれるということは、自分に否があるわけではないらしい。
カイは、レイから話してくれるのを、黙って待った。
急く理由もないし、また泣かれたらイヤだ。
・・・まったく、自分はいつからこんなに甘くなってしまったのか。
自分も茶を飲みながら、さりげにレイの隣に座った。
鼻をすする音と、お茶を飲む音、それに時計の刻をきざむ音だけが部屋に響く。
それでも、カイは自分から無理矢理理由を聞こうとはしない。
しばらくたって、飲み残したお茶が冷えてきたのが手に伝わってくる。
熱を失った湯飲みを、カイは近くにあるテーブルに置く。
手持ちぶさになったカイは、腕を組んで目を閉じる。
「・・・さっき・・・」
いつもとは違う、消え去りそうな声でレイはポツリと漏らす。
「・・・さっき、夢を見たんだ・・・」
指に力がこもる。
中に入っているお茶が、小さく波を立てた。
「夢?」
カイが聞きなおすと、レイは幼子のようにコクリと頷いた。
自然、視線が下を向く。
サラリと髪が輪郭を隠す。
カイは髪をかきあげ、レイの顔をじっと見つめる。
「カイが、オレから離れていっちゃう夢・・・。
カイって呼んでも振り向いてくれなくて・・・どこかに、オレのいないところに行っちゃって。
でもオレがどんなに走っても追いつけないんだ・・・」
まるで・・・。
「今のオレとカイとの距離みたいに・・・」
そこまで言うと、レイは急に強い力で横を向かされた。
名前を呼ぶすきも与えられず、レイはカイに抱きしめられた。
「か・・・」
数秒置いて、湯飲みが床に落ちた音が聞こえた。
硬質の音がしなかったので、どうやら割れたわけではない。
容赦の無い力で抱きしめられ、レイは息が詰まった。
それでも拒否できなかったのは、嬉しかったから。
ぬくもりが直に感じられて、すごくすごくホッとしたから。
腰と後頭部にある手に、さらに力が込められる。
「バカが・・・」
苦しそうな声でカイが囁く。
「俺は、ここにいるだろう・・・っ?」
その言葉に、やっと乾いたはずの瞳がまた潤み始める。
「・・・っく・・・」
嗚咽を堪えることがどうしても出来ない。
レイもカイの背中に手を回した。
服をぎゅっとつかんで、二人は抱きしめあう。
カイは顔を移動させて、濡れているレイの頬に、自分の頬を擦り合わせる。
スベスベした肌は、いつ触っても心地が良くて・・・。
感情が高ぶっているのだろう。いつもは気持ちのよい体温が、今は少し熱い。
そのまま、顔を正面に移動させる。
コツリと額をあわせて、お互いの瞳を覗く。
金色の瞳と緋色の瞳が互いの眼に映る。
カイはまず、右の頬にキスを落とした。
濡れいてる瞳を何度も舌の先でなぞり、涙を舐めとっていく。
舌に感じる塩辛さは、今のレイの心にも降りかかっているのだろうか。
鼻の先にキスを落とし、そのまま下方へ移動させる。
そっと触れるだけの、羽根のようなキス。
何度も何度も。
小鳥が遊ぶように啄ばむ。
それがだんだん深いものへ変わっていく。
ぺロっとカイがレイの唇を舐めると、ヒクリとレイの肩が上がるのが腕を伝ってわかる。
それでもレイは、カイを拒否しない。
唇を割ってはいり、歯列をなぞる。
並びのいい歯を、前から奥へと移動させる。
すると、ますます歯を固く食いしばる。
カイは口だけで笑うと、ますます舌をしつこくうごめかす。
口をふさがれ、レイはだんだん苦しくなってきた。
いつになってもこういうキスには慣れない。
鼻で息をしろ、とカイは言うけれど、なんか、恥ずかしいし、いざとなるとどうしても出来ない。
酸素を求め、レイはついに歯を解いてしまった。
瞬間を見逃さず、カイは舌を挿入する。
レイの手が、突き放すか握り締めるか迷っている。
カイはレイの腰を抱く手を更に力を込める。
身体を密着させ、舌を奥までいれ、レイの舌をさぐる。
しかしレイは一向に舌を絡ませてはくれない。
レイの身体が反り返るまで追い詰める。
身体のバランスを保つため、レイはベッドに手をつく。
さらにカイは体重を込める。
ついにレイはカイにかぶさられてしまう。
ピチャ。という音が耳に響く。
頬がさっと紅くなる。
「・・・む・・・」
うめくように声を出すと、カイが口を離した。
「レイ、舌・・・」
「・・・ャ・・・っ」
舌を求めると、レイはかすかに顔を逸らす。
それを許さず、カイはレイの顔を固定させ、また唇を重ねた。
堂々巡りのように舌を引っ込めるレイ。
いつものことながら。
呆れるような楽しんでるようなコトを思い、カイは舌を引っ込めてるためにあらわになっている柔らかな部分をペロリと舐めた。
そこは、レイが舌の次に口で弱い部分。
硬直したところを見逃さず、カイは舌を捕らえる。
一度舌を絡ませる。
再び襲ってきた快感に、レイは耐えられなかった。
自ら舌を出し、カイに絡ませる。
さっきとは比べ物にならないくらいの快感がレイの身体を蝕む。
ピチャ、という互いの唾液が絡まる音が耳に響こうと、今は羞恥より自らの欲望を優先させる。
顎や頬に唾液が次々垂れていく。
唇を深く擦り合わせてるため、自然に顎なども触れ合う。
そのため、両方の顔は唾液でビチョビチョだ。
カイはレイの足の間に身体を割り込ませ、足を閉じられなくした。
カイの欲望を感じ取り、レイは首に腕をまわす。
それを合図に、カイは身体も密着させていった。
濃密な空気が二人を包む。
カイがレイの服を脱がしかけると、視界の端にレイの腕がパタリとベッドに落ちてきた。
ふと口を離してみると、なんとレイは不規則な呼吸をしながら眠りに入っていた。
気をそがれ、カイはレイのすぐ横にバタっと横たわった。
どうやら安心して眠りに入ってしまったらしい。
ここまで高ぶらせておきながら・・・。
カイは恨めしそうにレイを見るが、それに気付くわけもなく、レイは寝返りをうち、カイの方を向いた。
瞼の端にまだ残る涙のカケラ。
口周辺に広がる、塗れた痕。
頬にさす赤味。
少し脱がされた服から見える細い首。
ふぅ、とカイはため息をつくと、レイの服装と正してやり、口元をぬぐって毛布をかけてやった。
少し身体を端に移動させ、自分がそのスペースに入り込んだ。
レイの身体を先程と同じように抱きしめる。
暖かな体温。
誘われるように、カイもうとうとし始める。
早く起きてレイを部屋に帰さないとな・・・。
そう思いながら、カイも深い眠りへと落ちていく。
「ありがと・・・」
起きていたのか寝言なのか、どちらともわからないレイの小さな声は、残念ながらカイには届かなかった。

泣きたくなるくらい哀しいよ。
キミはどこ?
キミはどこ?
今すぐ僕の身体を抱きしめて。
ぬくもりを僕に分け与えて。
ずっとずっと、傍に居て・・・。
ずっとずっと、その手を離さないで・・・。



☆END☆


コメント

42話を見て書きたくなりました・・・。
いや、だってねぇ!?あそこまでカイレイにしといてあんな展開ないでしょう!?
とりあえずまぁBBAには戻ってくるんでしょうが・・・早くしてやってくれー・・・。