イタリアの秋は短い。
九月を過ぎると温暖な南側でも気温が低くなり、夜になれば長袖を羽織らなくては風邪を引いてしまう。
カタカタと冷たい風が窓をならす。
気にせずにツナがペンを走らせていると、ノックのあとに扉が開いた。
「うう、寒い」
「骸。お疲れ様」
入ってきた、寒そうに震えている骸を見つけると、ツナはペンを置いて彼に近づいていく。
ソファーに腰掛け、報告書をテーブルに置いて換わりに、チョコレートを一つつまむ。
その隣に腰をおろし、報告書を手に取る。
「そんなに外、寒い?」
「雪が降らないのがおかしいですよ、もう」
「どれ」
言って、骸の手をとる。
黒い皮の手袋をとり、素肌に触れた。
「わ、冷たいなっ」
再び報告書はテーブルに放られ、両手で骸の手を包む。
身長は結局骸に追いつけやしなかったが、掌は差はほんの少し。
きっと、武器のせいだろう。
その拳で戦う彼の手は、彼の身体以上に逞しい。
けれどその体温は、まだ子供のそれだ。
「…綱吉くんはあったかいですねぇ」
「え?あー部屋で仕事してるからなぁ」
外で仕事をさせている骸の手前気まずいのか、苦笑を浮かべてそう言えば、突然身体に重みが加わった。
「むく…?!」
「だから暖めてください♪」
耳元で弾む声がする。
驚きつつもその身体を抱きしめれば、掌と同じくらいに冷えている。
コートは冬の冷気を今だはらみ、髪はしっとりと濡れているよう。
咄嗟に、振り切れなかった。
ぺたりと、頬に頬を当てれば、驚くのは骸の方。
「つな…」
「ホント、すごい冷たくなっちゃったな…」
ぎゅう、と収まりきらないその身体を、それでも必死に抱きしめる。
ぬくぬくと暖かい部屋で過ごしてしまった堕落の体温が、それでもこの身体を暖めてくれればと思う。
頬から離す。
少しだけ二人の間に空気が入ったと思ったら、またその差をツナが埋めた。
エスプレッソで熱いくらいの舌。
その舌で、凍るような骸の唇を、ペロリと撫ぜた。
「ッ、」
「かさかさしちゃってる」
今にも切れてしまいそうな唇を、もう一度舐める。
熱い。
熱そのもののツナの舌が、唇が触れるたびに血が再び燃えていく。
心臓からではない。
唇から、どんどん熱が生まれていって、気付けは頭の先から爪先まで冬の冷気が飛んでしまっていた。
ちゅ、ちゅ、と音がして、可愛らしいそれが逆に恥ずかしい。
「ん…あったかくなってきたな」
もう一度、頬を寄せる。
今度はツナが熱を貰うくらいに骸の頬が暖かい。
身体からツナの手が離れる。
惜しくて、もう一度骸はその身体を抱きしめた。
押し倒す。
柔らかいソファーに、ツナと転がる。
「…むくろ?」
きょとんと、優しいキャラメル色の瞳がまんまるに自分を見ている。
くふ、と笑う。
いたずらめいたものはない。
ただ、子供のように嬉しそうな視線があった。
「寒い中がんばったご褒美に、もう少しだけ暖めてください」
言って、骸からまた抱きつく。
ふあふあなキャメルの髪に顔を埋める。
きょとん、としていたツナの目が、段々と細くなり、ふふ。と笑った。
「うん。いいよ。ご褒美、な」
目の前の鎖骨にもちゅうとキスを落とす。

こんな熱を感じられるなら、寒いのだって悪くはない。