リクエスト
   





 Caro Stomatite


作りのよいベッドは、軋む音さえ優しい。
「んっ、あ、あ…」
下半身からは痺れるような快感が湧き上がる。
とまらない。
声も、腰の動きも。
無意識にずれあがる身体を抑えるように、圧し掛かる白蘭の首に腕を回す。
ただ、気持ちよさに覚えた全てのものが抜けていく。
「あ、んあ、びゃくら…んぁ…っ」
「むくろ、くん…っ」
ワックスで整えた髪は、骸がかき混ぜたせいですっかりぐしゃぐしゃだ。
髪が熱をはらむ。
皮膚が汗ばみ、やがてこめかみ、頬、顎を伝い組み敷いている身体へと落ちた。
骸の髪には艶が宿り、薄暗い中でも灯を見つけてさらりと光った。
ちゅ、と額にキスが落ちる。
(…?)
違和感が一緒に落ちてきた。
なんだろう。
何かがおかしい。
「むくろくん…っ」
「っあ、ああ!」
魚のように身体が跳ねる。
それ以上考えることができない。
腰を支えている白蘭の手が、指が、皮膚に食い込む。
すっかり慣らされた後腔に白蘭が押し入るたびに身体が浮く。
内壁を擦られ、ズン、とオクまで届くたびに電気信号となって快感が全身にひた走る。
きもちいい、きもちいい、ひたすら、きもちいい。
「あ、んぁあ、ッア、そん、な…ふ、ァ…」
陰嚢に白蘭の陰毛が当たる。
ちくちくしてこそばゆいのに、やはり快感にすり替わる。
「あっ、あっあ、ああ、」
頬を合わせる。
汗で滑った。
限界が近い。
白蘭の限界がどこにあるかわからないので、自ら仕掛けることにした。
「っく…!」
すぐ近くにある白蘭の頭を抱きしめて、何度かわからぬオクを突かれた時に骸は意識してアソコを締め付けた。
呻いて、白蘭の動きが止まった。
「んん――――ッ」
抉るような勢いで白濁がナカを濡らす。
オクのそのまたオクまで刺激され、骸も紅い先端から白濁を吐き出した。



事後処理は白蘭の仕事だ。
胎内の処理も、シーツの取替えも白蘭が全て行なう。
最初は恥ずかしさもあり骸も抵抗を見せていたが、今ではすっかり女王様よろしく事後の気だるさをソファーで満喫している。
「ごめんねーもう少しだからー」
笑いながらシーツを敷いていく白蘭を、ぼんやりと見つめる。
高揚に飲まれてどこかに行ってしまっていた違和感が、また蘇ってきた。
(…なんでしょう…)
どこに違和感を感じているのかもわからない。
そんな些細なことなのに、気になってしまう。
なんだろう、なんだろうと今日のセックスを思い出す。
いつものようにソファーで寛いでいたら、段々白蘭の手があやしく腿を撫でてきた。
最初はいとおしむように。
その手つきに欲情したのは自分で、白蘭の首筋にネコのように擦り寄った。
風呂にも入らずベッドに移動し、肌のしょっぱさにまたむらっとして貪るように重なった。
「………」
理性を取り戻して思い出せば、頬が熱くなる。
閉ざしてしまいそうな脳を奮い立たせ、更に辿っていく。
か、か、と頬が燃える。
「骸くん?」
「!」
そして挿入を、と言うところで白蘭の声がした。
閉じていた目を慌てて開くと、すぐ近くからこちらを覗き込んでいる。
「顔真っ赤だけどどうしたの?風邪?」
「ち、ちがいます…」
なんとなく気まずくて目を逸らす。
「ホントに?」
前髪をあげて、額をコツンとあわせる。
ぼやけるくらいに近い。
「ん…ちょっとあつい?」
唇に吐息がかかる。
(あ…なんか…)
きす、したいかも…。
唇同士を擦り合わせ、別の生き物のような舌を絡ませあって、口内をまさぐりたい。
ぞく、とまた思考がピンクに流れかけた時、パチンと頭の中で音がした。
「あ、」
「ん?」
突然声を出した骸を、額を離して覗き込む。
キョトンと骸は白蘭を見つめる。
そうか。
そうだ、違和感は。
(今日、キスされてないですね…)
額にされた。
身体にもいくつも華が咲いている。
だが、唇にはされていない。
「……」
「ん?なに?」
ふぅ、と白蘭に向かって息を細く吐き出す。
「…くさい、ですか?」
「は?」
今度は白蘭がキョトンとなる。
「息、くさいですか?」
うん、と言われてもショックだけれど、思いついたのがまずこれだ。
ちゃんとケアはしているのだが…。
「え?ぜんぜん。すっごくいいにおいだよ?」
普通に返された。笑顔と共に。
その答えもちょっと恥ずかしかったが、とりあえず息が臭い訳ではないようでホッとする。
次にまた、何故。が込み上げる。
じぃ、と見つめてくる骸を、白蘭は訳もわからず見つめ返す。
紫煙の瞳。
色の薄い瞳は角度次第でどこか遠くを見つめているようにもみえるが、今は骸をとらえていた。
唇がほしくなる。
むしょうに。
「ッ…」
唇をつきだすように骸から接近していくと、白蘭が避けた。
「…ぁ、」
まずい。と言う顔をしている。
避けられたことがない骸は(骸からキスをしかけること事態がレアなのだが)純粋にショックだ。
「んと、えっとね、あの…」
いつも自分は好き勝手するくせに!
そこでショックにうちひしがられてしまう骸ではなかった。
「むく…んっ」
眉間に皺を寄せ、がしっと白蘭の両頬を掴んで引き寄せる。
近付く白蘭の唇に喰らいついた。
言葉と呼吸を飲み込む。
無防備だった隙間から舌を侵入する。
薄い唇。
まだ熱い口内。
肉の柔らかさとエナメル質の硬さにぞくんとした。
積極的に荒らしていく。
「ん、…ふン…」
戸惑う白蘭がおもしろい。かわいい。
不機嫌を忘れて夢中になる。
せっかく綺麗になった身体に唾液が落ちるが、気にしない。
(もう一ラウンド…くらい…)
むずむずする。
違和感がまだ残るあそこがきゅんと疼く。
ナカのものは全て掻き出されたが、まだ柔らかいはず。
濡らせばそう時間はかからないだろう。
ああ、ホシイ。
床に押し倒すように白蘭に体重をかける。
薄い頬を内側からレロリと舐めた。
「ふぐぅっ!!!」
「?!」
白蘭が妙な声を上げたので、思わず顔を離してしまう。
骸の支えを失った白蘭は、口を両手で覆って床で悶絶している。
「…びゃ、びゃくらん?」
噛んだ覚えはない。
むしろ自分が噛まれそうになった。
そうっと近付く。
白蘭は涙目になっていた。
「…そういえば…」
ぺろりと濡れた口端を舐める。
「右の頬に何か膨らんだもの…が…」
にやぁぁ…と、骸の笑みが深くなった。
一転、くふくふと上機嫌に笑いながら、床と仲良しになっている白蘭の耳にそっと言葉を吹き込む。
「…もしかして口内炎、できてます?」
「……っ」
こくこくと白蘭が頷く。
「ほぉら。僕がいくら言ってもお菓子ばかりで野菜を食べないからそうなるんですよ」
チョコを貪り食っている骸くんに言われたくない!
と叫びたかったが、思い切り触られてまだジンジンしている。
「くふふ…かわいいですねぇ」
ちゅ、ちゅ、と頬にキスを落とす。
「言えば触らなかったものを」
「うふぉだ…むふろふん、ぜったいさわるよ、おもひろはって…」
何とか反論しても、絶対的有利にたった骸はくふくふ笑うばかり。
「触りませんよ。ちゃんと避けますから。だから、ちゃんとキスしてください」
違和感の正体を発見した途端、不安で悲しくてならなかった。
普段白蘭から求められることが多いので、余計に。
痺れが治まってきた。
白蘭の眉間から皺が薄くなる。
ちゅ、とリップ音を立てて白蘭の唇にキスをする。
笑って、待つ。
「……」
少し躊躇って、白蘭もキスをする。
ちゅ、ちゅ、と何度もしあい、重ねて、抱きしめあう。
「ん…」
悪戯心が疼き、時々口内炎に触れたくなるが、我慢だ。
お菓子ばかり食べるから、白蘭は甘い。
こくんと飲み込む。
痛みも分かち合えればいいのに。
改めて、床に転がった。
また白蘭の仕事が増えるが、本人もすっかり乗り気だ。
せめて再びの熱で、白蘭が一時痛みを忘れればいい。
願いながら、骸は瞳を閉じた。


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リクエストはコンタさんから頂きました!
ありがとうございます〜☆
白骸で甘々、できればエロありのリクエストでしたが、なんだかエロが前面に出ててすみません(笑)
甘い白骸はあまり書かないので、とっても新鮮でした!
ちょうど口内炎で苦しんでる時に生まれたネタなので、つらいことでも妄想すると楽しいなってしみじみ思う作品になりました…(笑)