「うっわなにこれ!!」
玄関を開けた途端に飛び込んできたのは、真っ赤な薔薇だった。
「綺麗だろう、デーチモ」
大きな薔薇の花束の後ろからひょっこり顔を現したのはプリーモだった。
「綺麗ですけどビックリしましたよ!…どうしたんですか、これ」
「今日はヴァレンティーノだろう。プレゼントだ」
にこ、と笑う。
「え、えと…」
「ああ、これは奈々にだ」
「母さんに?」
「いつも世話になっているからな」
本当は愛しいものに贈るのだが、まぁ日本だから家光も許してくれるだろう。
そうつけたし、勝手知ったる、とばかりに家に上がっていく。
「奈々はいないのか?」
「今、買い物に行ってるんです」
「そうか」
すん、とプリーモが鼻をすませる。
「チョッコラータの匂いがするな」
「さっきまでバレンタインチョコ作ってたみたいなので」
「そうか」
丁寧な仕草でテーブルに薔薇を置く。
似た顔立ち…だとは思うが、動作がいちいちプリーモは洗練されている。
所作ひとつでこうも違うのか。
「これはお前にだ」
「え?」
紙袋を受け取ると、ヤケに重い。
なんだと袋を覗いて見て、再びツナはギョッとした。
「なにこれ?!」
「チョッコラータだ」
驚くツナを見て、ふふ。と笑う。
「わが祖国では女性に花を贈るのが一般的だが、日本ではチョッコラータを贈るのだろう?」
「…ええ、まぁそうなんですけど…」
「お前には花よりこちらがいいと思ってな」
わくわくしているプリーモを見ると、こっちでは女性が男性にあげるんですよとは言えない。
女性同士でも友チョコとかいろいろはやっているし…まぁ延長線上だろう。
プリーモのは純粋な好意だ。
「…ありがとうございます、プリーモ」
そう言えば、いつもの無表情からは考えられないくらい頬を緩ませる。
そうか。嬉しいか。
ツナよりもずっと嬉しそうなプリーモを見ていると、こっちまで伝染する。
(まぁオレも用意してたし)
きっと喜ぶ。
プリーモも同じことを考えてくれたんだろう。
ふふ、と笑い、ツナは少しいびつなチョコをプリーモに渡した。

反応は、ツナの予想以上だった。