骸がチョコをあげるらしい。
「なん…だって…?!」
いかに彼がチョコ好きかを知っている黒曜三人組は戦慄した。

とは言え相手の想像はできた。
最近骸の口から出る頻度が増えたボンゴレだろう。
女性に混じってチョコを買うのはさすがに恥ずかしかったのか、クロームの姿を借りて買ったチョコを持ち、黒曜ヘルシーランドを後にした。
「…」
そわそわと待つのは沢田家の前。
夕暮れ時。
まだまだ冷たい風が骸の体温を奪っていく。
「あれ?骸?」
中学が終わる時間を見計らってきたので、そんな長い時間は経っていない筈だが、なかなか曲がり角から見えないツナの姿に苛立ちを覚えてきた。
それも、ツナの声で全部吹き飛んだ。
「どうしたんだよこんな寒い中…あ、オレに用?なら部屋で…」
「よっ 用は用ですけど、すぐにすみますからいいですっ」
何故か怒った口調になってしまう。
きょとんとするツナに、チョコを持つ手が震える。
指先まで熱い。ほんの少し前まで感覚がないくらい冷たかったのに。
チョコが溶けてしまいそう。
「…これ、差し上げます」
「…チョコ?」
ためらいもなく受け取る。
「ク、クロームがいつもお世話になっていますからね!僕とクロームとで差し上げるんです。どうせきみのことだから今年も母親からのなけなしの一つで終わってしまうと思いましてね。それではあまりにかわいそうだとクロームが言うものですからしかたなく買ってきたのですよ感謝してくださいねっ」
まぁそこまでよく言葉が続くものだと思う。
プライドが、素直にチョコをプレゼントしたいということを言わせてくれない。
だが建前に混じる嘘を、ツナの超直感は一つ残らず拾っていた。
最近は随分察しがよくなったツナは、苦笑して骸からチョコを受け取った。
「ありがと。すごい嬉しい」
にこっと笑えば、正直な頬が真っ赤に染まる。
「…ふん、」
鼻を鳴らし、骸はツナの横を通り過ぎる。
「あれ?骸?どこ行くんだよ」
「帰るに決まってるじゃないですか。用は終わったんですから」
「家入ってココアでも飲んでけよー」
「…っ…え、遠慮します!」
一瞬躊躇った骸だが、そのまま走り去ってしまう。
夕闇に骸の姿見えなくなり、ツナは白い息をはいた。
「…渡し損ねちゃったな…」
骸には言わなかったが、本命でないにしてもバレンタインチョコは貰っている。
それとは別に用意してある、綺麗な包みのチョコレート。
じぃっと見て、もう一度白い息をはく。
「…ま、来月渡せばいいか」
ツナの頬はすぐにゆるくなった。
もったいなくて食べれないクマのチョコレートは、賞味期限ギリギリまでツナの引き出しに大切にしまわれていた。