ビアンキを先生に、今年も沢田家のキッチンでチョコレート作りが開催されている。
ただチョコをもらえるか待つ側だった自分が、まさか作る側に回るなんて思わなかった。

「僕が記憶する限り」
いびつなリボンをほのいて何故かガタガタな箱を開けると、茶色い物体が大小様々転がっていた。
「トリュフって言うのは生クリームとかと混ぜて丸めるだけだと思ったんだけど」
「う…」
一つ小さなものをつまんで、口に放り込み眉をしかめる。
「よくここまでのものが作れたね…」
「うう、すみません…」
そもそもこの14年間台所は母親の領域で自分が立つことなどなかった。
初めて立ったのがこのバレンタインに向けてのチョコ作りなのだから無謀というもの。
「しかもなにその指の絆創膏」
「…これ、は…」
眉間に皺を作りながら、ひょいぱくと口にチョコをいれていく。
「チョコ刻んでる時に…あと溶かしてたら火傷しちゃって」
皺が深くなる。
ひ、とツナの喉が鳴った。
「あ、の、ヒバリさん。おいしくなかったら無理して食べないでいいですから…あの…オレ、すみません…」
雲雀が咀嚼するたびにガリガリと音がする。
そんなものをいれた覚えはないのに。
悲しくて申し訳なくて鼻がツンとする。
どうしてこんな思いをしなくてはいけないのか。
手を伸ばすツナに奪われる前に、雲雀は残りのチョコを口の中にすべて放り込んだ。
「あっ!」
ハムスターのように雲雀の頬が膨らんだ。
ガリガリと音を立てながら、空になった箱とリボンを丁寧にたたんでいく。
「おいしくなくても食べるに決まってるじゃない」
ごくんと喉が鳴り、ツナよりもずっとすばやく雲雀が近付いた。
ちゅ、と唇が触れた。
「きみがくれたのなんだから」
ぽかんとしたままツナは無意識に舌で唇を舐めた。
苦くて、ものすごく甘かった。